タイチとのんこ
ー/ー 嫌な夢を見た。
オレがいじめていた奴、コウタの夢だ。
そして……あの、化け物……のんこの夢。
「タイチ!」
名前を呼ばれて、オレは目を開いた。
心臓が爆発しそうな程、ドキドキと音を立ててる。
目の前には心配そうにしている母ちゃんがいて、オレの肩をゆすっていた。
「あ、あぁ……」
声が震えてる。
まだ、夢に出てきたコウタとのんこが怖くて、寒くないのに体はめちゃくちゃ震えていた
のんこに襲われたあの日、オレは恐ろしいものを見たんだ。
暗い中にびっしりと並ぶ、人間の顔。
全員が怖い表情をしていて、オレに「助けて」と言っていた。
子どもの顔、大人の顔、年寄りの顔と、歳も性別も関係無く並んでいたのをハッキリと覚えている。
そして、皆が言っていた。
『のんこに食べられた、助けて』
と。
すぐに自分を食った化け物がのんこだって気付いた。
そして、自分も皆と同じようになるんだと、恐ろしくなった。
助けを求める沢山の声が頭にガンガンと響く中、ちょうど見えた男の子の顔が、苦しそうに歪み。
ぱん。
と、はじけた。
それに気付いた他の顔達は、怯えた表情をして、さらに「助けて」と騒ぎだす。
「や、やめろ! やめろよぉ! 助けてくれよ!」
オレは暴れながら思わず叫んだ。
すると、目の前にぎょろっとした目が現れて、オレを睨む。
白目が真っ赤になっていて、黒目は白く濁っている。
その目を確認したところで、オレは気絶したんだ。
それからというもの、オレは言葉を喋れなくなった。
声は出るけど、言葉にはならない。
のんこに食われかけた日から、家族と会話する事すらできない日が続いた。
警察が話を聞きに来た時なんかは、ひたすらのんこの存在に怯えていて、文字も書けなかったし、喋ることなんて全く出来なかった。
「また、怖い夢を見たのよね……大丈夫?」
母ちゃんがオレの腕を擦る。
オレは枕の横に置いていたメモ帳とボールペンを持って、メモ帳に『だいじょうぶ』と書いて母ちゃんに渡す。
時間が経ったおかげなのか、こうして文字を書いて、何とか会話ができるようになった。
ここまで回復したのは、母ちゃんや父ちゃん、そして姉ちゃんのおかげだ。
「そう、大丈夫なのね、部屋から出られる?」
母ちゃんが聞いてくる。
オレはそれに頷いた。
部屋に閉じこもっていたいけど、一人になるのが怖くて部屋から出ることにする。
何より一人だと、のんこが見えてしまうのが怖くて……。
オレはベッドからおりて、母ちゃんと一緒にリビングに向かう。
リビングはオレの部屋から出てすぐの場所にある。
リビングに入ると、姉ちゃんがソファーに座って新聞を見ていた。
コウタが行方不明になってから三ヶ月。
姉ちゃんはコウタが発見されないかと、新聞やニュース番組、そしてネットで情報をかき集めている。
オレが、後悔してるからだ。
いじめなんてした事を、後悔して、コウタに謝りたいと思っているから。
「あ、タイチ、おはよ。 ゲームでもする?」
姉ちゃんはオレに気付くと、新聞を畳む。
「……うぁ」
声を出しながら、首をふる。
今はゲームの気分ではない。
「そういえばさ、タイチこっち来て」
姉ちゃんがオレに手招きをした。
オレはそれに従って、姉ちゃんの隣に座る。
「のんこの事だけど──」
そう言ったとたん、母ちゃんの顔が険しく変わる。
「ノゾミ! タイチの前で!」
母ちゃんが怒鳴った。
のんこの話は警察にも伝えたけれど、信じてはくれなかった。
でも、母ちゃんや姉ちゃんは信じてくれていて、母ちゃんはオレが怯えるからって、のんこの名を出すのを禁止していた。
「いつまでのんこを避けるわけ? 知らなきゃ対応もできないでしょ?」
姉ちゃんが母ちゃんに返す。
険悪なムードの中、オレは紙にボールペンで文字を書く。
『だいじょうぶだよ』
そう書いた紙を母ちゃんに見せた。
オレがいじめていた奴、コウタの夢だ。
