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ハルキとのんたん2

ー/ー



 のんこを家に上げてから、のんことおもちゃで遊んだ。
 のんこはミサキのこともよく見てくれて、ミサキも楽しそうにずっと笑っている。

 たいした遊びはしていないのに、不思議とのんこと遊ぶ時間はとても楽しかった。

 考えてみたら、ボクはミサキの面倒を見るために、学校が終わったらすぐ家に帰るようにしていて、友達と遊ぶ時間なんてなくなってたな。

 自然と友達とも距離ができちゃって……。

 寂しさを感じたくなくて、ママの手伝いやミサキの世話をすることに集中していた。

 だから、ミサキ以外の誰かと遊んだのなんて、久しぶりで。
 のんことの時間は楽しくて、たくさん笑えた。

 しかし……。

「ただいまー」

 ママの声がした。

 まずい! のんこが部屋にいるのに! どうしよう?

 ボクが焦っていると、ママが部屋に入ってくる。
 のんこはママの方を見て、体をゆらゆら揺らす。

「あの、ママ、これは、その」

 ボクが言い訳を探して焦っていると、ママは怒りもせず、上機嫌なミサキに近付いて、ミサキの頭を撫でた。

「ミサキ、機嫌いいねー、にーにがたくさん遊んでくれたかなー?」

 ママが言う。
 あれ?
 のんこに気付いてないのか?

 ボクがきょとんとしていると、ママは振り向いてボクに笑顔を見せる。

「ハルキ、いつも有難う」

 ママが言う。

 のんこは、何も言わずにゆっくりと動きだし、壁の中へと消えていった。

 ママはのんこが見えていなかったみたいだ。
 のんこって、何者なのだろうか……?



 それから数日。
 ママが用事で出掛けると、毎回のんこが遊びに来た。
 のんこはいつもママが帰ってくると、壁の中に消えていく。

 ママは気付いてないし、のんことギリギリまで遊べて、ボクは毎日が楽しくなった。
 学校のクラスメイトにものんこの話をしたけど、クラスメイトはいまいち理解していない様子だったなぁ。
 何とか理解してほしくて、のんこの絵を描いて見せたけど、クラスメイトは結局信じてくれなかった。



 そんなある日。

 学校が終って家に帰ると、何だか変な感覚に襲われた。
 家の中がすごく静かだ。

 いつもなら、ボクが帰るとママが「おかえり」って言ってくれるのに、この日は声がしない。
 ドアを閉めて、玄関から見えるリビングのドアを見る。

「ただいまー」

 不安になって大きな声で言ってみた。

 でも、ママの声はしない。

 すると、リビングのドアが開いて、中からパパが出てきた。

 あれ?
 おかしい。
 この時間、パパは仕事に行ってるはず。
 何でパパがいるんだ?

