通りすがりの未知人~ストレンジャー~ 2-②
ー/ー「あの……」
意を決して、ハルは話しかけた。
「はい?」
やや低めの、優しい声音……ちょっと訝しげに、けれど拒絶する感じはない。
「一昨日……」と言いかけた時。
キュルル……。
朝ごはん抜きの、まだまだ食べ盛りのハルのお腹が、代わりに話しかけた。
カッ、と赤面したハルと、手に持った荷物……ナミの持たせてくれた紙袋と、途中のコンビニで買ったコーヒーのペットボトルを見比べて。
「あ、よかったらお座りになって?」
にっこり。
女性は、少し右にずれながら、ベンチの左側(ハルからは向かって右側)の空きスペースを勧めた。
別に公園内にベンチは一つきりではなかったから、他に行けばいい、と思われても仕方ない。
現に、公園内には、散歩している老夫婦と、犬を連れた男性が、遠くに見えるだけで、他には誰もいないのだから。
あえて言うなら、このベンチは公園の真ん中の噴水と、南側半分に広がる先ほど彼女たちが世話していた花壇が一望できる、日当たりのよい場所であり。
そこで朝ごはんを食べたいという希望があるのだろう、と彼女が解釈したのかもしれない。
嫌な顔せず、見も知らぬ男性に、同席を許してくれた、彼女の優しさと警戒心のなさに、ハルはますます違和感を覚えた。
なんで、そんな風に穏やかでいられるのか。
あんな、悪感情の、瘴気を纏いながら。
……今は、みじんも感じないけれど。
と、またもう一度、お腹が鳴ってしまった。
「あ、スミマセン……」
まだ顔を赤くしたまま、それでも勧められるまま、ハルはベンチの左側に腰を下ろした。
「公園で朝ごはん? 素敵ね。いいお天気だもの」
「あ、いえ、ちょっと慌てて出てきちゃって……お姉さんは、公園のボランティアですか? 花壇の手入れをされていたのを見ましたけど」
「ええ。そうみたい……いえ、そうなのよ。毎週の日課……なの」
思い出し思い出し、言葉をつなぐように。歯切れの悪い言い方だった。
「でも、いいものね。朝の公園って。こんなに空気も澄んで。いつも昼間しか来なかったから……あ、前はね……そう、朝に来るなんて……いえ、毎週来ていたのだけど……」
女性は軽い混乱を起こし始める。
どう言葉をかけようか困ってしまったハルのお腹が……また鳴った。
沈黙の後、女性はクスリと笑った。
場をわきまえない腹の音――いや、この場合はしっかり空気を読んだらしい。女性は落ち着きを取り戻した。
「あ、よかったら、半分いかがですか?」
「え?」
「あ、いや、無理にじゃないんですが。一人だと食べづらいというか……味は保証します! 料理上手の弟が、得意のホットサンド……焼いてないんでサンドイッチかな……あ、なんで味は……もしかしたら保証できない……ものを勧めるの、失礼ですね……」
段々支離滅裂になり、声が小さくなって、ついでに身も縮こまってきたハルの目の前に、ニュッ、と手がつき出された。
「いただくわ。弟さんご自慢の品」
いそいそと包みを開き、両手に捧げるように持って、彼女の正面に差し出す。
「どうぞ」
「お先にいただきます」
そう言って、パクリ、と一口かじり。
「ん……!」
ちょっと驚いたように、でもすぐにはしゃべらず、ゆっくり咀嚼して、おもむろにハルを見る。
満面の笑顔で。
「美味しい!」
「よかった」
ハルも自分のサンドイッチを口にした。
新鮮な野菜のシャキシャキした歯触りと甘味が、口の中に広がる。
スライスしたゆで卵のホロホロ感を受け止める、チーズのコクもまた……。
「あれ……?」
「どうしたの?」
「いえ……チーズが、普通のだったんで。ホットサンドの時は、とけるチーズを使ってるのにな……って」
冷たくても滑らかな口当たりは、そのまま食べるタイプのプロセスチーズだった。
かじったパンの端を少しめくって確認するハルに、女性は柔らかな微笑みを浮かべ、小さく首を傾げた。
意を決して、ハルは話しかけた。
「はい?」
やや低めの、優しい声音……ちょっと訝しげに、けれど拒絶する感じはない。
