「え、それは……」
いったい何の意味が?
そう聞こうとしたけれど、それより早く、加地くんが頷いた。
「それいいな! いつまでも『天宮さん』だとなんか友達らしくないって思ってたんだよ」
私を置いて、加地くんと弓槻さんがどんどん盛り上がっていく。
「二人とも、まだ天宮さんの意見を聞いていません」
「深海くん! 天宮さんじゃない。ヒトミちゃん!」
「……ヒトミ」
いきなりの呼び捨てに、心臓が大きく跳ねた。表に出さないように必死に押さえ込む。
だけど、返事をしないといけない。そして、今の声を聞いてしまうと、答えは決まってしまった。
「……続ける。続けたい……です」
何とかそう言うと、加地くんと弓槻さんは飛び上がっていた。
「よっしゃ! 実験続行だ!」
「これからもよろしく! ヒトミちゃん!」
名前の呼び方を変えただけなのに、あと別に課題でも何でもないリストを実行していくだけのことなのに、二人は喜んでくれた。ちらっと視線を移すと、ナオヤくんも、静かに頷いていた。これは……二人と同じ気持ちだってことなんだろうか?
そう思うと、胸の奥に何だかよくわからない、火が灯った。たき火のように温かいのと同時に、マグマみたいに熱くうねる。急に湧き起こった熱が、胸の奥から体中を駆け巡って暴れ回っているみたいだ。
これは、いったい何なんだろう? すごく落ち着かなくて、すごく皆の手を握りたい衝動に駆られる。……とてもできないけれど。
「よし、じゃあ着替えたら、皆でここでパーティーやろうぜ!」
「ぱ、パーティー?」
「いいね、それ! 私たちの友情が芽生えて、確固たるものになった記念パーティーだ!」
「そ、そんなことでするの?」
「するよ。大事なことじゃん」
「いや、でも……」
会場主になるナオヤくんやご家族に何の許可もなしに言っていいんだろうか。そう思っていると、ナオヤくんがリスト端末からお母さんに
電話しているのが見えた。
「あ、母さんですか? さっき言った友人たちと、明日までこの家に滞在してもいいですか?……ええ、はい。わかりました。ありがとうございます」
もう許可取りが終わってる……! 仕事が早すぎてついていけない……。
ナオヤくんの電話を聞いていたらしい二人は、通話が終わると同時にあれこれ予定を立て始めている。
「よしよし。じゃあお菓子を買いにいかないとね。もちろん夕飯は別腹で……」
「歩きで行ける場所に店は……お、あったあった!」
「もうすぐ管理人が来るので、車を出してもらいましょうか?」
「ありがてぇ! 食べ物と飲み物と、あと何かゲームも調達しようぜ」
本当に、加地くんと弓槻さんの勢いが凄い。いつも愛の影にいた私は、何を言ったらいいのかすらわからない。
おたおたしていると、今度はゲート認証があったと通知が入った。ナオヤくんの言っていた管理人さんらしい。
「よし! 一気に実験のリスト実行できるぞ」
「ついでに、また書き足そうよ」
そう、楽しそうに話しては、その度に嬉しそうに笑いかけてくれる二人。
さっき胸の中で渦巻いていた業火のような熱は、まだ冷めやらない。だけど、不思議とこの焼かれそうな熱さが、今は心地良いって思うのだった。