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「クローンかどうかなんて、知るわけないじゃん。本人に聞いてみたら? まぁ……直接聞くのはけっこう無神経だけど」
「そうだよな、やっぱ」
 クローンもオリジナルも、同じ人間だ。見た目に何の差があるわけでもない。
 昔は遺伝的欠陥が多かったりと問題もあったそうだけど、今は、オリジナルの遺伝情報を90%以上の精度で再現できるほどになっている。
 だけど、やっぱり時々こんなことを聞く人はいる。
 勝手な印象だけれど、加地くんも、そうだったと思うと、少しショックだ。
「ていうか、もしそうだったら何? 友達やめんの? 実験も?」
「どっちもやめないって。別にクローンだから悪いって言ってるんじゃなくて……」
 弓槻さんは、なんだか庇ってくれている。それに加地くんも、差別的発言だったんじゃないみたいだ。だけど……聞いていてもいいんだろうか?
 そう思っているけど、下手に動けず、会話はどんどん進んでいく。
「逆で……クローンだって奴、何人か見たことあるけど、なんか普通と違うっていうか?」
「……どう違うと思うの?」
「言いたくないけどさ、なんか……オリジナルの手下とか下僕とか……そんな扱いされてる奴らが多かった」
 胸の奥が、思い切り熱くなった。ナイフで切り裂かれた痛みのように。
「ちゃんと実子登録されてるから、兄弟って扱いのはずなのにさ。対等なはずなのに、オリジナルもクローンもないはずなのに……見てると、なんとなくどっちがオリジナルでどっちがクローンなのか、わかるんだよ」
 それは、まさしく愛と私の関係だ。
 私たちは『姉と妹』として登録された主従関係にあった。愛はそんなことは思っていなかっただろうけど、周囲の大人たちはそう思っていた。
『お前は愛のために作られたんだから、愛のために尽くせ』
 面と向かって、そう言われたこともある。そう言った親類に父は怒ってくれた。だけどあの時、私は自分の『身の程』を知ったのだった。
「それ……なんとなく、わかる」
 弓槻さんの声は、さっきまでの加地くんに対する苛立ちとはまた違う、憤りに近い空気を含んでいた。
「なんで、あんな感じなんだろうね。だって、私たちと同じじゃん」
「天宮さん、一人でいるだろ。オリジナルはどうしてんだろな? 天宮さんとこは仲良くやれてるってことかな?」
「……どうかな」
 今度は弓槻さんの声が、なんだか沈んでしまった。なんとなく、心が痛む。私のことであって、弓槻さんや加地くんが悩む必要なんてないのに。
 そう、言おうかと思った。だけどそれより前に、弓槻さんの強い声がした。



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「クローンかどうかなんて、知るわけないじゃん。本人に聞いてみたら? まぁ……直接聞くのはけっこう無神経だけど」
「そうだよな、やっぱ」
 クローンもオリジナルも、同じ人間だ。見た目に何の差があるわけでもない。
 昔は遺伝的欠陥が多かったりと問題もあったそうだけど、今は、オリジナルの遺伝情報を90%以上の精度で再現できるほどになっている。
 だけど、やっぱり時々こんなことを聞く人はいる。
 勝手な印象だけれど、加地くんも、そうだったと思うと、少しショックだ。
「ていうか、もしそうだったら何? 友達やめんの? 実験も?」
「どっちもやめないって。別にクローンだから悪いって言ってるんじゃなくて……」
 弓槻さんは、なんだか庇ってくれている。それに加地くんも、差別的発言だったんじゃないみたいだ。だけど……聞いていてもいいんだろうか?
 そう思っているけど、下手に動けず、会話はどんどん進んでいく。
「逆で……クローンだって奴、何人か見たことあるけど、なんか普通と違うっていうか?」
「……どう違うと思うの?」
「言いたくないけどさ、なんか……オリジナルの手下とか下僕とか……そんな扱いされてる奴らが多かった」
 胸の奥が、思い切り熱くなった。ナイフで切り裂かれた痛みのように。
「ちゃんと実子登録されてるから、兄弟って扱いのはずなのにさ。対等なはずなのに、オリジナルもクローンもないはずなのに……見てると、なんとなくどっちがオリジナルでどっちがクローンなのか、わかるんだよ」
 それは、まさしく愛と私の関係だ。
 私たちは『姉と妹』として登録された主従関係にあった。愛はそんなことは思っていなかっただろうけど、周囲の大人たちはそう思っていた。
『お前は愛のために作られたんだから、愛のために尽くせ』
 面と向かって、そう言われたこともある。そう言った親類に父は怒ってくれた。だけどあの時、私は自分の『身の程』を知ったのだった。
「それ……なんとなく、わかる」
 弓槻さんの声は、さっきまでの加地くんに対する苛立ちとはまた違う、憤りに近い空気を含んでいた。
「なんで、あんな感じなんだろうね。だって、私たちと同じじゃん」
「天宮さん、一人でいるだろ。オリジナルはどうしてんだろな? 天宮さんとこは仲良くやれてるってことかな?」
「……どうかな」
 今度は弓槻さんの声が、なんだか沈んでしまった。なんとなく、心が痛む。私のことであって、弓槻さんや加地くんが悩む必要なんてないのに。
 そう、言おうかと思った。だけどそれより前に、弓槻さんの強い声がした。