 混乱していると、パパが不気味にニタリと笑う。
 パパは白目をむいていて、唇が紫色になっている。
 ボクはゾッとした。

「ハルキぃ、ゆぎぃー、ゆぎぃー」

 パパが言ったけど、その声はのんこのものだ。
 何が起きたのかわからなくて、怖くなったボクは逃げ出そうとする。

 だけどドアが開かなくて、ボクは焦った。

「どどだぢ、いっしょ、ずっど、ずーっど」

 喋りながら、パパが近付いてくる。

「な、何だよのんこ! なんのイタズラだよ!」

 大きな声で言ったけど、のんこは答えてくれそうにない。
 ボクは走り、パパの横を通り抜けて、リビングに駆け込む。

 すると、ママとミサキが倒れていた。

 ボクは慌ててママに駆け寄る。

「ママ! ママ起きて!」

 呼んで体をゆすったけど、ママはぴくりとも動かない。
 真っ白になった顔に、動かない体……。
 ママは、死んでいた。

 ミサキも同じだ。
 死んでいる。

「あ……あぁ」

 混乱と恐怖で涙が溢れた。
 そこにパパ……いや、のんこが近付いてきて、ボクの首をネクタイでしめてきた。

 ボクは抵抗したけど、全然のんこは力をゆるめない。

「の、んこ、なん、でぇ」

 ボクが声を絞り出すと、のんこは笑い声をあげる。

「どどだぢ、ずーっど、いっしょ、ずーっどあぞぼー」

 笑いながら言った、のんこの声が頭の中にガンガン響く。



 そして、ボクの意識は途切れた。




 次に目覚めた時、ボクは不思議な光景を見た。
 倒れているママとミサキ。
 首を吊ってるパパの姿。


 ボクは気付いた。

 ボクは、のんことひとつになったんだ。
 のんこは、最初からボクとひとつになるため、現れたに違いない。

 気付いたけれど、頭がぼうっとして、何も考えられない。
 なんの感情もわかない。

 もう、いいや。

 そう思って、ボクは目を閉じた。


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 のんこを家に上げてから、のんことおもちゃで遊んだ。
 のんこはミサキのこともよく見てくれて、ミサキも楽しそうにずっと笑っている。
 たいした遊びはしていないのに、不思議とのんこと遊ぶ時間はとても楽しかった。
 考えてみたら、ボクはミサキの面倒を見るために、学校が終わったらすぐ家に帰るようにしていて、友達と遊ぶ時間なんてなくなってたな。
 自然と友達とも距離ができちゃって……。
 寂しさを感じたくなくて、ママの手伝いやミサキの世話をすることに集中していた。
 だから、ミサキ以外の誰かと遊んだのなんて、久しぶりで。
 のんことの時間は楽しくて、たくさん笑えた。
 しかし……。
「ただいまー」
 ママの声がした。
 まずい! のんこが部屋にいるのに! どうしよう?
 ボクが焦っていると、ママが部屋に入ってくる。
 のんこはママの方を見て、体をゆらゆら揺らす。
「あの、ママ、これは、その」
 ボクが言い訳を探して焦っていると、ママは怒りもせず、上機嫌なミサキに近付いて、ミサキの頭を撫でた。
「ミサキ、機嫌いいねー、にーにがたくさん遊んでくれたかなー?」
 ママが言う。
 あれ?
 のんこに気付いてないのか?
 ボクがきょとんとしていると、ママは振り向いてボクに笑顔を見せる。
「ハルキ、いつも有難う」
 ママが言う。
 のんこは、何も言わずにゆっくりと動きだし、壁の中へと消えていった。
 ママはのんこが見えていなかったみたいだ。
 のんこって、何者なのだろうか……?
 それから数日。
 ママが用事で出掛けると、毎回のんこが遊びに来た。
 のんこはいつもママが帰ってくると、壁の中に消えていく。
 ママは気付いてないし、のんことギリギリまで遊べて、ボクは毎日が楽しくなった。
 学校のクラスメイトにものんこの話をしたけど、クラスメイトはいまいち理解していない様子だったなぁ。
 何とか理解してほしくて、のんこの絵を描いて見せたけど、クラスメイトは結局信じてくれなかった。
 そんなある日。
 学校が終って家に帰ると、何だか変な感覚に襲われた。
 家の中がすごく静かだ。
 いつもなら、ボクが帰るとママが「おかえり」って言ってくれるのに、この日は声がしない。
 ドアを閉めて、玄関から見えるリビングのドアを見る。
「ただいまー」
 不安になって大きな声で言ってみた。
 でも、ママの声はしない。
 すると、リビングのドアが開いて、中からパパが出てきた。
 あれ?
 おかしい。
 この時間、パパは仕事に行ってるはず。
 何でパパがいるんだ?
 混乱していると、パパが不気味にニタリと笑う。
 パパは白目をむいていて、唇が紫色になっている。
 ボクはゾッとした。
「ハルキぃ、ゆぎぃー、ゆぎぃー」
 パパが言ったけど、その声はのんこのものだ。
 何が起きたのかわからなくて、怖くなったボクは逃げ出そうとする。
 だけどドアが開かなくて、ボクは焦った。
「どどだぢ、いっしょ、ずっど、ずーっど」
 喋りながら、パパが近付いてくる。
「な、何だよのんこ! なんのイタズラだよ!」
 大きな声で言ったけど、のんこは答えてくれそうにない。
 ボクは走り、パパの横を通り抜けて、リビングに駆け込む。
 すると、ママとミサキが倒れていた。
 ボクは慌ててママに駆け寄る。
「ママ! ママ起きて!」
 呼んで体をゆすったけど、ママはぴくりとも動かない。
 真っ白になった顔に、動かない体……。
 ママは、死んでいた。
 ミサキも同じだ。
 死んでいる。
「あ……あぁ」
 混乱と恐怖で涙が溢れた。
 そこにパパ……いや、のんこが近付いてきて、ボクの首をネクタイでしめてきた。
 ボクは抵抗したけど、全然のんこは力をゆるめない。
「の、んこ、なん、でぇ」
 ボクが声を絞り出すと、のんこは笑い声をあげる。
「どどだぢ、ずーっど、いっしょ、ずーっどあぞぼー」
 笑いながら言った、のんこの声が頭の中にガンガン響く。
 そして、ボクの意識は途切れた。
 次に目覚めた時、ボクは不思議な光景を見た。
 倒れているママとミサキ。
 首を吊ってるパパの姿。
 ボクは気付いた。
 ボクは、のんことひとつになったんだ。
 のんこは、最初からボクとひとつになるため、現れたに違いない。
 気付いたけれど、頭がぼうっとして、何も考えられない。
 なんの感情もわかない。
 もう、いいや。
 そう思って、ボクは目を閉じた。