相棒に裏切られ、どもんは潜水していた。滝壺は見かけによらず水深があり、素人であれば溺死してしまうかもしれない。
『どうやら、鯖鬼の姿はなさそうだな......』
どもんは、サバッキーを血眼になって探しているが、そもそも何者であるかを把握していない。サバッキーを発見できるのか、甚だ疑問だ。
『ん? あれは......?』
どもんは、水中に何かを発見した。一見すると、魚というよりは毛玉に近いかもしれない。
『もしや、鯖鬼……?』
容姿はさておき、魚としては明らかに異形である。それをサバッキー確信したどもんは、毛玉の捕獲に動いた。
『極東流・潜泳着手!』
どもんは毛玉の捕獲に成功。だが、毛玉は途端に暴れ始める。
『なんて力なんだ......! これ以上は、俺の息が持たない......!!』
溺死を恐れたどもんは、毛玉と共に水上へ浮上した。果たして、どもんが捕獲した毛玉はサバッキーなのだろうか?
――
水上では、のりこ隊長が懸命にルナ隊員を呼び続けていた。
「ルナ隊員......。貴方の雄姿、決して忘れないわ!」
ルナ隊員は殉職したと思い、のりこ隊長は神妙な面持ちで弔う。けれど、断定には少々早計な気もするが......?
「......!? まさか、こんな時にサバッキー!!?」
突如、水底から泡沫が上がる。遂に、サバッキーがその姿を現すのだろうか!?
「キューッ! キュキューッッッ!!!」
すると、水面からルナ隊員が姿を現した! だが、何者かに捕獲されているようだった。
「往生際が悪いぞ鯖鬼! 大人しくしろ!!」
ルナ隊員はサバッキーと誤認され、どもんに捕獲されてしまったようだ。どもんもまた、彼をサバッキーと信じてやまない。
「ルナ隊員を離しなさい! このウスラトンカチ!!」
どもんの強硬な態度に、のりこ隊長は激昂した。鬼の形相となったのりこ隊長は、どもん目掛けて飛び蹴りをお見舞いした。
「ぐぅおぅっっっ......!!」
飛び蹴りを顔面に受け、どもんは断末魔と共に水底へ消えていった。その隙を突いて、ルナ隊員は命からがら逃げだした。
「ルナ隊員、無事で良かった!」
のりこ隊長は、安堵の表情でルナを抱きしめた。隊員の無事を願ってやまないのは、隊長として当然の心情である。
やがて、ハヤテ隊員が帰還する。残念ながら、サバッキーの発見には至らなかったようだ。
「サバッキーなんていいの。隊員の無事が一番」
のりこ隊長は、サバッキーには代えがたい何か大切なものを手にした。
「......おっ?」
りょうた隊員の足元を、不意に黄金色の何かが横切った。けれど、一瞬にして姿をくらましてしまった。
果たして、りょうた隊員が見たものは何だったのだろうか?
――
その頃、カップルの二人は何かを釣り上げていた。
「渉君、サバッキーだよ!?」
あずみは、興奮のあまりはしゃいでいる。彼女の手元には、確かに川魚らしからぬ何かが握られている。
「へぇ......サバって、川でも釣れるんだなぁ?」
それを見た渉は、感嘆の息を漏らす。だがそれはサバでもなければ、ましてやサバッキーでもない。 その正体は、カワサバと呼ばれるヤマメとイワナの交雑種である。その姿は稀少、容姿はサバを思わせるごまだら模様である。
「おっ! またサバが釣れたぞ!?」
奇しくも、そこは爆釣スポットだったようだ。カワサバは入れ食いとなる。
「サバッキー、大漁だね!」
あずみはとても嬉しそうだ。渉もまた、思わず笑みがこぼれた。
――
後日、創作配信ライブ! を視聴していたりょうたは衝撃の事実を知る。
『黄金色のヤマメ、すこです!』
とむが紹介していたそれは、りょうたが見かけた黄金色の何かと酷似していた。どうやら、アルビノと呼ばれる白色個体の魚だったようだ。
『アルビノですよねぇ......何だか、魅入られちゃいます!』
そのイラストを見たリコも、思わず感嘆の声を上げる。アルビノは生息率が非常に低く、サバッキーよりも稀有な存在と言える。
りょうたは悔いた。あの時、そいつをスマートフォンに収めていればと。
だが、記録に残らない体験こそ何よりも貴重なもの。少年時代の思い出とはそんなものだ。