お見合いで一目惚れ!? 4話
ー/ー「……あの、レオンハルトさまはどうして、このお見合いを受けたのですか?」
だって、こんなに格好いい人だもの。絶対にモテていたと思うのよね。
引く手あまただろうに、どうして私とのお見合いを受けてくれたのかしら?
ちらりとレオンハルトさまに視線を向けて問うと、彼と視線がぱちっと合った。彼は「……その、ええと」となんだか言いづらそうにあちこち視線を彷徨わせる。
「……お恥ずかしながら、あまり女性と接したことがなくて……」
「え?」
夜会にいたら、絶対に誰か声をかけるでしょう、こんなにイケメンなんだもの! と目を丸くしていると、彼は眉を下げて後頭部に手を置いた。
「ずっと騎士団に所属しておりまして、父が辺境伯を引退し、オレ……わたしが辺境伯を継いだことで、仕事一筋になってしまい……」
騎士団に所属していた?
レオンハルトさまを見つめながら、乙女ゲームの設定を思い出す。
彼はゲームに出てきていない人だ。それなのにこんなに格好いいって、さすが乙女ゲームの中よね。お父さまだって美形だし、セバスチャンは柔らかい雰囲気の執事、お母さまも美人だし……このゲーム、本当に美男美女しかいないわね。
まぁ、私にとってこの世界はゲームではなく、現実なのだけど……
確か、フォルクヴァルツ領はお母さまの故郷の国境だったはず。そして、その国境を守るのが辺境伯であるレオンハルトさまのお仕事。
国境には魔物も出やすい。でも、魔物との戦闘はフォルクヴァルツの人たちにとっては日常茶飯事で、騎士団の人たちは屈強な人たちが多いと、攻略本に書いてあった。
知らない設定が載っていると聞いて、攻略本を買いに走った前世の私、ナイス!
「国境を守ることも、魔物と戦うことも……大変ではありませんか?」
「大丈夫ですよ。最近では敵軍も諦めたのか来ませんし、魔物はフォルクヴァルツの騎士なら倒せますし。わたしの仕事は領地の人々と触れ合うことくらいです」
なんてさらっと言われて、目を丸くしてしまう。謙遜ではなく、きっと心からそう思っているのね。でも――領地の人々と触れ合うことくらい……とは、どういう意味なのかしら?
「今のところ平和ですよ、フォルクヴァルツ」
「それは良いことですわね。……あの『触れ合う』とは?」
「ああ、領民の生活はやってみないとわからないので……」
もしかして、領主ということを隠して、領民とともに暮らしたことがあるの?
――そんなふうに接して、領民たちの悩みを解決していたのかもしれないわね。
「レオンハルトさまは、フォルクヴァルツ領が大切なのですね」
にこりと微笑んで見せると、レオンハルトさまはきょとりとした表情を浮かべた。
きっと彼は、ずっとフォルクヴァルツの騎士団で先頭に立ち、騎士たちを導いてきたのだろう。そして、そのあとすぐに辺境伯になったので、女性と話す機会がなかったのかも?
「夜会なども誘われたのですが、仕事に追われて参加できず……」
「お仕事には、慣れましたか?」
「うーん、どうなんでしょうね。騎士として魔物と戦っていたほうが楽だったかもしれません」
肩を落とすレオンハルトさまを見て、思わずクスクスと笑ってしまった。
「エリカ嬢こそ、どうしてこのお見合いを受けようと思ったのですか?」
「父から頼まれて、というのもありますが……私、できればこの王都から出ていきたいのです」
「それは、一時的な避難先……ということでしょうか?」
ふるふると首を横に振る。
扇子を閉じて、トン、自分の胸元に手を置いて、自信満々の笑みを浮かべた。
「私にも伯爵家令嬢としての役割がございます。ダニエル殿下の婚約者として、いろいろなことを学びました……が、婚約は破棄されましたので、思う存分力を揮えないのです」
私がダニエル殿下の婚約者として過ごした八年間。
いろいろなことを、家庭教師たちから教えてもらった。
まぁ、必死に勉強しているときに、ダニエル殿下は他の令嬢と逢瀬を重ねていたのだから悲しくなってしまう……なんて、嘘よ。
卒業パーティーで婚約破棄を宣言されるかは、半信半疑だったけれど、いつか婚約は破棄されるだろうと思っていた。
だから、そんなにダメージは負っていない。……そう思い込んでいるだけかもしれないけど、ね。
首をかしげるレオンハルトさまに、私は眉を下げて微笑んだ。
「もしも――もしも、私の他に気になる女性が現れたら、きちんとお別れを伝えてから、その女性のもとに……と」
……もしかしたら私、想像以上にダメージ受けていたのかな?
