表示設定
表示設定
目次 目次




そして始まる、私たちの物語! 4話

ー/ー



 馬車の中は静かになった。ただ、私の鼓動の音が大きく聞こえて、レオンハルトさまにも伝わるんじゃないかって彼が近くにいるといつも思ってしまう。

「――エリカ」
「は、はい」
「窓を開けてもよろしいですか?」

 窓? と思いながらもこくりとうなずく。

 レオンハルトさまが窓を開けると、鳥が入ってきた。

 鳥の足に(くく)りつけられた紙を取ると、窓から出ていく。

 驚いて目を丸くしていると、レオンハルトさまは紙を広げて目を通した。

「アデーレ・ボルク男爵令嬢、今度は牢屋に入れられたようです」
「えっ?」

 もう? 目を(またた)かせてから、レオンハルトさまを見つめる。

 だって、ついさっきだったじゃない? って……。私がなにを考えていたのか、彼に伝わったようで窓を閉めてから肩をすくめた。

「城の騎士たちが都合よくいたなぁ、と思ったでしょう?」
「……それは……ええ、思いました」

 私たちが会話を終えた途端に姿を現したもの。

 誰かが城に報せてくれたのかなって考えていたのだけど、どうやら違うみたい?

「実は、あのルートを通ることは、陛下たちに知らせていたのです。陛下たち、念のために騎士たちを配置してくだったようです。愛されていますね、エリカ」

 にこりと微笑むレオンハルトさまに、私の鼓動が跳ねる。

 ――陛下たちが、この道を通ることを知っていた……?

「ルートを選んでいただいたのは、アデーレ・ボルク男爵令嬢が姿を見せる可能性を、少し高めたかったからです」
「……それはなぜなのか、聞く権利が私にはありますわよね?」
「ええ、もちろん。――実は、陛下にこう言われていたんです。あなたに危害を加えようとするのなら、容赦しなくてもよい、と」

 思わず息を()んだ。どういうことなのかをうながすように見つめると、彼はそっと私の頬を撫でてから言葉を紡ぐ。

「騎士が彼女に買収されていたらしく、塔から抜け出して隠れていたらしいですよ。彼女がいるように見せかけるために、背格好の似たメイドも買収して」

 買収……?

 ボルク男爵家にそんなお金があったのかしら? 怪訝(けげん)そうな表情を浮かべる私に、レオンハルトさまは頬をかく。

「オレたち――というか、エリカのことを憎んでいたようだから、ここできちんと決別するべきだと考えました。あなたの安全のためにも」
「レオンハルトさま……」
「来なければ、それはそれで良かったのですが……。来てしまいましたからね、彼女。しかも、ダニエル殿下からのプレゼントを使っていたようです」
「……え」

 ――もしかして、アデーレはダニエル殿下ルートに入ったことに安心して暴走した……?

 でも、いくらゲームの『エリカ・レームクール』が嫌いだったからって、こんな騒ぎを起こす?

 憎しみで周りが見えなくなったのかしら?

 アデーレは一貫して、『(エリカ)』を見ていなかったということなのか、それとも、憎しみのフィルター越しに見ていたから、こんなことになったのか。

 ……理解したいとも思わないから、解答は要らないわね。

「そして、ダニエル殿下のプレゼントの中には、……宝物庫のものがあったようで。それを見逃すことはできない、とこんな騒ぎに」
「……宝物庫のものまで……!?」

 宝物庫って、いろんな国からいただいたものやら、献上されたものやらで溢れていたはず。

 ダニエル殿下が自慢げに話していたことを覚えている。

 自分が国王になれば好きに使っていいのだから、あれは自分のものなのだ、と。

 そして、あの宝物庫にあるものって、(いわ)く付きのものも多いから気をつけないといけない、とデイジーさまから聞いたことがある。

 ……もしかして、その曰く付きのなにかに、本当に()りつかれていたのでは……?

「どう決断されるかは国王陛下と王妃殿下にお任せになりますが……エリカが望むのなら、どんな処罰にするのか伝えますよ?」
「陛下たちにお任せしますわ」

 ダニエル殿下はアデーレに心底惚れていたのかもしれないけれど、今回のことでどう思うのかしら……? アデーレと一緒にいるときのダニエル殿下の顔を思い出して、ゆっくりと息を吐く。

 どの浮気相手とも違う顔をしていた。

 ああ、本気で好きなんだと(はた)から見ていてわかるくらい、彼女のことを愛しそうに見ていたのよね。

 考え込んでいると、レオンハルトさまが眉を下げて私のことを見ていたことに気付き、首をかしげる。

「あまり、面白い話ではないでしょう?」
「気遣っていただき、ありがとうございます。ですが、私は平気ですわ。思うことがないわけではありませんが、私にはレオンハルトさまがいますもの」

 そう、思うことがないわけではない。

 彼の婚約者になってから積み重ねた不満も多々あるが、プラスになったことも多々あるからね。

 マナーや教養を、真剣に学べたことはプラスだと思う。

 それに――やっぱり一番は、レオンハルトさまに出逢えたことが一番良いことだと感じているのよ。

 恋愛結婚なんて夢のまた夢と思っていた私に、『恋』を教えてくれた人。

「私は、レオンハルトさまをお慕いしておりますから、あなた以外を望みませんわ」

 にっこりと微笑んでみせると、レオンハルトさまの顔が真っ赤に染まった。

 耳まで赤いのを見て、可愛いなって感じちゃう!