「一昨日……」と言いかけた時。
キュルル……。
朝ごはん抜きの、まだまだ食べ盛りのハルのお腹が、代わりに話しかけた。
カッ、と赤面したハルと、手に持った荷物……ナミの持たせてくれた紙袋と、途中のコンビニで買ったコーヒーのペットボトルを見比べて。
「あ、よかったらお座りになって?」
にっこり。
女性は、少し右にずれながら、ベンチの左側(ハルからは向かって右側)の空きスペースを勧めた。
別に公園内にベンチは一つきりではなかったから、他に行けばいい、と思われても仕方ない。
現に、公園内には、散歩している老夫婦と、犬を連れた男性が、遠くに見えるだけで、他には誰もいないのだから。
あえて言うなら、このベンチは公園の真ん中の噴水と、南側半分に広がる先ほど彼女たちが世話していた花壇が一望できる、日当たりのよい場所であり。
そこで朝ごはんを食べたいという希望があるのだろう、と彼女が解釈したのかもしれない。
嫌な顔せず、見も知らぬ男性に、同席を許してくれた、彼女の優しさと警戒心のなさに、ハルはますます違和感を覚えた。
なんで、そんな風に穏やかでいられるのか。
あんな、悪感情の、瘴気を纏いながら。
……今は、みじんも感じないけれど。
と、またもう一度、お腹が鳴ってしまった。
「あ、スミマセン……」
まだ顔を赤くしたまま、それでも勧められるまま、ハルはベンチの左側に腰を下ろした。
「公園で朝ごはん? 素敵ね。いいお天気だもの」
「あ、いえ、ちょっと慌てて出てきちゃって……お姉さんは、公園のボランティアですか? 花壇の手入れをされていたのを見ましたけど」
「ええ。そうみたい……いえ、そうなのよ。毎週の日課……なの」
思い出し思い出し、言葉をつなぐように。歯切れの悪い言い方だった。
「でも、いいものね。朝の公園って。こんなに空気も澄んで。いつも昼間しか来なかったから……あ、前はね……そう、朝に来るなんて……いえ、毎週来ていたのだけど……」
女性は軽い混乱を起こし始める。
どう言葉をかけようか困ってしまったハルのお腹が……また鳴った。
沈黙の後、女性はクスリと笑った。
場をわきまえない腹の音――いや、この場合はしっかり空気を読んだらしい。女性は落ち着きを取り戻した。
「あ、よかったら、半分いかがですか?」
「え?」
「あ、いや、無理にじゃないんですが。一人だと食べづらいというか……味は保証します! 料理上手の弟が、得意のホットサンド……焼いてないんでサンドイッチかな……あ、なんで味は……もしかしたら保証できない……ものを勧めるの、失礼ですね……」
段々支離滅裂になり、声が小さくなって、ついでに身も縮こまってきたハルの目の前に、ニュッ、と手がつき出された。
「いただくわ。弟さんご自慢の品」
いそいそと包みを開き、両手に捧げるように持って、彼女の正面に差し出す。
「どうぞ」
「お先にいただきます」
そう言って、パクリ、と一口かじり。
「ん……!」
ちょっと驚いたように、でもすぐにはしゃべらず、ゆっくり咀嚼して、おもむろにハルを見る。
満面の笑顔で。
「美味しい!」
「よかった」
ハルも自分のサンドイッチを口にした。
新鮮な野菜のシャキシャキした歯触りと甘味が、口の中に広がる。
スライスしたゆで卵のホロホロ感を受け止める、チーズのコクもまた……。
「あれ……?」
「どうしたの?」
「いえ……チーズが、普通のだったんで。ホットサンドの時は、とけるチーズを使ってるのにな……って」
冷たくても滑らかな口当たりは、そのまま食べるタイプのプロセスチーズだった。
かじったパンの端を少しめくって確認するハルに、女性は柔らかな微笑みを浮かべ、小さく首を傾げた。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
作者の他の作品
この作者の他作品はありません。
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。