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 桔平くんは、涙が止まらない私をずっと宥めてくれた。どうして泣いているのかは、自分でも分からない。ただ、胸がいっぱいで。嬉しいのか苦しいのか切ないのか、感情がグチャグチャ。

 泣き疲れたのと、桔平くんの手が心地よかったのもあって、私はいつの間にか眠ってしまった。

 ぼんやり目を開けると、桔平くんはまた絵を描いている。今度は出窓に飾ってある花を細かくスケッチしているみたい。
 桔平くんの瞳がなにもかも見透かしているように感じるのは、いつもいろいろなものの細部を見ようとしているからなのかな。

 もぞもぞ体を起こすと、その気配を察したのか、桔平くんが手を止めた。
 
「起きた?」
「うん」
 
 寝顔、めっちゃ見られたんじゃないかな。ヨダレとか垂れてないよね……。
 
「具合はどう?」
「だいぶよくなったよ」
「すげぇ爆睡してたもんな。イビキかいて」
「えっ、うそ」
「嘘だよ」

 私が睨むと、桔平くんは笑いをかみ殺しながら、また手を動かし始めた。
 でも桔平くんになら、ヨダレ垂らしたりイビキかいたりしている姿を見られてもいいかもって、ほんの少し思った。気を許しすぎかな。

 時計を見たら、もう16時半過ぎ。私、2時間も寝ていたの? 桔平くんをほったらかしにして。

「綺麗だな、アンスリウム」

 視線を花に向けたまま、桔平くんが言った。アンスリウムの名前が瞬時に出てきたことに驚く。
 
「桔平くん、花も詳しいの?」
「植物は好きだよ。動物と一緒で、世話ができねぇから家に飾ることはないけど。愛茉の部屋は、植物多いな。ほかはハーブか」
「うん。ハーブは虫よけにもなるし」
「どんだけ虫嫌いなんだよ」

 桔平くんは、よく笑う。それは私と一緒にいるからだって、自惚れてもいいのかな。

 合コンで最初に見た印象は、なんだか怖くて冷たそうな人って感じだったのに。この3週間くらいで、印象はまるで変わった。
 本当はすごく温かくて優しくて、とっても純粋な人。特に好きなものに向ける視線は真っ直ぐで、あれこれと理屈ばかり頭に浮かべてしまう私とは大違い。

 こんな人に好きだって言ってもらえる私は、すごく幸せなのかもしれないな。


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 桔平くんは、涙が止まらない私をずっと宥めてくれた。どうして泣いているのかは、自分でも分からない。ただ、胸がいっぱいで。嬉しいのか苦しいのか切ないのか、感情がグチャグチャ。
 泣き疲れたのと、桔平くんの手が心地よかったのもあって、私はいつの間にか眠ってしまった。
 ぼんやり目を開けると、桔平くんはまた絵を描いている。今度は出窓に飾ってある花を細かくスケッチしているみたい。
 桔平くんの瞳がなにもかも見透かしているように感じるのは、いつもいろいろなものの細部を見ようとしているからなのかな。
 もぞもぞ体を起こすと、その気配を察したのか、桔平くんが手を止めた。
「起きた?」
「うん」
 寝顔、めっちゃ見られたんじゃないかな。ヨダレとか垂れてないよね……。
「具合はどう?」
「だいぶよくなったよ」
「すげぇ爆睡してたもんな。イビキかいて」
「えっ、うそ」
「嘘だよ」
 私が睨むと、桔平くんは笑いをかみ殺しながら、また手を動かし始めた。
 でも桔平くんになら、ヨダレ垂らしたりイビキかいたりしている姿を見られてもいいかもって、ほんの少し思った。気を許しすぎかな。
 時計を見たら、もう16時半過ぎ。私、2時間も寝ていたの? 桔平くんをほったらかしにして。
「綺麗だな、アンスリウム」
 視線を花に向けたまま、桔平くんが言った。アンスリウムの名前が瞬時に出てきたことに驚く。
「桔平くん、花も詳しいの?」
「植物は好きだよ。動物と一緒で、世話ができねぇから家に飾ることはないけど。愛茉の部屋は、植物多いな。ほかはハーブか」
「うん。ハーブは虫よけにもなるし」
「どんだけ虫嫌いなんだよ」
 桔平くんは、よく笑う。それは私と一緒にいるからだって、自惚れてもいいのかな。
 合コンで最初に見た印象は、なんだか怖くて冷たそうな人って感じだったのに。この3週間くらいで、印象はまるで変わった。
 本当はすごく温かくて優しくて、とっても純粋な人。特に好きなものに向ける視線は真っ直ぐで、あれこれと理屈ばかり頭に浮かべてしまう私とは大違い。
 こんな人に好きだって言ってもらえる私は、すごく幸せなのかもしれないな。