王城へ!
ー/ー ――正式に、王室に向かう日がきた。レオンハルトさまとも相談して、『婚約者(仮)』として彼もついてきてくれることになり、とても心強く思ったので自分の気持ちをそのまま伝えると、レオンハルトさまは照れたように微笑んだの。
好みのタイプの笑顔って胸がきゅんっとするのね。
冷静に分析できているのは、そうでもしないと落ち着いて話せないからよ。
でも、やっぱり、行くのは気が乗らないわ。
ちなみにあれから三日ほど経過している。そのあいだ、レームクール邸にレオンハルトさまと彼の仲間という護衛三人が泊まっているの。
もちろん、フォルクヴァルツのタウンハウスもあるらしいのだけど、私の両親が『せっかくだから、仲良くなろう!』という理由で彼らを客間に引き止めたのだ。
――うちの両親、強引なところもあるのよね……
護衛の人たちも良い人たちで、最初は恐縮していたようだけど、この三日ですっかり打ち解けた。
それにしても、たった二週間と少し前の出来事とはいえ、私の心におもーくのしかかるダニエル殿下の『元婚約者』という称号。
ほんっとうに気が重い……。だけど、招待状がある以上、行かなくてはいけないのよね。
「大丈夫ですか? エリカお嬢さま……」
メイドが不安げに聞いてきた。
小さくうなずくと、「無理はしないでくださいね」と心配そうに眉を下げるのを見て、気にしてくれる人がいるって幸せなことよね、と考える。
「ありがとう。今日は気持ちが強くなれそうなドレスにしてくれる?」
「かしこまりました」
メイドたちはこの決戦の日に相応しい、赤いドレスを選んだ。
ドレスに着替え、メイクもバッチリとしてもらい、自分の心を落ち着かせるために深呼吸を繰り返す。
「お綺麗です、お嬢さま!」
「ありがとう、行ってくるわ」
手首には、あのチューリップの花畑でもらったブレスレット。
これを身につけて、視界に入れるとなんだか……どんなことにも耐えられるような気がする。
気合いを入れるように、もう一度深呼吸をした。
自室から出ていくと、私のことを待っていたのか、レオンハルトさまが扉の近くに立っていたみたいで目を見開く。
私の姿を確認すると、ふわりと表情を緩めて――……
「今日も、とても綺麗ですね」
そう、声をかけてくれた。
――この人はっ、これだから……っ!
「あ、ありがとうございます……!」
「……? 頬が赤いようですが、熱でも……?」
「大丈夫です!」
あなたがさらっと私を照れさせることを言うからです! とは口が裂けても言えない。
レオンハルトさまはすっと手を差し出した。
彼を見上げて、それからその手を取る。
きゅっと握られる手の温かさを感じて、なぜかはわからないけれど……その体温に、緊張が解けていくようだった。
「――行きましょうか」
「……はい」
玄関まで歩き、王城に向かうための馬車に乗り込む。
お父さまとお母さまは別の馬車で向かうようで、私とレオンハルトさまのふたりきり。
馬車が走り出し、窓から流れる風景を眺めていると、ぽつりとレオンハルトさまが言葉をこぼす。
「不思議な感じがしますね」
「不思議、ですか?」
「はい。陛下に謁見するのに、なぜダニエル殿下とアデーレ嬢も一緒なのか、わからなくて……」
「そうですね。ダニエル殿下とアデーレさまはまだ正式に婚約者というわけではないはずなので、もしかしたら、その報告もあるのかもしれませんね」
婚約破棄を宣言されてから二週間と少し。
一度もダニエル殿下とアデーレが婚約したという話は、耳に届かなかった。
……レームクール邸のみんなが私の耳に届かないようにしてくれたのかもしれないけれど、婚約したのなら教えてくれるとも思うのよ。
いったい彼らはどんなことになっているのかしら……?
そもそも、オイゲン陛下がどうして招待状なんて渡したのかもわからないのよね。
お父さまが持っていた招待状、本当にいつ届いたのかしら……?
