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「愛茉がめちゃくちゃネコを被っていようが、裏表が激しかろうが、そんなことで嫌いになるかよ。美醜あわせ持ってるのは自然なことだろ。いまオレに見えてるのが愛茉の表でも裏でも、まったく関係ねぇから。オレはただ、自分に自信がなくてオレに嫌われたくねぇって不安がってる愛茉が、すっげぇ愛おしい」

 桔平くんの優しい声が、胸に響く。
 涙もろいのは、生理中で情緒不安定だから。ただそれだけだもん。ああ、またブサイクな顔になる。

 どうしてこんなに優しいのか。そんなのは、考えなくても分かることだった。私のことが好きで、大切に想ってくれているから。ただ、それだけ。
 出会ってからの時間も、理由も、きっと桔平くんにとってはどうでもいいこと。好きっていう感覚、感情だけがすべてなんだ。

 私はこんな風に、自分の感情を上手に掬い取れない。周りにどう思われるのかを考えているうちに、深い所へと沈んでいってしまう。でも桔平くんは私の心をかき回して、沈んでいた感情を浮かび上がらせる。
 
「今日は泣いてばっかだな」

 布団の上から、子供を宥めるように優しく肩をさすってくれた。
 
「……だって、いまそういうこと言うのは、ずるい」
「そうだな。愛茉が弱ってるの、分かってて言ってるしな。いままで手出さなかったのだって、愛茉を信用させるためだし。嫌いになる? 計算高くて、ずるい男だって」

 なるわけない。だって知ってしまったから。桔平くんの、私に対する気持ちを。
 こんな人は、もう二度と現れないかもしれない。私の汚い部分も、本当は触れられたくないところも、全部包み込んでくれるような人は。

「計算したり、ずるいこと考えたり。それぐらい愛茉のことが好きなんだよ。自分でも、どうしようもねぇや」

 桔平くんは自嘲気味に笑う。

「でもやっぱり、愛茉には納得いくまで考えてほしい。オレの気持ちばっかり押しつけたくはねぇからさ。とりあえず、体調がよくなったら、カレーを食いに行こう」
「……うん」

 この大きくて優しい手を取らなかったら、一生後悔する。
 でもいまはまだ、頭が回らなくて。なにを言えばいいのかが分からない。だから、もう少しだけ待ってて。ちゃんと自分の言葉で伝えるから。


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「愛茉がめちゃくちゃネコを被っていようが、裏表が激しかろうが、そんなことで嫌いになるかよ。美醜あわせ持ってるのは自然なことだろ。いまオレに見えてるのが愛茉の表でも裏でも、まったく関係ねぇから。オレはただ、自分に自信がなくてオレに嫌われたくねぇって不安がってる愛茉が、すっげぇ愛おしい」
 桔平くんの優しい声が、胸に響く。
 涙もろいのは、生理中で情緒不安定だから。ただそれだけだもん。ああ、またブサイクな顔になる。
 どうしてこんなに優しいのか。そんなのは、考えなくても分かることだった。私のことが好きで、大切に想ってくれているから。ただ、それだけ。
 出会ってからの時間も、理由も、きっと桔平くんにとってはどうでもいいこと。好きっていう感覚、感情だけがすべてなんだ。
 私はこんな風に、自分の感情を上手に掬い取れない。周りにどう思われるのかを考えているうちに、深い所へと沈んでいってしまう。でも桔平くんは私の心をかき回して、沈んでいた感情を浮かび上がらせる。
「今日は泣いてばっかだな」
 布団の上から、子供を宥めるように優しく肩をさすってくれた。
「……だって、いまそういうこと言うのは、ずるい」
「そうだな。愛茉が弱ってるの、分かってて言ってるしな。いままで手出さなかったのだって、愛茉を信用させるためだし。嫌いになる? 計算高くて、ずるい男だって」
 なるわけない。だって知ってしまったから。桔平くんの、私に対する気持ちを。
 こんな人は、もう二度と現れないかもしれない。私の汚い部分も、本当は触れられたくないところも、全部包み込んでくれるような人は。
「計算したり、ずるいこと考えたり。それぐらい愛茉のことが好きなんだよ。自分でも、どうしようもねぇや」
 桔平くんは自嘲気味に笑う。
「でもやっぱり、愛茉には納得いくまで考えてほしい。オレの気持ちばっかり押しつけたくはねぇからさ。とりあえず、体調がよくなったら、カレーを食いに行こう」
「……うん」
 この大きくて優しい手を取らなかったら、一生後悔する。
 でもいまはまだ、頭が回らなくて。なにを言えばいいのかが分からない。だから、もう少しだけ待ってて。ちゃんと自分の言葉で伝えるから。