第78話 深奥のその先
ー/ー「みんな、どこへいっちゃたのかしら......」
のりこ達は突然現れた激流に飲まれ、入り口よりも遥か遠くへ流されてしまった。のりこが辿り着いたのは、先程の岩場とは違う足元が粘土質な場所。 天井から僅かな隙間から日が差していて、ぼんやりと周辺の様子も目視で確認することが出来る。
「ここはきっとあの場所ね。誰が、近くにいるといいんだけど」
のりこは、この場所に覚えがあった。それもそうだろう、ここは以前のりこが『羽馴の藪知らず』へ踏み入った際に落ちた場所なのだから。
「ワン! ワン!」
近くからケンの声がした。そこから歩いて程なく、のりこはケンと合流する。彼ものりこを見つけて、安堵の表情を浮かべている。
「ケンちゃん、無事で良かった!」
元気に尻尾を振るケンに、のりこは熱い抱擁。初見でないといえ、未知の場所で仲間がいることは非常に心強い。よく見ると、ケンはブリキ製の箱を守るように覆い被さっている。
「ワンッ!」
のりこはケンから熱い眼差しを送られている。その表情から、ケンはブリキの箱が気に入ったようだ。
「この箱はきっと、はなれのざいほうよね! もちろん持って行くわよ!」
のりこの言葉を聞いたケンは、喜びを表現するかのように激しく尻尾を振った。海賊の財宝がブリキの箱に入っているのかは甚だ疑問だが、中身を確かめる余地はありそうだ。
「さて、りょうたとルナちゃんも探さないと!」
ケンとのりこは逸れた仲間と合流する為、洞穴の更に奥へ進むことにした。
――
一方、のりこ達よりも更に深奥へ流されたりょうたはスマートフォンを手に取っていた。
「駄目だ、スマホは圏外でネットが繋がらない。bMapも起動しないし、参ったなぁ......」
文明の利器に慣れてしまったりょうたは、その全てが機能せず途方に暮れていた。インターネット回線が不通な状態で機能しているのは、アプリケーションの照明だけだ。
「それにしても、ここの足場は泥だらけで歩きにくいなぁ」
普段は粘土質な足場だが、水気を含んでしまったことにより悪路となる。入り口付近が岩場であったことを踏まえると、とても同じ洞穴とは思えない様相だ。
「お? あそこにルナがいる!」
目の前に影を見つけたりょうたは、すかさず向かっていく。よく見ると、そこには仰向けで固まったルナの姿があった。
「ルナ、生きてる?」
彼の安否を不安視したりょうたは、ルナの脇腹をさすった。見た限り、彼はまるで石のように硬直している。
「......キュッ!!?」
脇腹をさすられたルナは、白目をむいて跳び起きた。タヌキは身の危険を感じると、恐怖心から全身が硬直してしまい動けなくなる。『狸寝入り』とは言われるものの、本来のタヌキは想像以上に臆病な生き物なのだ。
「うわっ!!! びっくりしたぁ......」
その反応にりょうたは一瞬のけ反る。気絶していたかと思われたタヌキが突然動き出せば、誰だってびっくりするだろう。ともあれ、ルナが生きていたことに安堵したりょうただった。
「けれど参ったなぁ。天井は高すぎて登れそうもないし、かといって引き返すのも危険だし......。一か八か、進むしかなさそう」
今後進むべき道について、りょうたは思いあぐねる。地図が感覚を頼りに道を探すのは、不安が大きい。情報が溢れる現代社会において、手探りで物事を判断することは我々が失いつつある能力の一つなのかもしれない。
進路を決め兼ねるりょうたが見つめたのは、ルナの様子だった。どういうわけか、ルナはしきりに洞穴の深奥へ鼻を向けて匂いを嗅いでいる。おそらく、ルナの鼻先に別の出口があるのかもしれない。
「よしっ、とにかく前へ進もう! 迷わず行けよ、行けば分かるさ!」
りょうたは、ルナの反応を信じて前進することにした。こういう直感は、人間よりも動物の方が遥かに優れている。
りょうたは、ルナと共にぬかるんだ道を邁進していく。そこは時折地下水が湧出している個所があり、水辺は比較的近いのかもしれない。
『......ザァーーー!』
二人が突き進んだ先で、水しぶきを上げる音がする。その音を聞いたりょうたは、出口が近いことを直感した。
「りょうたぁーーーっ! こんなところにいたのね!!」
水しぶきに耳を澄ませていたりょうたの背後から、のりこがやってきた。りょうたと違い、ほぼ暗視同然の状態でここまで追い付いてきた彼女の適応力は常人の域を越えている。
「おねえちゃん! それにケンも無事だったんだね!!」
二人の無事を確認したりょうたは安堵した。合流したのりこ一行は、水しぶきの先へ猛進した。果たして、その出口はどこへ繋がっているのだろうか。
『......えっ!!?』
出口へ辿り着いた一同は驚愕した。そこは見慣れた光景、そして見慣れた人物が佇んでいた。
「おう、のりこに弟。そんなとこから一体どうしたんだ?」
どもんは不思議そうな顔で彼女たちを見つめている。そう、そこはハヤテが宙を舞う羽馴の森だった。
