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第63話 踊るのりこ捜索

ー/ー



「おねえちゃん、今行くからね!!」
 のりこ捜索のため、島長一家とのりこ探検隊連合が結成された。果たして、彼女の行方は掴めるのだろうか?
「京子さん、いきなりどうしたのさ? あと、いろんな動物が付いてきているけれど??」
 事情を知らぬ良行は、京子へ尋ねる。いきなり外を飛び出して、動物達も同伴となると事情など掴めない。
「この子達もきっと、私達と同じようにのりこを心配しているのよ。のりこはいいお友達を持ったわね......」
 思わず感涙している京子だが、その友達は獣ばかりだということに気が付いて欲しい。むしろ、学校で友達がいないのかと良行は心配してしまっている。
 動物と人間という珍妙連合は、りょうたの持つみそささぎの髪飾りを道標に邁進していく。足元が泥まみれになろうが、服にオナモミがくっついてもお構いなし。
「......もしかして、これって海岸に向かってないか?」
 りょうたの後を追ううち、巡回バスで通るあの道に向かっていると良行は気付く。その道中は海岸線に沿っており、羽馴海岸へ向かう際にも同じ道を使う。
 しかし、草むらで失踪したはずののりこが海岸にいることは良行には想像し難い。
「海岸って、のりこは海に流されたってこと!?」
 草むらで失踪したならば、どこかの河川から海へ流されたと仮定してしまうのは当然のことだろう。京子は不安げな表情を浮かべている。
 しかし、事実は彼女たちの想像する遥か上を行くのだ。
「おねえちゃん......待っててね!」
 不安げな二人のことなど構わず、りょうたは邁進していく。みそささぎは、依然として海岸方面を指し示したままだ。
 やがて連合は海岸へ辿り着く。りょうたは髪飾りを確認するが、みそささぎは遥か遠くの水平線を指し示している。
「え? どういうこと......?」
 みそさざめの指針に、りょうたは成す術もない。彼の心情を察したかのように、探検隊一同は海岸に向かって咆哮している。
「噓でしょう......!?」
 りょうたは、遠くを見つめて言葉を失っている。その表情から京子は嫌な予感を察知、今にも溢れそうな涙を必死に堪えている。
「そんなはずないさ......のりこはまだ、死んじゃいない!」
 大黒柱は絶望する一家を奮い立たせようとするが、内心は自身も絶望している。水平線の遥か彼方を指し示すみそさざめの伝えるもの、それはのりこの溺死という非情な未来予知。
 暗闇の大海は、微かな希望さえ飲み込んでしまう。
「......嘘だと言ってちょうだい、のりこ!」
 そんな未来予知を、京子が受け入れられるはずもない。母としてそれは当然の心情。
 だが、大海原へ投げ出された子供が生存している可能性は低い。みそさざめが残酷な真実を突き付けているのは、火を見るより明らかだ。
「おねえちゃん......!」
 それを知り、りょうたは成す術なく項垂れる。これは万事休すか......。
「......たぁー! ......たぁー!」
 失意のりょうたを、遠くから誰かが呼んでいる。果たして、その声の主は誰なのか。
「おねえちゃん、どうか安らかに......」
 故人となった姉を弔おうと、りょうたは掌を合わせる。しかし、それにしては声が生き生きとしているようだが......?
「りょうたぁー!」
 快活な一声を発し、彼女はりょうたの目の前に現れた。海水で全身びしょ濡れになっているが、その姿は紛れもなくのりこだ。
「......え? おねえちゃん!? おねえちゃん!!」
 思いがけない再会に驚くが、姉の無事を目の当たりにしたりょうたは安堵の表情。そしてりょうたは、一目散にのりこの元へ駆けていく。
「おねえちゃーーーんっ!!!」
 りょうたは、すかさず姉に抱き付く。のりこの腕の中のりょうたは、喜びのあまり感涙を禁じ得ない。
「おねえちゃん、どこにいってたのさぁ!!」
 安堵から一転、彼女の腕の中でりょうたは感情を爆発させる。普段は姉に振り回されるりょうただが、心配になるのは姉弟の絆があるからこそ。
 そして、呼応するようにのりこ探検隊の面々もそれぞれに歓喜の咆哮を上げる。のりこ隊長の無事を祈っていたのは彼らも同じだ。
「ちょっとだけ冒険、かな? そしたら、リリーが私を送ってくれたの!」
 のりこは嬉々としてウミガメを指差すが、りょうたは戸惑いの表情。そんな彼の表情など知らぬ顔で、リリーは後ろ足で土を掘っていく。
「のりこ、無事だったのか!」
 両親も、我が子の姿を目の当たりにして駆け寄る。のりこの顔を見て、思わず笑みがこぼれた。
「......良かったぁーーーっ!!!」
 京子に至っては、喜びのあまり若干咽び泣いてしまっている。母の子を思う気持ちはひと際強い。
「そうだ! のりこが見つかったこと、みんなに知らせないと!!」
 冷静になった良行は、捜索関係者へのりこの発見を連絡するべく奔走する。のりこたちが安堵する傍らで、リリーは新たな命を産み落としていた。
 のりこ発見により島長一家とのりこ探検隊連合は解散。この一件は幕を閉じることとなるが、いくつかの謎は残されたままとなった。
 果たして、その謎が明かされる時は訪れるのだろうか......?