「緊張していますか?」
レオンハルトさまの問いに、思わず彼を見つめる。
そして、自分の胸元に手を当てて、眉を下げて微笑んだ。
「……よくわかりましたね。ですが、もうダニエル殿下とは婚約を白紙にした身ですもの。堂々とした態度を取りますわ!」
ぐっと拳を握って意気込むと、彼はきょとんとした表情を浮かべた。私の言葉が面白かったのか、くすりとはにかむ。
その表情もドストライクです!
……とは、面と向かって言えないけれど、本心だ。
「……ただ、レオンハルトさまがどんなふうに見られるのか、それだけが心配で……」
私はきっと晒しものになるだろう。一緒にいるレオンハルトさまもそう思われたらどうしよう?
ダニエル殿下と婚約してからずーっとそんな感じで見られていたから、私は平気なんだけど、レオンハルトさまは……
伯爵家って、中間で便利といえば便利な位置にいるんだけど……王族の地位と比べるとさすがにねぇ。
それに、ダニエル殿下が望んだ婚約者ってことで、注目度も高かったし。
王都で暮らしていると、どうしても注目を浴びてしまうのが、王族の婚約者のつらいところだった。
婚約破棄もあれだけ派手にやったからね。どんな目で見られるのかしら、今回は。
……でも、レオンハルトさまと初デートをした場所では、視線……気にならなかったな。
貴族のお茶会と一緒にしてはいけないとは思うんだけど……あれは別の意味で注目を浴びていたようなものだったけれど。
レオンハルトさまは、そんな私の表情を見てどう思ったのか、軽く手を振ってからじっとドレスを見つめた。
「オレはそんなことを気にしませんよ。……そういえば、赤いドレスがお好きなんですか?」
「え? ああ……いいえ。これは気合を入れるために着ました」
「気合い?」
「王族の方々との謁見ですから!」
自分を奮い立たせるためのドレス。
だからこそ、パッと見てわかるくらいの鮮やかな赤色にした。
どうしてそんなことを聞いたのかしら? この赤色、お気に召さなかったのかしら……?
でも、『綺麗』って言ってくださったし……そういえば、レオンハルトさまの好きな色も知らないわ。今度聞いてみなくちゃ。
彼が私へと手を伸ばす。首をかしげると、そっと私の手を取って、手の子にちゅっと唇を落とした。
「れ、レオンハルトさま……?」
「今日、陛下たちとの謁見をがんばりましょう。終わればきっと、自由になれますから」
「…………はいっ!」
そうよね、がんばらないと。
ダニエル殿下との婚約は白紙になったのだし、レオンハルトさまは『婚約者(仮)』として私の隣にいてくれるもの。
――こんなに心強いことって、ある?
大丈夫。私は――王族の方々と、きちんと向き合えるわ。
好みのタイプの笑顔って胸がきゅんっとするのね。
冷静に分析できているのは、そうでもしないと落ち着いて話せないからよ。
でも、やっぱり、行くのは気が乗らないわ。
ちなみにあれから三日ほど経過している。そのあいだ、レームクール邸にレオンハルトさまと彼の仲間という護衛三人が泊まっているの。
もちろん、フォルクヴァルツのタウンハウスもあるらしいのだけど、私の両親が『せっかくだから、仲良くなろう!』という理由で彼らを客間に引き止めたのだ。
――うちの両親、強引なところもあるのよね……
護衛の人たちも良い人たちで、最初は恐縮していたようだけど、この三日ですっかり打ち解けた。
それにしても、たった二週間と少し前の出来事とはいえ、私の心におもーくのしかかるダニエル殿下の『元婚約者』という称号。
ほんっとうに気が重い……。だけど、招待状がある以上、行かなくてはいけないのよね。
「大丈夫ですか? エリカお嬢さま……」
メイドが不安げに聞いてきた。
小さくうなずくと、「無理はしないでくださいね」と心配そうに眉を下げるのを見て、気にしてくれる人がいるって幸せなことよね、と考える。
「ありがとう。今日は気持ちが強くなれそうなドレスにしてくれる?」
「かしこまりました」
メイドたちはこの決戦の日に相応しい、赤いドレスを選んだ。
ドレスに着替え、メイクもバッチリとしてもらい、自分の心を落ち着かせるために深呼吸を繰り返す。
「お綺麗です、お嬢さま!」
「ありがとう、行ってくるわ」
手首には、あのチューリップの花畑でもらったブレスレット。
これを身につけて、視界に入れるとなんだか……どんなことにも耐えられるような気がする。
気合いを入れるように、もう一度深呼吸をした。
自室から出ていくと、私のことを待っていたのか、レオンハルトさまが扉の近くに立っていたみたいで目を見開く。
私の姿を確認すると、ふわりと表情を緩めて――……
「今日も、とても綺麗ですね」
そう、声をかけてくれた。
――この人はっ、これだから……っ!