そして……あの、化け物……のんこの夢。
「タイチ!」
名前を呼ばれて、オレは目を開いた。
心臓が爆発しそうな程、ドキドキと音を立ててる。
目の前には心配そうにしている母ちゃんがいて、オレの肩をゆすっていた。
「あ、あぁ……」
声が震えてる。
まだ、夢に出てきたコウタとのんこが怖くて、寒くないのに体はめちゃくちゃ震えていた
のんこに襲われたあの日、オレは恐ろしいものを見たんだ。
暗い中にびっしりと並ぶ、人間の顔。
全員が怖い表情をしていて、オレに「助けて」と言っていた。
子どもの顔、大人の顔、年寄りの顔と、歳も性別も関係無く並んでいたのをハッキリと覚えている。
そして、皆が言っていた。
『のんこに食べられた、助けて』
と。
すぐに自分を食った化け物がのんこだって気付いた。
そして、自分も皆と同じようになるんだと、恐ろしくなった。
助けを求める沢山の声が頭にガンガンと響く中、ちょうど見えた男の子の顔が、苦しそうに歪み。
ぱん。
と、はじけた。
それに気付いた他の顔達は、怯えた表情をして、さらに「助けて」と騒ぎだす。
「や、やめろ! やめろよぉ! 助けてくれよ!」
オレは暴れながら思わず叫んだ。
すると、目の前にぎょろっとした目が現れて、オレを睨む。
白目が真っ赤になっていて、黒目は白く濁っている。
その目を確認したところで、オレは気絶したんだ。
それからというもの、オレは言葉を喋れなくなった。
声は出るけど、言葉にはならない。
のんこに食われかけた日から、家族と会話する事すらできない日が続いた。
警察が話を聞きに来た時なんかは、ひたすらのんこの存在に怯えていて、文字も書けなかったし、喋ることなんて全く出来なかった。
「また、怖い夢を見たのよね……大丈夫?」
母ちゃんがオレの腕を擦る。
オレは枕の横に置いていたメモ帳とボールペンを持って、メモ帳に『だいじょうぶ』と書いて母ちゃんに渡す。
時間が経ったおかげなのか、こうして文字を書いて、何とか会話ができるようになった。
ここまで回復したのは、母ちゃんや父ちゃん、そして姉ちゃんのおかげだ。
「そう、大丈夫なのね、部屋から出られる?」
母ちゃんが聞いてくる。
オレはそれに頷いた。
部屋に閉じこもっていたいけど、一人になるのが怖くて部屋から出ることにする。
何より一人だと、のんこが見えてしまうのが怖くて……。
オレはベッドからおりて、母ちゃんと一緒にリビングに向かう。
リビングはオレの部屋から出てすぐの場所にある。
リビングに入ると、姉ちゃんがソファーに座って新聞を見ていた。
コウタが行方不明になってから三ヶ月。
姉ちゃんはコウタが発見されないかと、新聞やニュース番組、そしてネットで情報をかき集めている。
オレが、後悔してるからだ。
いじめなんてした事を、後悔して、コウタに謝りたいと思っているから。
「あ、タイチ、おはよ。 ゲームでもする?」
姉ちゃんはオレに気付くと、新聞を畳む。
「……うぁ」
声を出しながら、首をふる。
今はゲームの気分ではない。
「そういえばさ、タイチこっち来て」
姉ちゃんがオレに手招きをした。
オレはそれに従って、姉ちゃんの隣に座る。
「のんこの事だけど──」
そう言ったとたん、母ちゃんの顔が険しく変わる。
「ノゾミ! タイチの前で!」
母ちゃんが怒鳴った。
のんこの話は警察にも伝えたけれど、信じてはくれなかった。
でも、母ちゃんや姉ちゃんは信じてくれていて、母ちゃんはオレが怯えるからって、のんこの名を出すのを禁止していた。
「いつまでのんこを避けるわけ? 知らなきゃ対応もできないでしょ?」
姉ちゃんが母ちゃんに返す。
険悪なムードの中、オレは紙にボールペンで文字を書く。
『だいじょうぶだよ』
そう書いた紙を母ちゃんに見せた。
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