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 こんな烈しい思いに駆られるのは今日だけで二度目だ。だけどさっきの重くて寒い感情とは真逆だ。今湧き上がっているこの感情は虚しさじゃない。怒りだ。
 胸の奥が、沸騰しそうなほど熱い。
「どうして……どうしてお父さんが、そんなことを……?」
「俺が言わなければ、いけなかった」
「じゃあ、どうして今更……こんな、何年も経って……?」
 昔、親類から『愛のために尽くせ』と命じられて、それに怒ってくれたのはお父さんだ。
 でも、物心ついた頃の私に『クローンとして、オリジナルを支えてやれ』と言ったのも、お父さんだ。愛の助けになるために、愛以上に厳しいスポーツ指導や学習指導を課したのもお父さんだ。
 私を『愛の影』に仕立て上げたのは、この目の前にいるお父さんだ。
 そのお父さんが、いきなり私を『解放』すると言っている。
 他のクローンの人たちは、こんなことを言われたらどう思うんだろう。喜ぶんだろうか。戸惑うんだろうか。私は……憤っている。
「縛られすぎてるって、何……ですか。だって、そうしろってお父さんが……」
「ああ、そうだな」
「私は……『愛』以外、知らない。『愛』以外の自分を、知らないんです」
 そして、見つけたところで、受け入れられないということを、知っている。あの頃、誰も愛の後ろにいる私を見なかったことで、十分に理解している。
『自由』という名目で放り出されたところで、どこにも行けないし、何もできやしない。
「私を……私を『奴隷』の身分から解放して、お父さんは気分がいいでしょうけど、私はどうすることもできないんです」
「ヒトミ、それは違う」
「違いません。私は、私のために『愛』にならないといけないんです。それを、お父さんが否定しないでください」
 今、色んな思いが結びついた気がした。同じように育ったのに『愛』と区別されること。『愛』が手に入れられて、私は手に入れられないものがたくさんあること。同じ遺伝子の同一人物のはずなのに、二人の間に確かにあった従属関係。
 それらに対する違和感や不条理や理不尽。
 ずっと、もやもやするばかりで正体がつかめなかった。だけど皮肉なことに、解放されていいと言われて、初めてわかった。
 私は『愛』以外の何者にもなれない。だから、不本意でも何でも『愛』になろうとしていたんだ。
 気付けば、頬が熱かった。火の玉みたいに涙が熱くて、幾筋も顔を燃やしていくようだった。握りしめた拳は気付けば震えて、解けなくなっていた。
 それを見て、お父さんは言葉を飲み込んでいた。何かあるなら、命令してくれればいいのに、しなかった。
 ただ、ぽつりと尋ねてきた。



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 こんな烈しい思いに駆られるのは今日だけで二度目だ。だけどさっきの重くて寒い感情とは真逆だ。今湧き上がっているこの感情は虚しさじゃない。怒りだ。
 胸の奥が、沸騰しそうなほど熱い。
「どうして……どうしてお父さんが、そんなことを……?」
「俺が言わなければ、いけなかった」
「じゃあ、どうして今更……こんな、何年も経って……?」
 昔、親類から『愛のために尽くせ』と命じられて、それに怒ってくれたのはお父さんだ。
 でも、物心ついた頃の私に『クローンとして、オリジナルを支えてやれ』と言ったのも、お父さんだ。愛の助けになるために、愛以上に厳しいスポーツ指導や学習指導を課したのもお父さんだ。
 私を『愛の影』に仕立て上げたのは、この目の前にいるお父さんだ。
 そのお父さんが、いきなり私を『解放』すると言っている。
 他のクローンの人たちは、こんなことを言われたらどう思うんだろう。喜ぶんだろうか。戸惑うんだろうか。私は……憤っている。
「縛られすぎてるって、何……ですか。だって、そうしろってお父さんが……」
「ああ、そうだな」
「私は……『愛』以外、知らない。『愛』以外の自分を、知らないんです」
 そして、見つけたところで、受け入れられないということを、知っている。あの頃、誰も愛の後ろにいる私を見なかったことで、十分に理解している。
『自由』という名目で放り出されたところで、どこにも行けないし、何もできやしない。
「私を……私を『奴隷』の身分から解放して、お父さんは気分がいいでしょうけど、私はどうすることもできないんです」
「ヒトミ、それは違う」
「違いません。私は、私のために『愛』にならないといけないんです。それを、お父さんが否定しないでください」
 今、色んな思いが結びついた気がした。同じように育ったのに『愛』と区別されること。『愛』が手に入れられて、私は手に入れられないものがたくさんあること。同じ遺伝子の同一人物のはずなのに、二人の間に確かにあった従属関係。
 それらに対する違和感や不条理や理不尽。
 ずっと、もやもやするばかりで正体がつかめなかった。だけど皮肉なことに、解放されていいと言われて、初めてわかった。
 私は『愛』以外の何者にもなれない。だから、不本意でも何でも『愛』になろうとしていたんだ。
 気付けば、頬が熱かった。火の玉みたいに涙が熱くて、幾筋も顔を燃やしていくようだった。握りしめた拳は気付けば震えて、解けなくなっていた。
 それを見て、お父さんは言葉を飲み込んでいた。何かあるなら、命令してくれればいいのに、しなかった。
 ただ、ぽつりと尋ねてきた。