「あ、ありがとうございます……!」
「……? 頬が赤いようですが、熱でも……?」
「大丈夫です!」
あなたがさらっと私を照れさせることを言うからです! とは口が裂けても言えない。
レオンハルトさまはすっと手を差し出した。
彼を見上げて、それからその手を取る。
きゅっと握られる手の温かさを感じて、なぜかはわからないけれど……その体温に、緊張が解けていくようだった。
「――行きましょうか」
「……はい」
玄関まで歩き、王城に向かうための馬車に乗り込む。
お父さまとお母さまは別の馬車で向かうようで、私とレオンハルトさまのふたりきり。
馬車が走り出し、窓から流れる風景を眺めていると、ぽつりとレオンハルトさまが言葉をこぼす。
「不思議な感じがしますね」
「不思議、ですか?」
「はい。陛下に謁見するのに、なぜダニエル殿下とアデーレ嬢も一緒なのか、わからなくて……」
「そうですね。ダニエル殿下とアデーレさまはまだ正式に婚約者というわけではないはずなので、もしかしたら、その報告もあるのかもしれませんね」
婚約破棄を宣言されてから二週間と少し。
一度もダニエル殿下とアデーレが婚約したという話は、耳に届かなかった。
……レームクール邸のみんなが私の耳に届かないようにしてくれたのかもしれないけれど、婚約したのなら教えてくれるとも思うのよ。
いったい彼らはどんなことになっているのかしら……?
そもそも、オイゲン陛下がどうして招待状なんて渡したのかもわからないのよね。
お父さまが持っていた招待状、本当にいつ届いたのかしら……?
「緊張していますか?」
レオンハルトさまの問いに、思わず彼を見つめる。
そして、自分の胸元に手を当てて、眉を下げて微笑んだ。
「……よくわかりましたね。ですが、もうダニエル殿下とは婚約を白紙にした身ですもの。堂々とした態度を取りますわ!」
ぐっと拳を握って意気込むと、彼はきょとんとした表情を浮かべた。私の言葉が面白かったのか、くすりとはにかむ。
その表情もドストライクです!
……とは、面と向かって言えないけれど、本心だ。
「……ただ、レオンハルトさまがどんなふうに見られるのか、それだけが心配で……」
私はきっと晒しものになるだろう。一緒にいるレオンハルトさまもそう思われたらどうしよう?
ダニエル殿下と婚約してからずーっとそんな感じで見られていたから、私は平気なんだけど、レオンハルトさまは……
伯爵家って、中間で便利といえば便利な位置にいるんだけど……王族の地位と比べるとさすがにねぇ。
それに、ダニエル殿下が望んだ婚約者ってことで、注目度も高かったし。
王都で暮らしていると、どうしても注目を浴びてしまうのが、王族の婚約者のつらいところだった。
婚約破棄もあれだけ派手にやったからね。どんな目で見られるのかしら、今回は。
……でも、レオンハルトさまと初デートをした場所では、視線……気にならなかったな。
貴族のお茶会と一緒にしてはいけないとは思うんだけど……あれは別の意味で注目を浴びていたようなものだったけれど。
レオンハルトさまは、そんな私の表情を見てどう思ったのか、軽く手を振ってからじっとドレスを見つめた。
「オレはそんなことを気にしませんよ。……そういえば、赤いドレスがお好きなんですか?」
「え? ああ……いいえ。これは気合を入れるために着ました」
「気合い?」
「王族の方々との謁見ですから!」
自分を奮い立たせるためのドレス。
だからこそ、パッと見てわかるくらいの鮮やかな赤色にした。
どうしてそんなことを聞いたのかしら? この赤色、お気に召さなかったのかしら……?
