本日の『部活動』もとい『実験』は、フィールドワークではなく、会議に変更。部員の増加に伴い、行動予定を見直すことになったのだ。
平たく言えば……リストの項目を増やそう、ということ。
私とナオヤくんの乏しい発想では、あっという間にリストが埋まってしまって、部は解散となってしまう。楽しみたい加地くんと弓槻さんからすれば、物足りないだろう。
そんなわけで、話し合いも二人が主体となっている。二人の発想と勢いに敵うはずもない私とナオヤくんは、デスクに座りつつも、時々同意するくらいしか、できなかった。
ただ、リストがどんどん華々しくなっていくのはわかる。どんどん膨れていくリストは、今のところ、こんな風になっている。
・学校帰りに寄り道(完了)
・友達をつくる(完了)
・激甘スイーツを食べる(完了)
・激辛料理を食べる(完了)
・部活動をする(完了)
・誰かを笑わせる
・花見をする
・お泊まり会で夜通しゲーム
・海に行く
・恋人をつくる
愛と一緒にいても、やったことのないことばかり。これらを実行していくのは、ちょっと……いやかなり、楽しみだ。
そう、思っていたのだけれど……
「ちょっと、いいですか?」
突然、ナオヤくんが挙手した。意見は大歓迎といった様子の二人は、ナオヤくんにキラキラした視線を向けた。
「この『お泊まり会で夜通しゲーム』というのは?」
「え、読んで字の如くだけど?」
弓槻さんがけろっと答える。だけどナオヤくんは納得してないみたいだ。
「それに何の意味が?」
「え、楽しくない?」
「わかりません。それに学校行事ならともかく、プライベートで男女が夜も一緒にいるのは、さすがに……」
「お前先生かよ~。別に何もあるわけないじゃん。ここに書いてあるだろ。ゲームするだけ、ゲーム」
「どんなゲームですか?」
「それはこれから決めるけどさ。そうだな、トランプとか双六とか、シューティングゲームとか、レースゲームとか色々」
「昼間に集まってすればいいのでは?」
「徹夜ってところにロマンがあるんだよ」
その気持ち、わからないわけではない。けど、難しい。
「あの……やりたくないんじゃなくて、参加できないかもしれないんじゃないかな? ね、ナオヤくん?」
ナオヤくんは、静かに頷いた。
その様子に、熱が上がりまくっていた加地くんと弓槻さんの二人は、ほんの少し沈静化した。ちょっとヒートアップしすぎだったのだ。
「ごめん、そうだよね。小学生ならともかく、高校生で男女混合でお泊まりはさすがに、ねぇ」
「学校行事だとしても、部屋は分けられるもんね」
「それに、どのご家庭もご両親の許可もらえないんじゃないかな、とも思う」
ナオヤくんはまた頷いた。皆、同じ事を思ったようだ。
きっと加地くんたちのご両親が仮に許してくれても、ナオヤくんのお母さんだけは、絶対に許さないだろうと。話し合ったわけじゃないけど、一昨日の様子から、なんとなく察せられる。
「うーん、そっか。そうだよね……じゃあ、これは一旦保留にしておこうか」
却下はしないらしい。ささっと指で操作して、『お泊まり会』の項目を一番下に移動させた。
「じゃあ、次はこれ!」
そう言って加地くんが拡大して見せた項目は……
『海へ行く』
皆、一斉にナオヤくんを見た。部長扱いのようだ。
皆から決議を求められて、ナオヤくんは少し居心地悪そうに身じろぐ。けれど、しばし考え込んで、頷いたのだった。
「よし、決定! 今週末に行くぞ!」
「おー!」
「了解しました」
「え!?」
拳を突き上げる加地くんと弓槻さん、それに一拍遅れて手を上げるナオヤくん。そして、出遅れた私……。
拒否権は、一切なかった……。