一同はのりこを捜索するも、手掛かりは一向に掴めない。日の丸鉢巻部隊の行進も、虚しく響く。
「これ以上の捜索は困難です。撤退しましょう」
夕日も沈み、羽馴の藪知らず周辺は不気味さを増している。警察の判断は的確なものだろう。
「嫌よ! のりこを置いていくなんて!!」
だが京子は猛反対。母のとしては、当然の言葉だろう。
「京子さん! 心配なのは分かるけど、今はのりこを信じるんだ」
感情を抑えきれない京子へ、良行は冷静に語りかける。良行とて、不安でないと言えば噓になる。今はただ、自身の感情を押し殺さねばならない。
「おねえちゃん......」
息子である良行は、寂しい目で草むらを見つめる。後ろ髪を引かれる思いだが、父の判断が正しいという事実をどことなく理解しているようだ。
「のりこ、無事でいて......」
良行の言葉を、京子もしぶしぶ了承。捜索とは、自身の安全確保を前提に考えなければならない。
――
島長一家は帰路へ着く。重い空気の一同を、犬小屋からルナが心配そうに見つめていた。
「とにかく、今は腹を満たそう。『腹が減っては戦は出来ぬ』だ!」
良行はそういうが、京子は項垂れてしまってそれどころではない。空腹よりも、娘が心配で食事が喉を通らない。彼女にとって、それだけ娘の失踪は心が痛い。
「京子さん、何も食べないのは良くない。せめてこれだけでも口にして?」
良行が彼女へ差し出したのは、ホットミルク。ホットミルクには、精神安定の効果が認められている。
「ありがとう......」
京子は、伏し目がちにマグカップを手に取る。頭では理解していても、心が伴わない様子だ。
「おねえちゃん、大丈夫かなぁ......?」
のりこが心配なのは、りょうたも同じ。そんなつぶやきを飲み込むかのように、りょうたはマグカップに注がれたココアを口にする。
「はぁ......」
りょうたは深いため息をつく。こんな時、どんな顔をしたらいいのだろうか?
小学生になったばかりの彼が、そんなことを理解できるはずもない。やるせない気持ちのりょうたは、漠然と上を見上げた。
「......あれ?」
その時、りょうたは何かに気付く。母の髪飾りが何かおかしいということに。りょうたは思わず母の髪飾りを指差す。
「おかあさん、髪飾りが何か変だよ?」
りょうたの指摘を受け、京子はその髪飾りを外してみる。髪飾りにはみそささぎがあしらわれており、それは不自然な傾き方をしている。
「おかしいわねぇ......壊れちゃったのかしら?」
京子がみそささぎの傾きを直そうと試みるが、すぐに元通り。これは一体どういうことだろうか?
「おかあさん、ちょっとそれ貸して!」
京子の手こずる様子を見て、りょうたは何を思ったのだろうか。彼はその髪飾りを持って外へ出て行ってしまった。
「りょうた、どこへ行くの!?」
彼の後を、京子はすかさず追いかける。気のせいだろうか? りょうたの目が、どことなく期待に満ち溢れているように見える。
「おかあさん、分かったよ!」
髪飾りを手にしたりょうたの瞳には光が宿っている。彼は、ある事実を伝えたいようだ。
「みそささぎが、きっとおねえちゃんの居場所を知っている気がする!」
髪飾りが、のりこの居場所を知っている。だが、その言葉は京子にとって素っ頓狂にしか聞こえない。
「髪飾り。そういえば、これはのりことおそろいで買ったんだっけ......おそろい、まさか!?」
その事実に、京子も気が付いた。よくみると、髪飾りは何かを指し示すかのように特定の方向へ体を向けている。
もしそれが正しければ、みそささぎはのりこの居場所を指し示していると仮定できる。
「そうだとしたら......こうしちゃいられない! のりこ、待っててね!!」
みそさざめに一縷の望みを賭けて、京子は走り出す。たとえ真夜中であろうと、そんなことなど今の彼女には無問題だ。
「京子さん、どこいくの!?」
事情を知らない良行も、京子に追走する。とにかく、善は急げだ!
「ルナ、一緒に行こう!!」
りょうたも遅れまいと追従する。もちろん、ルナも一緒に。
『キュッ!』
彼の呼びかけに応じるように、ルナは鼻を鳴らす。その表情は『待ってました!』と言わんばかり。
『ワンッ!! ピャーッ!!!』
どこからやってきたのか、ケンとハヤテも追従。勿論、気合十分だ!
「みんな、来てくれたんだね!」
のりこ探検隊の隊員集結に、歓喜するりょうた。種族を越えて、彼らの絆は固く結ばれているのだ。
「おねえちゃん、今行くからね!!」
月光が仄かに照らす夜、島長一家とのりこ探検隊連合はのりこ捜索に奮起する。果たして、のりこの運命や如何に......???