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第81話 財宝の真実

ー/ー



『ポロッ』
 互いの手の隙間から、丸い石は床へ吸い寄せられていくように落ちていく。そして、次の瞬間......!
「パカッ!!」
 あろうことか、石は真っ二つに割れた。これまでの一連の出来事はあまりにも一瞬で、誰もがそこへ介入する余地などなかった。
『......え?』
 加えて、石が割れるという稀有な光景に虚を突かれた一同は固まってしまう。それはまるで、時間が止まってしまったかのような空気だった。
「財宝が、割れたぁぁぁっ!!!」
 時間差で、のりこはその事実に気付いた。源羽成の財宝と思われたそれは、たった今彼女の目の前で損壊したのだ。
「どうしよう!? おばさんの友達の宝物壊しちゃったよぉぉぉっ!!!」
 罪悪感に苛まれたのりこは狼狽する。だが、そんな彼女を春奈は熱く抱擁した。
「いいんだ。よしゆきの宝物を見つけてくれたことが、私は一番嬉しいんだ」
 一見すると何の変哲もない石。けれど、春奈にとっては再会の叶わない旧友を回想する数少ない品だったに違いない。のりこは、その思い出を呼び起こしてくれた恩人に他ならなかった。
「でも! でも! おばさんにとって大切な宝物だったんでしょ!? 私はそれを壊しちゃったんだよ!!」
 のりこの狼狽は尚も収まらず、それどころか慟哭してしまっている。彼女にとって、それは友人の宝物を壊したという罪深い事実に変わりはないようだ。
「......あれ?」
 咽び泣きしている彼女の傍らで、りょうたは何かに気付いた。彼は何を思ったのか、石の断片を手に取ってしきりに観察している。
「おかあさん、これなぁに?」
 りょうたは、その断片を京子へ見せる。それを見た彼女も不思議そうな表情を浮かべる。
「あら、これは一体何かしらねぇ??」
 京子もまた、その石をしきりに観察し始めた。だが、彼の見せたそれについては分かりかねる様子。
「ちょっと待ってくださいね......」
 二人の間に秋子は割って入ると、石の断片を虫眼鏡で観察し始める。果たして、それは一体何なのだろうか?
「これって......まさか、嘘でしょ!!? だとしたら、これは!!」
 秋子の知る限りで、石の断片には何か驚くべき秘密が隠されているのかもしれない。素人目には分からないようだが、彼女にはどことなく理解できたようだ。
「店長さん、これが何だか分かるの!?」
 りょうたは、前のめりになって秋子へ尋ねる。それはきっと、少年の多くが思わず興奮してしまう何かに違いない。
「少なくとも、これは海賊の財宝よりもすごい物です!」
 石の断片を観察した秋子は、驚愕しつつもその事実を語っている。はてさて、財宝よりもすごい物とは一体何か。
「この三角、そんなにすごい物なの!!?」
 りょうたが瞳を輝かせながら秋子へ尋ねる。彼の掌にある石の断片からは、三角を思わせる何かが顔を覗かせているようだ。
「これはおそらく......メガロドンの歯に違いありません!!!」
 メガロドン、その名をどこかで聞いたような聞いていないような。一瞬りょうたは考え込んだが、思い返した彼に電流走る......!
「メ、メガロドン!!?」
 りょうたは思い出した。E・Bで自身が駆使したビーストの実物であると。メガロドンとは、太古に実在したとされる巨大ザメのことである。
 その大きさは10m超えとされ、時にはクジラさえも捕食したと言われている。絶滅種であるが、今も深海に潜んでいるのではないかとまことしやかに囁かれている。
「え、こんな石ころにハナレドン!!?」
 さすがに、のりこ自身の妄想した生物が実在するわけがないだろう。実を言うと、のりこの手にしていた丸い石はノジュールと言われる特殊な鉱石。このように化石を内在していることもあり、自然界のガチャとも称される。
「まさか、よしゆきは本当に宝物を見つけていたとはな......」
 驚愕の事実を知った春奈は、天を仰いだ。形はどうであれ、結果的によしゆきは宝物を見つけていた事実に変わりなかったのだ。
「けれど、おばさんの大切な宝物を壊しちゃった。ごめんなさい」
 我に返ったのりこは、春奈に詫びた。結果はともかく、春奈の宝物であったノジュールを損壊してしまった事実に変わりない。
「いいや、むしろ感謝している。こんな石ころにサメの化石が入っていたなんて、素敵じゃないか」
 旧友の宝物は夢物語に終わらず、現実のものとなった。思い出は色褪せず、むしろいっそう輝きを放っている。その事実に、春奈は満足げな表情を浮かべている。
「宝物は消えてしまった。だから、この化石はもう君の物だ」
 大切だった宝物は、今や形を変えた。自身も変わらねばと直感した春奈は、その宝物を次に託すべきと直感したようだ。
「うん。ありがとう、おばさん!」
 のりこの表情は誇らしげだった。


