のりこ達は帰宅し、先程の巨大魚を京子へ差し出した。あまりの巨体に、床へ反響する音も重々しい。
「あら? この魚は、もしかしてイワナ??」
京子は、一瞬にして巨大魚の正体を見破った。残念ながら、ハナレドンではなかったようだ。
「このお魚さんね、とっても美味しいの! 特に塩焼きね!!」
京子は瞳を輝かせながら語った。イワナといえば、マス科の魚では指折りの人気を誇る。
「......せっかくだし、倉庫で見つけたバーベキューコンロ使って焼いちゃおうか!?」
京子は意気揚々と語る。その言葉に、のりことりょうたも乗り気な様子。
「そうと決まれば、良行さんも手伝って!」
良行は、何も知らずにコーヒーブレイクを満喫している。花のような香り......おそらく、グアテマラを淹れたのだろうか?
「わっ!! どうしたそれ!?」
良行は振り向くなり驚愕。生返事だった彼は、今更になってイワナの存在に気付く。
「とにかく、バーベキューコンロを持ってきて!」
京子は良行へ準備を促した。
――
庭先で、焼き魚の香ばしい匂いが漂う。どうやら、イワナは美味しく焼き上がったようだ。
「おかあさん、僕もう我慢できない!」
りょうたは、イワナが食べたくてうずうずしている。よだれを我慢するのもやっとなのだろう。
「待って、今切り分けるから!」
切り分ける巨体は、魚というより牛肉のブロックに見えてしまう。それほど、イワナが大物であったと窺い知れる。
「ワン! ワンッ!!」
いつの間にか、香味に釣られてケンもやってきたきた。今回は文恵も同半している。
「あら、おばあちゃん。もしよかったら、夕食ご一緒しませんか?」
京子は、せっかくだからと文恵を夕食に誘う。その誘い、彼女は満更でもないようだ。
「あらぁ、それならお言葉に甘えて。そうだ、お漬物持って来ましょ!」
ーー
それからまもなく、島長一家と文恵による賑やかな夕食が始まった。大勢で食卓を囲む、団欒とした雰囲気が漂う。
「美味しい!!」
イワナの塩焼きに舌鼓を打つのりこ。その傍らに、ルナがそっとやってきた。
「ルナちゃんもどうぞ!」
ルナはもまた、イワナの味を噛み締めていた。