第83話 思い出のアルバム
ー/ー「彼は羽成義之。私のたった一人の甥っ子」
文恵は、その写真に写る彼の名を口にする。時折学ラン姿もあり、当時の義之は学生であったことを窺わせる。
「学生とはいえ、良行さんにそっくり!」
京子は、写真の両者を見比べて感嘆の息を漏らす。時代錯誤しているとはいえ、二人は瓜二つと言えるほどそっくりなのである。
「それと、この隣に写っているのが私だ。いやぁ、実に懐かしい!」
春奈は、写真に写った義之の隣の人物を指差す。そこにはセーラー服姿の女子学生も映っているが、現在の中年太りをした彼女とは比べ物にならないほどにやせ型である。
こういう写真を見ると、時の流れは残酷だと思える。言葉というのは、TPOを弁えないと大変なことになることを小学生の彼女は知らない。
「それと、この写真は私達が小学生の頃だ。左から恭治郎に義之、そして私だ」
アルバムのページをめくった春奈は饒舌に語る。そこには小学生当時の彼女達が映っており、それぞれの個性が色濃く現れている。
「恭治郎さんって、ほむら喫茶のマスター!?」
京子の反応に対して、『ご名答!』と言わんばかりに指差しする春奈。何を隠そう、マスターこと穂村恭治郎は義之の幼馴染であり、毎回のように彼に振り回されていたのである。
そんな彼が『覇道』というものに目覚めてコーヒーマイスターになるというのは、当時の面影からは想像もつかない。
「これが姉貴!? まるで別人!!」
一方、秋子は小学生時代の姉の印象にギャップを覚えている様子。秋子のいうように、写真の春奈は気弱そうな雰囲気で現在の強気な姿は微塵も感じられない。
「そう思うだろう? 私の可憐な美少女時代だ!」
自意識過剰な春奈の言葉からは、当時の気弱さの鱗片は無に等しいほど感じられない。果たして彼女は強くなったのか、それとも傲慢になっただけなのか。その答え、ここでは差し控えることにする。
「ちなみにこの頃の夏美は幼児、秋子は新生児だったなぁ」
春奈は、当時を懐古しつつ話を続ける。秋子にこの頃の記憶がないのは道理であろう。
文恵からすれば、万事屋みなもとの後継者はこの二人のどちらを想定していたのかもしれない。
「それと、これが当時の母だ」
隣のページには、源三姉妹と義之が前面に映し出された集合写真があった。背景には若い主婦と思われる人物もおり、おそらくそれが当時の文恵なのだろう。
「文恵さん、とっても美人!!」
京子が驚愕するのも無理はない。なぜなら、そこには京美人を思わせるような絶世の美女の姿があったからだ。
「そんなこと言われたら照れるじゃない、うふふふ♪」
文恵は照れ隠しにそういうが、内心はその言葉を聞いて悦に浸っている。しかしながら、年齢を重ねてもなお彼女の美貌は遜色が少なく、そこへ品格も伴っている。
「おそらく、私達三姉妹の中で一番の母譲りは秋子だろうな」
春奈が誇らしげに妹のことを語る。秋子自身もその容姿を自認しており、一時期は夜の街で有名になっていたほどである。
「そして、私達の父は商売人堅気の気さくな人間だった。だが、胃がんで早くに亡くなってしまったがな......」
春奈が、心なしか俯き気味に話を続けた。いくら三姉妹とはいえ、父に先立たれた母を支えていくことは容易でなかったに違いない。
「文恵さん一家も色々あったんですねぇ」
良行が、深く頷きながら感嘆の声を漏らす。源一家のこれまでを赤裸々に聞くのは、おそらく初めてのことだろう。
「......あれ? ところで、この男性はどういった人なんですか? 文恵さんのご主人にしては、目元が似ている気がしますけど」
アルバムをめくっていた中で、秋子があることに気付いた。義之とともに映る中年男性がいることに。そして、彼の瞳がどことなく文恵と似通っているということに。
「それは、私から説明するわね」
文恵が、会話に割り込むような形で京子に答える。その表情は、どうしても文恵自身が語りたいと言わんばかりだった。
「その人は羽成健造。私の兄であり、良行の父でもある人物なの」
自ら語りたいという思いに反し、彼女の表情はどことなく悲しげに見えた。果たして、羽成親子に何があったのか。
その真相が今、健造の実妹である文恵の口から語られることとなる。
