「でもさ、天宮さんは少なくとも学校ではオリジナルの人と一緒じゃないじゃん。だったら、学校ではそういうの関係ないんじゃない? 誰かのクローンとか、そんな肩書きのつかない普通の高校生ってことだよね。私たちがそう接してれば、つまりはそうなるってことだよね」
その声は、何故か胸の奥の奥の、更に奥にまで、響いてきた。
「そっか……そうだな。変に気遣うとかより、普通に友達でいる方がいいんだよな」
加地くんの声も、まるで砂漠の砂に水が落ちていくように、すぅっと、どこまでもどこまでも、染み入る。
どうしよう、何か言いたいけれど、何も言葉が出ない。それどころか、声も出ない。怖いわけでも苦しいわけでもないのに、胸に何かが詰まって、どうしたらいいかわからない。
「決まり。友達続行!……まぁ本人に言ったわけじゃないけどな」
「本人はあくまで今まで通りなんだろうけどね」
そんなことない。立ち聞きしてしまったからではあるけど、私こそ、これからどう接すればいいかわからなくなってしまった。普通に友達って、どうやればいいんだっけ?
「あ、でもちゃんと仲良くなれたら、私、ちょっとだけお願いしたいことあるんだ~。聞いてくれるかな?」
「何だよ、図々しいな」
「いや、お金貸してとかそういうんじゃないよ。ただ、ちょっと……見たいなって」
「何を?」
何を?
弓槻さんに見せられるようなものが、私にあったっけ?
そう思って、弓槻さんの言葉をかなり前のめりになって待っていたら……
「何をしてるんですか?」
「ひゃああああ!」
背後から急に声が聞こえてきた!
振り返ると、ほんの少し目を瞬かせているナオヤくんだった。手にはコーヒーカップの載ったお盆を持っている。
「いつまでも戻ってこないので、全員分のコーヒーを淹れてきました。リビングに入らないんですか?」
「え、いや……」
心臓が、跳ね上がって飛び出すかと思った。まだ大きな音がしている。
懸命にそれを抑えようとしていると……
「あ! 天宮さんに深海!」
「え、うそ! 今の聞いちゃった?」
ああ、気付かれてしまった……。せっかく隠れてたのに。
今更口を塞いでしゃがみ込む私のもとへ、加地くんと弓槻さんがバタバタと駆けてくる。ダンゴムシみたいになった姿を、見られてしまった。
二人は二人で、聞かれていたとわかった気恥ずかしさか、何も言えずにじっとしていた。
そんな私たちを交互に見て、ナオヤくんはしばし考え込んで……
「もしや、僕は今、空気を読まない行いをしたのでしょうか?」
誰もがふるふると首を横に振るけれど、それ以上は言えなかった。
ナオヤくんは何かを察したようで、持っていたお盆を私に預けると、踵を返した。
「砂糖とミルクをとってきます。どうぞ続きをお話してください」
「待て待て待て! ここで三人に戻すなよ」
「かえって気まずいよ! もう全員ブラックでいいから、皆でお話ししよう! ね!」
結局、キッチンに戻ろうとするナオヤくんを引きずって連れて、四人でリビングに戻ったのだった。