「またって……たぶん。そんなに頻繁ではないけど……」
「……そうか」
退いたものの、お父さんの表情はいまだに険しい。
「その……あの時のこと、驚いていてな。お前が……友達と遊びに行っていたと聞いて」
「え、はい」
そういえば、愛がいた頃は毎週のように誰かが遊びに来ていた。だけど、いなくなってしまったら、パタリと止んだ。私に会いに来る人は、いなかったから。
高校に入って、愛と私のことを知らない人ばかりの場所でも、それは同じだった。どうしても、愛と同じようにはできなかった。
だから、同じ学校の人と四人で、あんなに遠くまで遊びに行ったなんて聞けば、確かに驚くのも無理はないと思う。妙に恥ずかしいけれど。
「最近、仲良くなって……」
「男の子までいたな。いったいなんで急に仲良くなったのか、聞いてもいいか?」
「え、えーと……」
困った。なんて説明したらいいものか。そもそも説明してもいいのか。と言うより、父親とはいえ普通そこまで追求するものか……?
色々と疑問は湧いたけど、咄嗟に質問を封じられるほど、私は口が達者じゃない。それに咄嗟に上手い言い逃れも、考えつかない。
「えっと……『青春実験』というのを、皆でやっていて……」
「『青春実験』?」
怪訝な顔をするお父さんに、加地くんや弓槻さんにしたのと同じ説明をしてみる。すると一応は頷いていたのだけど……
「なるほど。まぁ若者らしいといえば、そうだな。だけど何故、急に?」
やっぱり、そこで納得してはくれなかった。それまで無気力に過ごしていた私が、いきなりそんなことを始めたんだから、気になるのも無理はない。私だってお父さんの立場なら気になる。
だけど、これ以上はナオヤくんのことに関わる。どこまで、説明してもいいのか……。考え込んで、俯きながら、なんとかして言い訳を考えた。
「む、昔の友達が転校してきて……」
「昔? もしかして、愛のことも知っている子か?」
私が頷くと、お父さんは少しだけ難しい顔をしたけど、すぐに続きを促した。
「それで、その……愛の話になってね。それで、えっと……愛なら、何するかなって……」 あながち嘘じゃない。愛と深海くんがやりそうだったこと、やりたかったことをリストアップして、それを実行することで近づいていこうという主旨なのだから。
それを聞いた人の受け取り方は様々なようだけど、私とナオヤくんの当初の目的は、水面下で着々と達成できている……はず。
「そのリストを、見せてもらっても?」
「それはちょっと……別の人も加わって、だいぶ本来のものとは変わってるし……」
「そうか。俺はむしろ、その方がいいと思うがな」
「え?」
瞬きを繰り返しながら、お父さんを見返した。俯いてしまっていて気付かなかったけれど、いつの間にかその顔からは険しさは消えていた。そしていつぶりかわからない、とても穏やかな笑みが、そこに浮かんでいた。
「えっと……それって、どうして……?」
「お前は、愛に縛られすぎていたからな」
『愛に縛られていた』……その言葉に、頭の中が急にざわついて、そして騒然となった。
確かに『縛られていた』とは思う。だけど、それは私の生まれを考えれば当然の経緯で、なによりも両親が定めたことだったはず。
「お父さん、ごめんなさい……どういう意味か、わからないです」
「お前はもう、愛のために生きなくていいということだ」
お父さんは、迷いない瞳で、まっすぐに私を見つめる。その瞳に映る姿が見えた。それが愛なのか、
ヒトミなのか、私にはわからずにいる中、お父さんははっきりと言い放った。
「愛は、死んだんだ」