ダニエル殿下は一年に一度、浮気をしていた。
八回も浮気されたから、傷つかないように心が、頭が、情報を閉ざしてしまったのかも。
レオンハルトさまが痛ましそうな視線を私に向ける。
「――わたしは、できればあなたと結婚したいと思っています」
「――えっ?」
「その、こうして女性と会話をするのも久しぶりでしたが……あなたとは、自然に話せた気がして。なので、オレが浮気するという心配は、しないでください」
きっと、私のことを安心させるために言ってくれたのね。優しい人だ。
――彼はとても誠実な人なのだろう。誠実な人だと信じたい。
それにしても、こんなに格好いい人なのに、乙女ゲームの攻略キャラではなかったみたい。全クリして攻略本も買った私がいうのだから、間違いないわ。
攻略キャラではないのに、本当……素敵な人。
こんなに魅力的な人が結婚していないなんて――そして、私と結婚したいと言ってくれるなんて、とても幸運なことだと思う。
一人称、本当は『オレ』なんだろうな。私に『良く思われたい』と言っていたし……そういうところが、なんだか心がムズムズとくすぐったくなるのよ。
だって、こんなに格好いい人だもの。絶対にモテていたと思うのよね。
引く手あまただろうに、どうして私とのお見合いを受けてくれたのかしら?
ちらりとレオンハルトさまに視線を向けて問うと、彼と視線がぱちっと合った。彼は「……その、ええと」となんだか言いづらそうにあちこち視線を彷徨わせる。
「……お恥ずかしながら、あまり女性と接したことがなくて……」
「え?」
夜会にいたら、絶対に誰か声をかけるでしょう、こんなにイケメンなんだもの! と目を丸くしていると、彼は眉を下げて後頭部に手を置いた。
「ずっと騎士団に所属しておりまして、父が辺境伯を引退し、オレ……わたしが辺境伯を継いだことで、仕事一筋になってしまい……」
騎士団に所属していた?
レオンハルトさまを見つめながら、乙女ゲームの設定を思い出す。
彼はゲームに出てきていない人だ。それなのにこんなに格好いいって、さすが乙女ゲームの中よね。お父さまだって美形だし、セバスチャンは柔らかい雰囲気の執事、お母さまも美人だし……このゲーム、本当に美男美女しかいないわね。
まぁ、私にとってこの世界はゲームではなく、現実なのだけど……
確か、フォルクヴァルツ領はお母さまの故郷の国境だったはず。そして、その国境を守るのが辺境伯であるレオンハルトさまのお仕事。
国境には魔物も出やすい。でも、魔物との戦闘はフォルクヴァルツの人たちにとっては日常茶飯事で、騎士団の人たちは屈強な人たちが多いと、攻略本に書いてあった。
知らない設定が載っていると聞いて、攻略本を買いに走った前世の私、ナイス!
「国境を守ることも、魔物と戦うことも……大変ではありませんか?」
「大丈夫ですよ。最近では敵軍も諦めたのか来ませんし、魔物はフォルクヴァルツの騎士なら倒せますし。わたしの仕事は領地の人々と触れ合うことくらいです」
なんてさらっと言われて、目を丸くしてしまう。謙遜ではなく、きっと心からそう思っているのね。でも――領地の人々と触れ合うことくらい……とは、どういう意味なのかしら?
「今のところ平和ですよ、フォルクヴァルツ」
「それは良いことですわね。……あの『触れ合う』とは?」
「ああ、領民の生活はやってみないとわからないので……」
もしかして、領主ということを隠して、領民とともに暮らしたことがあるの?
――そんなふうに接して、領民たちの悩みを解決していたのかもしれないわね。
「レオンハルトさまは、フォルクヴァルツ領が大切なのですね」
にこりと微笑んで見せると、レオンハルトさまはきょとりとした表情を浮かべた。
きっと彼は、ずっとフォルクヴァルツの騎士団で先頭に立ち、騎士たちを導いてきたのだろう。そして、そのあとすぐに辺境伯になったので、女性と話す機会がなかったのかも?