のりこ達は突然現れた激流に飲まれ、入り口よりも遥か遠くへ流されてしまった。のりこが辿り着いたのは、先程の岩場とは違う足元が粘土質な場所。 天井から僅かな隙間から日が差していて、ぼんやりと周辺の様子も目視で確認することが出来る。
「ここはきっとあの場所ね。誰が、近くにいるといいんだけど」
のりこは、この場所に覚えがあった。それもそうだろう、ここは以前のりこが『羽馴の藪知らず』へ踏み入った際に落ちた場所なのだから。
「ワン! ワン!」
近くからケンの声がした。そこから歩いて程なく、のりこはケンと合流する。彼ものりこを見つけて、安堵の表情を浮かべている。
「ケンちゃん、無事で良かった!」
元気に尻尾を振るケンに、のりこは熱い抱擁。初見でないといえ、未知の場所で仲間がいることは非常に心強い。よく見ると、ケンはブリキ製の箱を守るように覆い被さっている。
「ワンッ!」
のりこはケンから熱い眼差しを送られている。その表情から、ケンはブリキの箱が気に入ったようだ。
「この箱はきっと、はなれのざいほうよね! もちろん持って行くわよ!」
のりこの言葉を聞いたケンは、喜びを表現するかのように激しく尻尾を振った。海賊の財宝がブリキの箱に入っているのかは甚だ疑問だが、中身を確かめる余地はありそうだ。
「さて、りょうたとルナちゃんも探さないと!」
ケンとのりこは逸れた仲間と合流する為、洞穴の更に奥へ進むことにした。
――
一方、のりこ達よりも更に深奥へ流されたりょうたはスマートフォンを手に取っていた。
「駄目だ、スマホは圏外でネットが繋がらない。bMapも起動しないし、参ったなぁ......」
文明の利器に慣れてしまったりょうたは、その全てが機能せず途方に暮れていた。インターネット回線が不通な状態で機能しているのは、アプリケーションの照明だけだ。
「それにしても、ここの足場は泥だらけで歩きにくいなぁ」
普段は粘土質な足場だが、水気を含んでしまったことにより悪路となる。入り口付近が岩場であったことを踏まえると、とても同じ洞穴とは思えない様相だ。
「お? あそこにルナがいる!」
目の前に影を見つけたりょうたは、すかさず向かっていく。よく見ると、そこには仰向けで固まったルナの姿があった。
「ルナ、生きてる?」
彼の安否を不安視したりょうたは、ルナの脇腹をさすった。見た限り、彼はまるで石のように硬直している。
「......キュッ!!?」
脇腹をさすられたルナは、白目をむいて跳び起きた。タヌキは身の危険を感じると、恐怖心から全身が硬直してしまい動けなくなる。『狸寝入り』とは言われるものの、本来のタヌキは想像以上に臆病な生き物なのだ。
「うわっ!!! びっくりしたぁ......」
その反応にりょうたは一瞬のけ反る。気絶していたかと思われたタヌキが突然動き出せば、誰だってびっくりするだろう。ともあれ、ルナが生きていたことに安堵したりょうただった。
「けれど参ったなぁ。天井は高すぎて登れそうもないし、かといって引き返すのも危険だし......。一か八か、進むしかなさそう」
今後進むべき道について、りょうたは思いあぐねる。地図が感覚を頼りに道を探すのは、不安が大きい。情報が溢れる現代社会において、手探りで物事を判断することは我々が失いつつある能力の一つなのかもしれない。
進路を決め兼ねるりょうたが見つめたのは、ルナの様子だった。どういうわけか、ルナはしきりに洞穴の深奥へ鼻を向けて匂いを嗅いでいる。おそらく、ルナの鼻先に別の出口があるのかもしれない。
「よしっ、とにかく前へ進もう! 迷わず行けよ、行けば分かるさ!」
りょうたは、ルナの反応を信じて前進することにした。こういう直感は、人間よりも動物の方が遥かに優れている。
りょうたは、ルナと共にぬかるんだ道を邁進していく。そこは時折地下水が湧出している個所があり、水辺は比較的近いのかもしれない。
『......ザァーーー!』
二人が突き進んだ先で、水しぶきを上げる音がする。その音を聞いたりょうたは、出口が近いことを直感した。
「りょうたぁーーーっ! こんなところにいたのね!!」
水しぶきに耳を澄ませていたりょうたの背後から、のりこがやってきた。りょうたと違い、ほぼ暗視同然の状態でここまで追い付いてきた彼女の適応力は常人の域を越えている。
「おねえちゃん! それにケンも無事だったんだね!!」
二人の無事を確認したりょうたは安堵した。合流したのりこ一行は、水しぶきの先へ猛進した。果たして、その出口はどこへ繋がっているのだろうか。
『......えっ!!?』
出口へ辿り着いた一同は驚愕した。そこは見慣れた光景、そして見慣れた人物が佇んでいた。
「おう、のりこに弟。そんなとこから一体どうしたんだ?」
どもんは不思議そうな顔で彼女たちを見つめている。そう、そこはハヤテが宙を舞う羽馴の森だった。
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