「エリカにそう想っていただけて、光栄です」

 照れたように目を伏せるレオンハルトさまに、やっぱりこの人のことが好きだなぁと、しみじみ思った。




みんなのリアクション

 馬車の中は静かになった。ただ、私の鼓動の音が大きく聞こえて、レオンハルトさまにも伝わるんじゃないかって彼が近くにいるといつも思ってしまう。
「――エリカ」
「は、はい」
「窓を開けてもよろしいですか?」
 窓? と思いながらもこくりとうなずく。
 レオンハルトさまが窓を開けると、鳥が入ってきた。
 鳥の足に|括《くく》りつけられた紙を取ると、窓から出ていく。
 驚いて目を丸くしていると、レオンハルトさまは紙を広げて目を通した。
「アデーレ・ボルク男爵令嬢、今度は牢屋に入れられたようです」
「えっ?」
 もう? 目を|瞬《またた》かせてから、レオンハルトさまを見つめる。
 だって、ついさっきだったじゃない? って……。私がなにを考えていたのか、彼に伝わったようで窓を閉めてから肩をすくめた。
「城の騎士たちが都合よくいたなぁ、と思ったでしょう?」
「……それは……ええ、思いました」
 私たちが会話を終えた途端に姿を現したもの。
 誰かが城に報せてくれたのかなって考えていたのだけど、どうやら違うみたい?
「実は、あのルートを通ることは、陛下たちに知らせていたのです。陛下たち、念のために騎士たちを配置してくだったようです。愛されていますね、エリカ」
 にこりと微笑むレオンハルトさまに、私の鼓動が跳ねる。
 ――陛下たちが、この道を通ることを知っていた……?
「ルートを選んでいただいたのは、アデーレ・ボルク男爵令嬢が姿を見せる可能性を、少し高めたかったからです」
「……それはなぜなのか、聞く権利が私にはありますわよね?」
「ええ、もちろん。――実は、陛下にこう言われていたんです。あなたに危害を加えようとするのなら、容赦しなくてもよい、と」
 思わず息を|呑《の》んだ。どういうことなのかをうながすように見つめると、彼はそっと私の頬を撫でてから言葉を紡ぐ。
「騎士が彼女に買収されていたらしく、塔から抜け出して隠れていたらしいですよ。彼女がいるように見せかけるために、背格好の似たメイドも買収して」
 買収……?
 ボルク男爵家にそんなお金があったのかしら? |怪訝《けげん》そうな表情を浮かべる私に、レオンハルトさまは頬をかく。
「オレたち――というか、エリカのことを憎んでいたようだから、ここできちんと決別するべきだと考えました。あなたの安全のためにも」
「レオンハルトさま……」
「来なければ、それはそれで良かったのですが……。来てしまいましたからね、彼女。しかも、ダニエル殿下からのプレゼントを使っていたようです」
「……え」
 ――もしかして、アデーレはダニエル殿下ルートに入ったことに安心して暴走した……?
 でも、いくらゲームの『エリカ・レームクール』が嫌いだったからって、こんな騒ぎを起こす?
 憎しみで周りが見えなくなったのかしら?
 アデーレは一貫して、『|私《エリカ》』を見ていなかったということなのか、それとも、憎しみのフィルター越しに見ていたから、こんなことになったのか。
 ……理解したいとも思わないから、解答は要らないわね。
「そして、ダニエル殿下のプレゼントの中には、……宝物庫のものがあったようで。それを見逃すことはできない、とこんな騒ぎに」
「……宝物庫のものまで……!?」
 宝物庫って、いろんな国からいただいたものやら、献上されたものやらで溢れていたはず。
 ダニエル殿下が自慢げに話していたことを覚えている。
 自分が国王になれば好きに使っていいのだから、あれは自分のものなのだ、と。
 そして、あの宝物庫にあるものって、|曰《いわ》く付きのものも多いから気をつけないといけない、とデイジーさまから聞いたことがある。
 ……もしかして、その曰く付きのなにかに、本当に|憑《と》りつかれていたのでは……?
「どう決断されるかは国王陛下と王妃殿下にお任せになりますが……エリカが望むのなら、どんな処罰にするのか伝えますよ?」
「陛下たちにお任せしますわ」
 ダニエル殿下はアデーレに心底惚れていたのかもしれないけれど、今回のことでどう思うのかしら……? アデーレと一緒にいるときのダニエル殿下の顔を思い出して、ゆっくりと息を吐く。
 どの浮気相手とも違う顔をしていた。
 ああ、本気で好きなんだと|傍《はた》から見ていてわかるくらい、彼女のことを愛しそうに見ていたのよね。
 考え込んでいると、レオンハルトさまが眉を下げて私のことを見ていたことに気付き、首をかしげる。
「あまり、面白い話ではないでしょう?」
「気遣っていただき、ありがとうございます。ですが、私は平気ですわ。思うことがないわけではありませんが、私にはレオンハルトさまがいますもの」
 そう、思うことがないわけではない。
 彼の婚約者になってから積み重ねた不満も多々あるが、プラスになったことも多々あるからね。
 マナーや教養を、真剣に学べたことはプラスだと思う。
 それに――やっぱり一番は、レオンハルトさまに出逢えたことが一番良いことだと感じているのよ。
 恋愛結婚なんて夢のまた夢と思っていた私に、『恋』を教えてくれた人。
「私は、レオンハルトさまをお慕いしておりますから、あなた以外を望みませんわ」
 にっこりと微笑んでみせると、レオンハルトさまの顔が真っ赤に染まった。
 耳まで赤いのを見て、可愛いなって感じちゃう!
「エリカにそう想っていただけて、光栄です」
 照れたように目を伏せるレオンハルトさまに、やっぱりこの人のことが好きだなぁと、しみじみ思った。