ナオヤくんは『海へ行く』と『お泊まり会で夜通しゲーム』も、そっと指でなぞる。
チェックされた項目の方が数が多くなっている。なんだか線を引いた跡が鮮やかに見える。
「また、書き足さないといけませんね。活動に支障が出ます」
「楽しいから、もう一回するって手もあるんじゃない?」
「なるほど。提案してみましょう……それで、現在残っている項目についてですが」
私はもう一度、リストに視線を落とした。何が残っていたのか確認すると……
・誰かを笑わせる
・花見をする
・恋人をつくる
この3つ。
「なんか、加地くんと弓槻さんの二人ならすぐに達成できちゃいそう」
「そうですね。逆に僕たち二人だったら……この四つの達成は難しそうです」
言われてみれば……こんな調子のコミュニケーション能力の低い私たちに『誰かを笑わせる』なんてできっこない。『花見をする』『海に行く』は、それだけならできそうだけど、本当に行くだけになりそうで怖い。そして最後……『恋人をつくる』なんて、たとえ100年経ってもできそうにない。
それでいくとこのリスト、私のせいで永久に完了できないことになるんだけど……。そのことに気付いて困っていると、ふと隣に座っていたナオヤくんの声がした。
「この『恋人をつくる』についてですが……」
「え、うん!?」
難しいから却下にするのかな、なんて思っていた。だけどそれは、甘かった。
「今、達成しませんか?」
「……『今』って?」
きょとんとする私と、相変わらずの無表情のナオヤくん。二人の間を、ナオヤくんのしなやかな指が行き交う。
「あなたと、僕。この二人で恋人関係になってはどうかと、提案しています」
まっすぐな声と、まっすぐな視線。どちらもナオヤくんから、私に向けて放たれていた。
愛からすら、ここまでまっすぐに見つめられたことなんて、ない。
ナオヤくんの瞳が私の顔を映して、それを見て、狼狽えている自分の顔がなんて間抜けなんだろう、なんて他人事のように考えてしまっていた。
そして、なんて答えていいかわからないでいると、ふいに思い出した。愛の顔を。
深海くんを見つめる愛の、ほんのり赤く染まった顔。そして、それを見つめ返す優しい笑みを湛えた深海くんの顔。互いを見つめ合う二人が纏った、優しい光のような淡い空気を。