「夜会なども誘われたのですが、仕事に追われて参加できず……」
「お仕事には、慣れましたか?」
「うーん、どうなんでしょうね。騎士として魔物と戦っていたほうが楽だったかもしれません」
肩を落とすレオンハルトさまを見て、思わずクスクスと笑ってしまった。
「エリカ嬢こそ、どうしてこのお見合いを受けようと思ったのですか?」
「父から頼まれて、というのもありますが……私、できればこの王都から出ていきたいのです」
「それは、一時的な避難先……ということでしょうか?」
ふるふると首を横に振る。
扇子を閉じて、トン、自分の胸元に手を置いて、自信満々の笑みを浮かべた。
「私にも伯爵家令嬢としての役割がございます。ダニエル殿下の婚約者として、いろいろなことを学びました……が、婚約は破棄されましたので、思う存分力を揮えないのです」
私がダニエル殿下の婚約者として過ごした八年間。
いろいろなことを、家庭教師たちから教えてもらった。
まぁ、必死に勉強しているときに、ダニエル殿下は他の令嬢と逢瀬を重ねていたのだから悲しくなってしまう……なんて、嘘よ。
卒業パーティーで婚約破棄を宣言されるかは、半信半疑だったけれど、いつか婚約は破棄されるだろうと思っていた。
だから、そんなにダメージは負っていない。……そう思い込んでいるだけかもしれないけど、ね。
首をかしげるレオンハルトさまに、私は眉を下げて微笑んだ。
「もしも――もしも、私の他に気になる女性が現れたら、きちんとお別れを伝えてから、その女性のもとに……と」
……もしかしたら私、想像以上にダメージ受けていたのかな?
ダニエル殿下は一年に一度、浮気をしていた。
八回も浮気されたから、傷つかないように心が、頭が、情報を閉ざしてしまったのかも。
レオンハルトさまが痛ましそうな視線を私に向ける。
「――わたしは、できればあなたと結婚したいと思っています」
「――えっ?」
「その、こうして女性と会話をするのも久しぶりでしたが……あなたとは、自然に話せた気がして。なので、オレが浮気するという心配は、しないでください」
きっと、私のことを安心させるために言ってくれたのね。優しい人だ。
――彼はとても誠実な人なのだろう。誠実な人だと信じたい。
それにしても、こんなに格好いい人なのに、乙女ゲームの攻略キャラではなかったみたい。全クリして攻略本も買った私がいうのだから、間違いないわ。
攻略キャラではないのに、本当……素敵な人。
こんなに魅力的な人が結婚していないなんて――そして、私と結婚したいと言ってくれるなんて、とても幸運なことだと思う。
一人称、本当は『オレ』なんだろうな。私に『良く思われたい』と言っていたし……そういうところが、なんだか心がムズムズとくすぐったくなるのよ。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
「……あの、レオンハルトさまはどうして、このお見合いを受けたのですか?」
だって、こんなに格好いい人だもの。絶対にモテていたと思うのよね。
引く手あまただろうに、どうして私とのお見合いを受けてくれたのかしら?
ちらりとレオンハルトさまに視線を向けて問うと、彼と視線がぱちっと合った。彼は「……その、ええと」となんだか言いづらそうにあちこち視線を|彷徨《さまよ》わせる。
「……お恥ずかしながら、あまり女性と接したことがなくて……」
「え?」
「え?」
夜会にいたら、絶対に誰か声をかけるでしょう、こんなにイケメンなんだもの! と目を丸くしていると、彼は眉を下げて後頭部に手を置いた。
「ずっと騎士団に所属しておりまして、父が辺境伯を引退し、オレ……わたしが辺境伯を継いだことで、仕事一筋になってしまい……」
騎士団に所属していた?
レオンハルトさまを見つめながら、乙女ゲームの設定を思い出す。
彼はゲームに出てきていない人だ。それなのにこんなに格好いいって、さすが乙女ゲームの中よね。お父さまだって美形だし、セバスチャンは柔らかい雰囲気の執事、お母さまも美人だし……このゲーム、本当に美男美女しかいないわね。
まぁ、私にとってこの世界はゲームではなく、現実なのだけど……
確か、フォルクヴァルツ領はお母さまの故郷の国境だったはず。そして、その国境を守るのが辺境伯であるレオンハルトさまのお仕事。
国境には魔物も出やすい。でも、魔物との戦闘はフォルクヴァルツの人たちにとっては日常茶飯事で、騎士団の人たちは屈強な人たちが多いと、攻略本に書いてあった。
知らない設定が載っていると聞いて、攻略本を買いに走った前世の私、ナイス!