でも、『綺麗』って言ってくださったし……そういえば、レオンハルトさまの好きな色も知らないわ。今度聞いてみなくちゃ。
彼が私へと手を伸ばす。首をかしげると、そっと私の手を取って、手の子にちゅっと唇を落とした。
「れ、レオンハルトさま……?」
「今日、陛下たちとの謁見をがんばりましょう。終わればきっと、自由になれますから」
「…………はいっ!」
そうよね、がんばらないと。
ダニエル殿下との婚約は白紙になったのだし、レオンハルトさまは『婚約者(仮)』として私の隣にいてくれるもの。
――こんなに心強いことって、ある?
大丈夫。私は――王族の方々と、きちんと向き合えるわ。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
――正式に、王室に向かう日がきた。レオンハルトさまとも相談して、『婚約者(仮)』として彼もついてきてくれることになり、とても心強く思ったので自分の気持ちをそのまま伝えると、レオンハルトさまは照れたように微笑んだの。
好みのタイプの笑顔って胸がきゅんっとするのね。
冷静に分析できているのは、そうでもしないと落ち着いて話せないからよ。
でも、やっぱり、行くのは気が乗らないわ。
ちなみにあれから三日ほど経過している。そのあいだ、レームクール邸にレオンハルトさまと彼の仲間という護衛三人が泊まっているの。
もちろん、フォルクヴァルツのタウンハウスもあるらしいのだけど、私の両親が『せっかくだから、仲良くなろう!』という理由で彼らを客間に引き止めたのだ。
――うちの両親、強引なところもあるのよね……
護衛の人たちも良い人たちで、最初は恐縮していたようだけど、この三日ですっかり打ち解けた。
それにしても、たった二週間と少し前の出来事とはいえ、私の心におもーくのしかかるダニエル殿下の『元婚約者』という称号。
ほんっとうに気が重い……。だけど、招待状がある以上、行かなくてはいけないのよね。
「大丈夫ですか? エリカお嬢さま……」
メイドが不安げに聞いてきた。
小さくうなずくと、「無理はしないでくださいね」と心配そうに眉を下げるのを見て、気にしてくれる人がいるって幸せなことよね、と考える。
「ありがとう。今日は気持ちが強くなれそうなドレスにしてくれる?」
「かしこまりました」
「かしこまりました」
メイドたちはこの決戦の日に相応しい、赤いドレスを選んだ。
ドレスに着替え、メイクもバッチリとしてもらい、自分の心を落ち着かせるために深呼吸を繰り返す。
「お綺麗です、お嬢さま!」
「ありがとう、行ってくるわ」
「ありがとう、行ってくるわ」
手首には、あのチューリップの花畑でもらったブレスレット。
これを身につけて、視界に入れるとなんだか……どんなことにも耐えられるような気がする。
気合いを入れるように、もう一度深呼吸をした。
自室から出ていくと、私のことを待っていたのか、レオンハルトさまが扉の近くに立っていたみたいで目を見開く。
私の姿を確認すると、ふわりと表情を緩めて――……
「今日も、とても綺麗ですね」
そう、声をかけてくれた。
――この人はっ、これだから……っ!
