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ー/ー



「昼間一緒にいたのは、誰だ?」
「昼間?」
「カフェにいたろう。たぶん、学校帰りに」
「……え!? あの時、見て……!? えぇ!?」
 取り乱す私を見て、お父さんは「やっぱり」と零した。半分は鎌を掛けられていたと気付く……。
「あ、あの人は同じクラスのただの友達で……たまたま都合があったから……」
「スプーンで食べさせ合ってたな」
 そんなところまで見られていたの……!
 ため息をつく様子に、何やら苛立ちを感じた。男の子と一緒にいたのが気に入らないんだろうか。愛に変な虫がついたような気になるから? いや、今、愛と私を切り離して考えようとしていたような……なら、何が気になるんだろう?
 そう考えていると、いつの間にか、目の前に何かが静かに差し出された。
 お父さんの携帯用端末だ。リストとは別の、仕事用のノート端末で、大きめのディスプレイには何かの文字が躍っている。
「また二人でどこかに行くなら、使いなさい」
「……え?」
 思いも寄らないことを言われて戸惑いつつも、表示された文字をよく読んだ。そこには、こう書いてあった。
『自然回帰プラネタリウム プラチナシート 2名様』
「……これって……?」
「うちの社が、空の内側……スクリーンの制作会社と提携して、今度新規オープンする施設だ。気象局監修のもと、21世紀までは視認できていたという星空をできる限り再現したと銘打っただけあってなかなか見応えが……ああ、いや……つまり、まぁ……楽しんでくるといい」
 提示されたチケットデータは、私のリスト端末に送られてきた。要予約だけど、期限はなし。
 お父さんはチケットを渡し終えると、背を向けてしまった。
「話は終わりだ」
 そう言われてしまった。これは退出せよの合図なのだけど……私は、しばらく瞬きを繰り返して、その場から動けずにいた。
 てっきり、咎め立てされると思っていた。頷かなければ、叱られるとばかり。
 だけど、どうしたことか。何も言われないどころか、二人で出かけるための後押しまで貰ってしまった……。
 何度もチケットの画面とお父さんを交互に見て、目を瞬かせた。
 あまりに私が動かないから、お父さんは「どうした?」と怪訝な声を向けた。そこで私は、一番肝心なことを思い出した。
 まず最初に、言わなければいけないことがあるんだった。
「お、お父さん……」
「ん?」
 お父さんは、背中を向けたままだったけど、私は深く頭を下げた。
「ありがとう。その……楽しみに、行きます」
「……ああ」
 その声を聞いて、私はようやく、ホッとした。
 もしかしたらお父さんは、これを渡すために書斎に呼んだんだろうか。
 モニターにお気に入りの映画を映し出して鑑賞を始めてしまったお父さんの邪魔をしないように、そっと書斎から出て、そんなことを思うのだった。



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「昼間一緒にいたのは、誰だ?」
「昼間?」
「カフェにいたろう。たぶん、学校帰りに」
「……え!? あの時、見て……!? えぇ!?」
 取り乱す私を見て、お父さんは「やっぱり」と零した。半分は鎌を掛けられていたと気付く……。
「あ、あの人は同じクラスのただの友達で……たまたま都合があったから……」
「スプーンで食べさせ合ってたな」
 そんなところまで見られていたの……!
 ため息をつく様子に、何やら苛立ちを感じた。男の子と一緒にいたのが気に入らないんだろうか。愛に変な虫がついたような気になるから? いや、今、愛と私を切り離して考えようとしていたような……なら、何が気になるんだろう?
 そう考えていると、いつの間にか、目の前に何かが静かに差し出された。
 お父さんの携帯用端末だ。リストとは別の、仕事用のノート端末で、大きめのディスプレイには何かの文字が躍っている。
「また二人でどこかに行くなら、使いなさい」
「……え?」
 思いも寄らないことを言われて戸惑いつつも、表示された文字をよく読んだ。そこには、こう書いてあった。
『自然回帰プラネタリウム プラチナシート 2名様』
「……これって……?」
「うちの社が、空の内側……スクリーンの制作会社と提携して、今度新規オープンする施設だ。気象局監修のもと、21世紀までは視認できていたという星空をできる限り再現したと銘打っただけあってなかなか見応えが……ああ、いや……つまり、まぁ……楽しんでくるといい」
 提示されたチケットデータは、私のリスト端末に送られてきた。要予約だけど、期限はなし。
 お父さんはチケットを渡し終えると、背を向けてしまった。
「話は終わりだ」
 そう言われてしまった。これは退出せよの合図なのだけど……私は、しばらく瞬きを繰り返して、その場から動けずにいた。
 てっきり、咎め立てされると思っていた。頷かなければ、叱られるとばかり。
 だけど、どうしたことか。何も言われないどころか、二人で出かけるための後押しまで貰ってしまった……。
 何度もチケットの画面とお父さんを交互に見て、目を瞬かせた。
 あまりに私が動かないから、お父さんは「どうした?」と怪訝な声を向けた。そこで私は、一番肝心なことを思い出した。
 まず最初に、言わなければいけないことがあるんだった。
「お、お父さん……」
「ん?」
 お父さんは、背中を向けたままだったけど、私は深く頭を下げた。
「ありがとう。その……楽しみに、行きます」
「……ああ」
 その声を聞いて、私はようやく、ホッとした。
 もしかしたらお父さんは、これを渡すために書斎に呼んだんだろうか。
 モニターにお気に入りの映画を映し出して鑑賞を始めてしまったお父さんの邪魔をしないように、そっと書斎から出て、そんなことを思うのだった。