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ー/ー



 荻窪に着くころには、空が真っ暗になっていた。そのうちピカピカと発光しはじめて、私はだんだんと動悸が激しくなる。

 雷は、大の苦手。本当にパニックになるくらい、怖くて怖くて仕方がない。なかなか理解してもらえないから、人には言わないけれど。

 稲光と雷鳴は、どんどん酷くなっている。カーテンを閉めていても、その閃光が部屋まで届く。空全体が唸りをあげるような轟音が響いて、頭が真っ白になった。

 怖い。怖いよ。誰か助けて。桔平くん、助けて。無意識に名前を呼んでいた。

 ベッドに潜って布団を被っていたら、インターホンが鳴った。モニターに映っているのは、桔平くんの姿。私は慌てて応答ボタンを押した。

「大丈夫?」
「ど、どうしたの?」
「どうしたのって……電話、出ねぇから」

 え、電話? 桔平くん、電話くれてたの?

「と、とりあえず入って」

 オートロックを開錠して、しばらくしたら玄関のチャイムが鳴った。
 ドアを開けると、心配そうな桔平くんの顔。すごく久しぶりで、涙が出そうになった。その髪や洋服は、ところどころ濡れている。

「桔平くん、電話くれたの?」
「怖いってLINEしてきただろ。なにかあったのかと思って電話したのに、全然出ねぇから来たんだよ」
「え……」

 そんなの送ったっけ。ていうか私、スマホをどこに置いた? どうしよう。パニックになりすぎて、全然記憶がない。
 桔平くんは汗をかいてる。きっと急いできてくれたんだ。私なんかのために。
 
「ご、ごめん。もう大丈夫だから」

 雷が怖くて……なんて、さすがに恥ずかしくて言えない。

「本当に?」
「うん、本当に大丈夫」
「……分かった。特になにも問題ねぇなら、帰るよ」

 そう言って(きびす)を返す桔平くんの洋服の裾を、思わず掴んでしまった。

「ま、ま、待って。雨ひどいから、ずぶ濡れになっちゃう」
「別に大丈夫だよ」
「お茶、お茶くらい飲んで行って。わざわざ来てくれたのに、申し訳ないから……」

 こんなに空がピカピカなってるのに、外へ出たら危ないじゃない。私のせいで雷に打たれちゃう。

「いや、けど」

 桔平くんは戸惑っている。
 バリバリという大きな音が響いた。私は思わず身をすくめて、小さく悲鳴を上げながら桔平くんの腕を思いきり掴んだ。

「……もしかして、雷が怖い?」

 返事をする前に、また大きな雷鳴が轟く。まるで地響きみたいで、冷や汗が吹き出してくる。

「だ、大丈夫」

 なんとか声を振り絞ったけど、少しうわずってしまった。
 
「やっぱり、女の『大丈夫』は信用なんねぇな。とりあえず、お言葉に甘えて上がらせてもらうわ」

 そう言うと、桔平くんは靴を脱いで部屋へ上がった。


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 荻窪に着くころには、空が真っ暗になっていた。そのうちピカピカと発光しはじめて、私はだんだんと動悸が激しくなる。
 雷は、大の苦手。本当にパニックになるくらい、怖くて怖くて仕方がない。なかなか理解してもらえないから、人には言わないけれど。
 稲光と雷鳴は、どんどん酷くなっている。カーテンを閉めていても、その閃光が部屋まで届く。空全体が唸りをあげるような轟音が響いて、頭が真っ白になった。
 怖い。怖いよ。誰か助けて。桔平くん、助けて。無意識に名前を呼んでいた。
 ベッドに潜って布団を被っていたら、インターホンが鳴った。モニターに映っているのは、桔平くんの姿。私は慌てて応答ボタンを押した。
「大丈夫?」
「ど、どうしたの?」
「どうしたのって……電話、出ねぇから」
 え、電話? 桔平くん、電話くれてたの?
「と、とりあえず入って」
 オートロックを開錠して、しばらくしたら玄関のチャイムが鳴った。
 ドアを開けると、心配そうな桔平くんの顔。すごく久しぶりで、涙が出そうになった。その髪や洋服は、ところどころ濡れている。
「桔平くん、電話くれたの?」
「怖いってLINEしてきただろ。なにかあったのかと思って電話したのに、全然出ねぇから来たんだよ」
「え……」
 そんなの送ったっけ。ていうか私、スマホをどこに置いた? どうしよう。パニックになりすぎて、全然記憶がない。
 桔平くんは汗をかいてる。きっと急いできてくれたんだ。私なんかのために。
「ご、ごめん。もう大丈夫だから」
 雷が怖くて……なんて、さすがに恥ずかしくて言えない。
「本当に?」
「うん、本当に大丈夫」
「……分かった。特になにも問題ねぇなら、帰るよ」
 そう言って|踵《きびす》を返す桔平くんの洋服の裾を、思わず掴んでしまった。
「ま、ま、待って。雨ひどいから、ずぶ濡れになっちゃう」
「別に大丈夫だよ」
「お茶、お茶くらい飲んで行って。わざわざ来てくれたのに、申し訳ないから……」
 こんなに空がピカピカなってるのに、外へ出たら危ないじゃない。私のせいで雷に打たれちゃう。
「いや、けど」
 桔平くんは戸惑っている。
 バリバリという大きな音が響いた。私は思わず身をすくめて、小さく悲鳴を上げながら桔平くんの腕を思いきり掴んだ。
「……もしかして、雷が怖い?」
 返事をする前に、また大きな雷鳴が轟く。まるで地響きみたいで、冷や汗が吹き出してくる。
「だ、大丈夫」
 なんとか声を振り絞ったけど、少しうわずってしまった。
「やっぱり、女の『大丈夫』は信用なんねぇな。とりあえず、お言葉に甘えて上がらせてもらうわ」
 そう言うと、桔平くんは靴を脱いで部屋へ上がった。