文恵は、その写真に写る彼の名を口にする。時折学ラン姿もあり、当時の義之は学生であったことを窺わせる。
「学生とはいえ、良行さんにそっくり!」
京子は、写真の両者を見比べて感嘆の息を漏らす。時代錯誤しているとはいえ、二人は瓜二つと言えるほどそっくりなのである。
「それと、この隣に写っているのが私だ。いやぁ、実に懐かしい!」
春奈は、写真に写った義之の隣の人物を指差す。そこにはセーラー服姿の女子学生も映っているが、現在の中年太りをした彼女とは比べ物にならないほどにやせ型である。
こういう写真を見ると、時の流れは残酷だと思える。言葉というのは、TPOを弁えないと大変なことになることを小学生の彼女は知らない。
「それと、この写真は私達が小学生の頃だ。左から恭治郎に義之、そして私だ」
アルバムのページをめくった春奈は饒舌に語る。そこには小学生当時の彼女達が映っており、それぞれの個性が色濃く現れている。
「恭治郎さんって、ほむら喫茶のマスター!?」
京子の反応に対して、『ご名答!』と言わんばかりに指差しする春奈。何を隠そう、マスターこと穂村恭治郎は義之の幼馴染であり、毎回のように彼に振り回されていたのである。
そんな彼が『覇道』というものに目覚めてコーヒーマイスターになるというのは、当時の面影からは想像もつかない。
「これが姉貴!? まるで別人!!」
一方、秋子は小学生時代の姉の印象にギャップを覚えている様子。秋子のいうように、写真の春奈は気弱そうな雰囲気で現在の強気な姿は微塵も感じられない。
「そう思うだろう? 私の可憐な美少女時代だ!」
自意識過剰な春奈の言葉からは、当時の気弱さの鱗片は無に等しいほど感じられない。果たして彼女は強くなったのか、それとも傲慢になっただけなのか。その答え、ここでは差し控えることにする。
「ちなみにこの頃の夏美は幼児、秋子は新生児だったなぁ」
春奈は、当時を懐古しつつ話を続ける。秋子にこの頃の記憶がないのは道理であろう。
文恵からすれば、万事屋みなもとの後継者はこの二人のどちらを想定していたのかもしれない。
「それと、これが当時の母だ」
隣のページには、源三姉妹と義之が前面に映し出された集合写真があった。背景には若い主婦と思われる人物もおり、おそらくそれが当時の文恵なのだろう。
「文恵さん、とっても美人!!」
京子が驚愕するのも無理はない。なぜなら、そこには京美人を思わせるような絶世の美女の姿があったからだ。
「そんなこと言われたら照れるじゃない、うふふふ♪」
文恵は照れ隠しにそういうが、内心はその言葉を聞いて悦に浸っている。しかしながら、年齢を重ねてもなお彼女の美貌は遜色が少なく、そこへ品格も伴っている。
「おそらく、私達三姉妹の中で一番の母譲りは秋子だろうな」
春奈が誇らしげに妹のことを語る。秋子自身もその容姿を自認しており、一時期は夜の街で有名になっていたほどである。
「そして、私達の父は商売人堅気の気さくな人間だった。だが、胃がんで早くに亡くなってしまったがな......」
春奈が、心なしか俯き気味に話を続けた。いくら三姉妹とはいえ、父に先立たれた母を支えていくことは容易でなかったに違いない。
「文恵さん一家も色々あったんですねぇ」
良行が、深く頷きながら感嘆の声を漏らす。源一家のこれまでを赤裸々に聞くのは、おそらく初めてのことだろう。
「......あれ? ところで、この男性はどういった人なんですか? 文恵さんのご主人にしては、目元が似ている気がしますけど」
アルバムをめくっていた中で、秋子があることに気付いた。義之とともに映る中年男性がいることに。そして、彼の瞳がどことなく文恵と似通っているということに。
「それは、私から説明するわね」
文恵が、会話に割り込むような形で京子に答える。その表情は、どうしても文恵自身が語りたいと言わんばかりだった。
「その人は羽成健造。私の兄であり、良行の父でもある人物なの」
自ら語りたいという思いに反し、彼女の表情はどことなく悲しげに見えた。果たして、羽成親子に何があったのか。
その真相が今、健造の実妹である文恵の口から語られることとなる。
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