「国境を守ることも、魔物と戦うことも……大変ではありませんか?」
「大丈夫ですよ。最近では敵軍も諦めたのか来ませんし、魔物はフォルクヴァルツの騎士なら倒せますし。わたしの仕事は領地の人々と触れ合うことくらいです」
「大丈夫ですよ。最近では敵軍も諦めたのか来ませんし、魔物はフォルクヴァルツの騎士なら倒せますし。わたしの仕事は領地の人々と触れ合うことくらいです」
なんてさらっと言われて、目を丸くしてしまう。|謙遜《けんそん》ではなく、きっと心からそう思っているのね。でも――領地の人々と触れ合うことくらい……とは、どういう意味なのかしら?
「今のところ平和ですよ、フォルクヴァルツ」
「それは良いことですわね。……あの『触れ合う』とは?」
「ああ、領民の生活はやってみないとわからないので……」
「それは良いことですわね。……あの『触れ合う』とは?」
「ああ、領民の生活はやってみないとわからないので……」
もしかして、領主ということを隠して、領民とともに暮らしたことがあるの?
――そんなふうに接して、領民たちの悩みを解決していたのかもしれないわね。
「レオンハルトさまは、フォルクヴァルツ領が大切なのですね」
にこりと微笑んで見せると、レオンハルトさまはきょとりとした表情を浮かべた。
きっと彼は、ずっとフォルクヴァルツの騎士団で先頭に立ち、騎士たちを導いてきたのだろう。そして、そのあとすぐに辺境伯になったので、女性と話す機会がなかったのかも?
「夜会なども誘われたのですが、仕事に追われて参加できず……」
「お仕事には、慣れましたか?」
「うーん、どうなんでしょうね。騎士として魔物と戦っていたほうが楽だったかもしれません」
「お仕事には、慣れましたか?」
「うーん、どうなんでしょうね。騎士として魔物と戦っていたほうが楽だったかもしれません」
肩を落とすレオンハルトさまを見て、思わずクスクスと笑ってしまった。
「エリカ嬢こそ、どうしてこのお見合いを受けようと思ったのですか?」
「父から頼まれて、というのもありますが……私、できればこの王都から出ていきたいのです」
「それは、一時的な避難先……ということでしょうか?」
「父から頼まれて、というのもありますが……私、できればこの王都から出ていきたいのです」
「それは、一時的な避難先……ということでしょうか?」
ふるふると首を横に振る。
扇子を閉じて、トン、自分の胸元に手を置いて、自信満々の笑みを浮かべた。
「私にも伯爵家令嬢としての役割がございます。ダニエル殿下の婚約者として、いろいろなことを学びました……が、婚約は破棄されましたので、思う存分力を揮えないのです」
私がダニエル殿下の婚約者として過ごした八年間。
いろいろなことを、家庭教師たちから教えてもらった。
まぁ、必死に勉強しているときに、ダニエル殿下は他の令嬢と|逢瀬《おうせ》を重ねていたのだから悲しくなってしまう……なんて、嘘よ。
卒業パーティーで婚約破棄を宣言されるかは、半信半疑だったけれど、いつか婚約は破棄されるだろうと思っていた。
だから、そんなにダメージは|負《お》っていない。……そう思い込んでいるだけかもしれないけど、ね。
首をかしげるレオンハルトさまに、私は眉を下げて微笑んだ。
「もしも――もしも、私の他に気になる女性が|現《あらわ》れたら、きちんとお別れを伝えてから、その女性のもとに……と」
……もしかしたら私、想像以上にダメージ受けていたのかな?
ダニエル殿下は一年に一度、浮気をしていた。
八回も浮気されたから、傷つかないように心が、頭が、情報を閉ざしてしまったのかも。
レオンハルトさまが痛ましそうな視線を私に向ける。
「――わたしは、できればあなたと結婚したいと思っています」
「――えっ?」
「その、こうして女性と会話をするのも久しぶりでしたが……あなたとは、自然に話せた気がして。なので、オレが浮気するという心配は、しないでください」
「――えっ?」
「その、こうして女性と会話をするのも久しぶりでしたが……あなたとは、自然に話せた気がして。なので、オレが浮気するという心配は、しないでください」
きっと、私のことを安心させるために言ってくれたのね。優しい人だ。
――彼はとても誠実な人なのだろう。誠実な人だと信じたい。
それにしても、こんなに格好いい人なのに、乙女ゲームの攻略キャラではなかったみたい。全クリして攻略本も買った私がいうのだから、間違いないわ。
攻略キャラではないのに、本当……素敵な人。
こんなに魅力的な人が結婚していないなんて――そして、私と結婚したいと言ってくれるなんて、とても幸運なことだと思う。
一人称、本当は『オレ』なんだろうな。私に『良く思われたい』と言っていたし……そういうところが、なんだか心がムズムズとくすぐったくなるのよ。