「あ、ありがとうございます……!」
「……? 頬が赤いようですが、熱でも……?」
「大丈夫です!」
「……? 頬が赤いようですが、熱でも……?」
「大丈夫です!」
あなたがさらっと私を照れさせることを言うからです! とは口が裂けても言えない。
レオンハルトさまはすっと手を差し出した。
彼を見上げて、それからその手を取る。
きゅっと握られる手の温かさを感じて、なぜかはわからないけれど……その体温に、緊張が解けていくようだった。
「――行きましょうか」
「……はい」
「……はい」
玄関まで歩き、王城に向かうための馬車に乗り込む。
お父さまとお母さまは別の馬車で向かうようで、私とレオンハルトさまのふたりきり。
馬車が走り出し、窓から流れる風景を眺めていると、ぽつりとレオンハルトさまが言葉をこぼす。
「不思議な感じがしますね」
「不思議、ですか?」
「はい。陛下に謁見するのに、なぜダニエル殿下とアデーレ嬢も一緒なのか、わからなくて……」
「そうですね。ダニエル殿下とアデーレさまはまだ正式に婚約者というわけではないはずなので、もしかしたら、その報告もあるのかもしれませんね」
「不思議、ですか?」
「はい。陛下に謁見するのに、なぜダニエル殿下とアデーレ嬢も一緒なのか、わからなくて……」
「そうですね。ダニエル殿下とアデーレさまはまだ正式に婚約者というわけではないはずなので、もしかしたら、その報告もあるのかもしれませんね」
婚約破棄を宣言されてから二週間と少し。
一度もダニエル殿下とアデーレが婚約したという話は、耳に届かなかった。
……レームクール邸のみんなが私の耳に届かないようにしてくれたのかもしれないけれど、婚約したのなら教えてくれるとも思うのよ。
いったい彼らはどんなことになっているのかしら……?
そもそも、オイゲン陛下がどうして招待状なんて渡したのかもわからないのよね。
お父さまが持っていた招待状、本当にいつ届いたのかしら……?
「緊張していますか?」
レオンハルトさまの問いに、思わず彼を見つめる。
そして、自分の胸元に手を当てて、眉を下げて微笑んだ。
「……よくわかりましたね。ですが、もうダニエル殿下とは婚約を白紙にした身ですもの。堂々とした態度を取りますわ!」
ぐっと拳を握って意気込むと、彼はきょとんとした表情を浮かべた。私の言葉が面白かったのか、くすりとはにかむ。
その表情もドストライクです!
……とは、面と向かって言えないけれど、本心だ。
「……ただ、レオンハルトさまがどんなふうに見られるのか、それだけが心配で……」
私はきっと|晒《さら》しものになるだろう。一緒にいるレオンハルトさまもそう思われたらどうしよう?
ダニエル殿下と婚約してからずーっとそんな感じで見られていたから、私は平気なんだけど、レオンハルトさまは……
伯爵家って、中間で便利といえば便利な位置にいるんだけど……王族の地位と比べるとさすがにねぇ。
それに、ダニエル殿下が望んだ婚約者ってことで、注目度も高かったし。
王都で暮らしていると、どうしても注目を浴びてしまうのが、王族の婚約者のつらいところだった。
婚約破棄もあれだけ派手にやったからね。どんな目で見られるのかしら、今回は。
……でも、レオンハルトさまと初デートをした場所では、視線……気にならなかったな。
貴族のお茶会と一緒にしてはいけないとは思うんだけど……あれは別の意味で注目を浴びていたようなものだったけれど。
レオンハルトさまは、そんな私の表情を見てどう思ったのか、軽く手を振ってからじっとドレスを見つめた。
「オレはそんなことを気にしませんよ。……そういえば、赤いドレスがお好きなんですか?」
「え? ああ……いいえ。これは気合を入れるために着ました」
「気合い?」
「王族の方々との謁見ですから!」
「え? ああ……いいえ。これは気合を入れるために着ました」
「気合い?」
「王族の方々との謁見ですから!」
自分を|奮《ふる》い立たせるためのドレス。
だからこそ、パッと見てわかるくらいの鮮やかな赤色にした。
どうしてそんなことを聞いたのかしら? この赤色、お気に召さなかったのかしら……?
でも、『綺麗』って言ってくださったし……そういえば、レオンハルトさまの好きな色も知らないわ。今度聞いてみなくちゃ。
彼が私へと手を伸ばす。首をかしげると、そっと私の手を取って、手の子にちゅっと唇を落とした。
「れ、レオンハルトさま……?」
「今日、陛下たちとの謁見をがんばりましょう。終わればきっと、自由になれますから」
「…………はいっ!」
「今日、陛下たちとの謁見をがんばりましょう。終わればきっと、自由になれますから」
「…………はいっ!」
そうよね、がんばらないと。
ダニエル殿下との婚約は白紙になったのだし、レオンハルトさまは『婚約者(仮)』として私の隣にいてくれるもの。
――こんなに心強いことって、ある?
大丈夫。私は――王族の方々と、きちんと向き合えるわ。