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『ポロッ』
 互いの手の隙間から、丸い石は床へ吸い寄せられていくように落ちていく。そして、次の瞬間......!
「パカッ!!」
 あろうことか、石は真っ二つに割れた。これまでの一連の出来事はあまりにも一瞬で、誰もがそこへ介入する余地などなかった。
『......え?』
 加えて、石が割れるという稀有な光景に虚を突かれた一同は固まってしまう。それはまるで、時間が止まってしまったかのような空気だった。
「財宝が、割れたぁぁぁっ!!!」
 時間差で、のりこはその事実に気付いた。源羽成の財宝と思われたそれは、たった今彼女の目の前で損壊したのだ。
「どうしよう!? おばさんの友達の宝物壊しちゃったよぉぉぉっ!!!」
 罪悪感に苛まれたのりこは狼狽する。だが、そんな彼女を春奈は熱く抱擁した。
「いいんだ。よしゆきの宝物を見つけてくれたことが、私は一番嬉しいんだ」
 一見すると何の変哲もない石。けれど、春奈にとっては再会の叶わない旧友を回想する数少ない品だったに違いない。のりこは、その思い出を呼び起こしてくれた恩人に他ならなかった。
「でも! でも! おばさんにとって大切な宝物だったんでしょ!? 私はそれを壊しちゃったんだよ!!」
 のりこの狼狽は尚も収まらず、それどころか慟哭してしまっている。彼女にとって、それは友人の宝物を壊したという罪深い事実に変わりはないようだ。
「......あれ?」
 咽び泣きしている彼女の傍らで、りょうたは何かに気付いた。彼は何を思ったのか、石の断片を手に取ってしきりに観察している。
「おかあさん、これなぁに?」
 りょうたは、その断片を京子へ見せる。それを見た彼女も不思議そうな表情を浮かべる。
「あら、これは一体何かしらねぇ??」
 京子もまた、その石をしきりに観察し始めた。だが、彼の見せたそれについては分かりかねる様子。
「ちょっと待ってくださいね......」
 二人の間に秋子は割って入ると、石の断片を虫眼鏡で観察し始める。果たして、それは一体何なのだろうか?
「これって......まさか、嘘でしょ!!? だとしたら、これは!!」
 秋子の知る限りで、石の断片には何か驚くべき秘密が隠されているのかもしれない。素人目には分からないようだが、彼女にはどことなく理解できたようだ。
「店長さん、これが何だか分かるの!?」
 りょうたは、前のめりになって秋子へ尋ねる。それはきっと、少年の多くが思わず興奮してしまう何かに違いない。
「少なくとも、これは海賊の財宝よりもすごい物です!」
 石の断片を観察した秋子は、驚愕しつつもその事実を語っている。はてさて、財宝よりもすごい物とは一体何か。
「この三角、そんなにすごい物なの!!?」
 りょうたが瞳を輝かせながら秋子へ尋ねる。彼の掌にある石の断片からは、三角を思わせる何かが顔を覗かせているようだ。
「これはおそらく......メガロドンの歯に違いありません!!!」
 メガロドン、その名をどこかで聞いたような聞いていないような。一瞬りょうたは考え込んだが、思い返した彼に電流走る......!
「メ、メガロドン!!?」
 りょうたは思い出した。E・Bで自身が駆使したビーストの実物であると。メガロドンとは、太古に実在したとされる巨大ザメのことである。
 その大きさは10m超えとされ、時にはクジラさえも捕食したと言われている。絶滅種であるが、今も深海に潜んでいるのではないかとまことしやかに囁かれている。
「え、こんな石ころにハナレドン!!?」
 さすがに、のりこ自身の妄想した生物が実在するわけがないだろう。実を言うと、のりこの手にしていた丸い石はノジュールと言われる特殊な鉱石。このように化石を内在していることもあり、自然界のガチャとも称される。
「まさか、よしゆきは本当に宝物を見つけていたとはな......」
 驚愕の事実を知った春奈は、天を仰いだ。形はどうであれ、結果的によしゆきは宝物を見つけていた事実に変わりなかったのだ。
「けれど、おばさんの大切な宝物を壊しちゃった。ごめんなさい」
 我に返ったのりこは、春奈に詫びた。結果はともかく、春奈の宝物であったノジュールを損壊してしまった事実に変わりない。
「いいや、むしろ感謝している。こんな石ころにサメの化石が入っていたなんて、素敵じゃないか」
 旧友の宝物は夢物語に終わらず、現実のものとなった。思い出は色褪せず、むしろいっそう輝きを放っている。その事実に、春奈は満足げな表情を浮かべている。
「宝物は消えてしまった。だから、この化石はもう君の物だ」
 大切だった宝物は、今や形を変えた。自身も変わらねばと直感した春奈は、その宝物を次に託すべきと直感したようだ。
「うん。ありがとう、おばさん!」
 のりこの表情は誇らしげだった。