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「おねえちゃん、今行くからね!!」
 のりこ捜索のため、島長一家とのりこ探検隊連合が結成された。果たして、彼女の行方は掴めるのだろうか?
「京子さん、いきなりどうしたのさ? あと、いろんな動物が付いてきているけれど??」
 事情を知らぬ良行は、京子へ尋ねる。いきなり外を飛び出して、動物達も同伴となると事情など掴めない。
「この子達もきっと、私達と同じようにのりこを心配しているのよ。のりこはいいお友達を持ったわね......」
 思わず感涙している京子だが、その友達は獣ばかりだということに気が付いて欲しい。むしろ、学校で友達がいないのかと良行は心配してしまっている。
 動物と人間という珍妙連合は、りょうたの持つみそささぎの髪飾りを道標に邁進していく。足元が泥まみれになろうが、服にオナモミがくっついてもお構いなし。
「......もしかして、これって海岸に向かってないか?」
 りょうたの後を追ううち、巡回バスで通るあの道に向かっていると良行は気付く。その道中は海岸線に沿っており、羽馴海岸へ向かう際にも同じ道を使う。
 しかし、草むらで失踪したはずののりこが海岸にいることは良行には想像し難い。
「海岸って、のりこは海に流されたってこと!?」
 草むらで失踪したならば、どこかの河川から海へ流されたと仮定してしまうのは当然のことだろう。京子は不安げな表情を浮かべている。
 しかし、事実は彼女たちの想像する遥か上を行くのだ。
「おねえちゃん......待っててね!」
 不安げな二人のことなど構わず、りょうたは邁進していく。みそささぎは、依然として海岸方面を指し示したままだ。
 やがて連合は海岸へ辿り着く。りょうたは髪飾りを確認するが、みそささぎは遥か遠くの水平線を指し示している。
「え? どういうこと......?」
 みそさざめの指針に、りょうたは成す術もない。彼の心情を察したかのように、探検隊一同は海岸に向かって咆哮している。
「噓でしょう......!?」
 りょうたは、遠くを見つめて言葉を失っている。その表情から京子は嫌な予感を察知、今にも溢れそうな涙を必死に堪えている。
「そんなはずないさ......のりこはまだ、死んじゃいない!」
 大黒柱は絶望する一家を奮い立たせようとするが、内心は自身も絶望している。水平線の遥か彼方を指し示すみそさざめの伝えるもの、それはのりこの溺死という非情な未来予知。
 暗闇の大海は、微かな希望さえ飲み込んでしまう。
「......嘘だと言ってちょうだい、のりこ!」
 そんな未来予知を、京子が受け入れられるはずもない。母としてそれは当然の心情。
 だが、大海原へ投げ出された子供が生存している可能性は低い。みそさざめが残酷な真実を突き付けているのは、火を見るより明らかだ。
「おねえちゃん......!」
 それを知り、りょうたは成す術なく項垂れる。これは万事休すか......。
「......たぁー! ......たぁー!」
 失意のりょうたを、遠くから誰かが呼んでいる。果たして、その声の主は誰なのか。
「おねえちゃん、どうか安らかに......」
 故人となった姉を弔おうと、りょうたは掌を合わせる。しかし、それにしては声が生き生きとしているようだが......?
「りょうたぁー!」
 快活な一声を発し、彼女はりょうたの目の前に現れた。海水で全身びしょ濡れになっているが、その姿は紛れもなくのりこだ。
「......え? おねえちゃん!? おねえちゃん!!」
 思いがけない再会に驚くが、姉の無事を目の当たりにしたりょうたは安堵の表情。そしてりょうたは、一目散にのりこの元へ駆けていく。
「おねえちゃーーーんっ!!!」
 りょうたは、すかさず姉に抱き付く。のりこの腕の中のりょうたは、喜びのあまり感涙を禁じ得ない。
「おねえちゃん、どこにいってたのさぁ!!」
 安堵から一転、彼女の腕の中でりょうたは感情を爆発させる。普段は姉に振り回されるりょうただが、心配になるのは姉弟の絆があるからこそ。
 そして、呼応するようにのりこ探検隊の面々もそれぞれに歓喜の咆哮を上げる。のりこ隊長の無事を祈っていたのは彼らも同じだ。
「ちょっとだけ冒険、かな? そしたら、リリーが私を送ってくれたの!」
 のりこは嬉々としてウミガメを指差すが、りょうたは戸惑いの表情。そんな彼の表情など知らぬ顔で、リリーは後ろ足で土を掘っていく。
「のりこ、無事だったのか!」
 両親も、我が子の姿を目の当たりにして駆け寄る。のりこの顔を見て、思わず笑みがこぼれた。
「......良かったぁーーーっ!!!」
 京子に至っては、喜びのあまり若干咽び泣いてしまっている。母の子を思う気持ちはひと際強い。
「そうだ! のりこが見つかったこと、みんなに知らせないと!!」
 冷静になった良行は、捜索関係者へのりこの発見を連絡するべく奔走する。のりこたちが安堵する傍らで、リリーは新たな命を産み落としていた。
 のりこ発見により島長一家とのりこ探検隊連合は解散。この一件は幕を閉じることとなるが、いくつかの謎は残されたままとなった。
 果たして、その謎が明かされる時は訪れるのだろうか......?