鏡の奥の片翼人~ベターハーフ~ 1-②
ー/ー とはいえ。
ハルがこんな行動を取るように仕向けたのは、もちろん瑛比古さんである。きっかけはミチ姐が与えてくれたが。
ハルが、自身の小さな気がかりにさらに注目するように、瑛比古さん、こっそり働きかけをした。
瑛比古さんが、霊的な感応力を持っているように、ハルもあることに、過敏に反応する。
感情。
あるいは、瑛比古さんより突出した力を持っているかもしれない。
瑛比古さんは、ある程度形をとった「意思」に対してしか――意思そのものと言える魂、霊魂ならともかく、生きた人間相手の場合、生霊程度の強さを持った意識でないと感じとることは出来ない。
多少の「感情」を感じ取れないこともないが、どちらかと言うと「意思」に付随する情報の意味合いが強い。
ただ、死霊かどうかは分かるので、相手が死んでいないという事実から、逆説的に生存を確認できる。
また、強烈な意思や霊的な存在であれば、本人を前にしなくても――写真や物でも――感じとることは出来る。
対話希望のある霊や守護霊レベルの高位の魂なら、言語的コミュニケーションも可能である。
守護霊本体を前にすれば、対話もできるが、被守護者に不利益になることは基本黙秘されてしまうので、守護霊に聞いて真相解決! なんて都合のいいことはそうは起きない。
どっちかというと興奮に任せて喋りまくる生霊の類の方が結構ポロリと話してくれる。
ただし、対話は直接でないとできないので、写真だと憑いているかどうか程度しか分からない。
意識の方向性や位置情報など大まかな存在感も感知できるが、あくまでも東西南北、地方地図レベルの『大まか』である。つまるところ、死霊プラス生霊相手にしか役に立たない。
(瑛比古さんにも守護霊はいる。割と力が強いらしく、半端な霊力の浮遊霊は怖がって近づかない。ただし、おそらくご先祖様の霊なんだろうけど、気難しいのか、へそ曲がりなのか、後ろで腕を組んで相手を威圧しているだけで、声もかけてくれない。すでに与えられた力だけで何とかしろ、という愛のムチだと考えて、自分の守護霊は「お守り」程度に考えている)
一方ハルは。
生霊までいかない、それよりもずっと弱い、感情の起伏を感じとる。
生きている人間が、ひたすら唯一つの思いに集中し続けることは案外難しい。
例外は愛憎……つまり人に執着することくらいで、物欲などは意外と満たされやすいのか、純度が下がる。
それが極まれば、善くも悪くも霊的な存在へと昇華され、瑛比古さんにも感じとることは出来る。
そうなる以前の、形を取れない思念を、ハルは感じとる。
ダイレクトに。
そして、やがてその思いを、明確な形にして認識する。
それは目に見える形で、耳に聞こえる声で、ハルに押し寄せる。
人間社会に生きる上で、これは精神的にかなりリスキーな状態である。
自分に向けられたものでない感情でさえ、それが強いものなら精神的に打撃を受けるし、弱くても数が多ければ、やはり負担になる。
ハルが今まで平穏無事な生活を送っているのは、瑛比古さんが暗示をかけているからに他ならない。
小さな頃、ハルを人混みに連れていくと、大抵むずがった。
泣き出すことさえあったので、自然と人混みは避けるようになった。
そのわりに人見知りはしなくて、誰とでも仲良く遊ぶ子だった。
あれは、今のメイより少し大きいくらいの頃。
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