第4章〜⑫〜
ー/ー「長いトイレだったな、ナツキ! どこまで行ってたんだよ!?」
友人たちの囲むテーブルに着こうとすると、康之が、笑いながら、肩に腕を回してジャレついて来る。戻ってくるなり、これだ……。
ミユキさんは、こいつのドコを見て、「とっても良い人」という評価を下したのか?
「ちょっと、カワタさんと積もる話しってヤツをしてたんだよ」
そう返答した後、
「これから、花火前の挨拶をするらしいから、しっかり聞いとけよ」
と、康之に伝える。
「おっ、そうなのか?」
カワタ姉弟の話題の中心であった悪友は、アッサリと身体を離し、その姉弟とともに夫妻が並んでいる一家が集まっている方向に向き直った。
すると、
「お集まりのみなさま!」
張り上げた声で、カワタさんが語り出す。
「今日は、花火観賞会にお越しいただいてありがとうございます。我が家の子どもたちもそうですが、感染症禍で、外出もままならず、屋外や多くの人が集まる場所での催しにが中止になったりして、せっかくの夏休みにもかかわらず、十分に楽しむことができなかった方も多いと思います。今夜は、ソーシャル・ディスタンスを守りながら、夏の思い出作りとして花火を楽しんでいただけるとうれしいな、と考えています!」
カワタさんは、淀みない口調で、そこまで語ったあと、
「それでは、カウントダウン!」
と、高々と三本指を掲げたあと、集まった数十人の人々と声を合わせ、
「三・二・一!」
秒読みを行い、一家の背後の夜空には
ヒュ〜!!
という音とともに、一筋の火の玉が打ち上がる。
そして、数秒後、
ド〜〜ン!!!!
という轟音とともに、火球は、真っ暗な空に大輪の花を咲かせた。
「「おお〜!!!!」」
集まった人々から一斉に拍手と歓声が上がる。
二千発が打ち上がる花火観賞会が始まったーーーーーー。
※
三号玉と呼ばれる高さ一五◯メートル近くまで打ち上がるオープニングの花火のあとは、より小型で、低い位置で開く花火が連続で打ち上げられた。
玉が割れた後、星が尾を引いて放射状に飛び散ることで夜空に描き出される菊の花。
丸く開くが、尾を引かず、光の点のように広がっていく牡丹の花。
玉が割れたあと、上空からの光跡が、枝の垂れ下がった柳のように落ちてくるものもある。
大きな音とともに、次々と夜空に花開く光の玉は、夏らしさを感じさせてくれる。
バーベキュー・フィールドの一角を占めるテーブルに集った友人一同は、その美しい光景に、ため息を漏らしながら、見入っている。
そんな彼ら彼女らのようすをうかがっていると、ふと中嶋由香と目があった。
カワタさんと話し込む前に、ここと同じ場所で、話しを聞かせてくれたクラスメートは、ニコリと笑い、大嶋と康之に声をかけ、隣のテーブルに移動をうながしたようだ。それに気付いた哲夫も、彼女たちのあとに続く。
四人が移動する中、こちらを向いた大嶋裕美子は、歩きながら片目を瞬きさせ、サムズアップのポーズで、何かを訴えてくる。
(絶対、なにか勘違いをしている……)
いつも朗らかなクラスメートの余計な気遣いに、少々頭を抱えつつ、オレは、気持ちを固め、小嶋夏海に話し掛けた。
「花火、キレイだな……」
唐突に声を掛けられたことに驚いたのか、花火に見入っていた彼女は、ハッとした表情になり、
「うん……」
と、穏やかな表情でうなずく。
そして、四人のクラスメートが席を離れたことに気付いて、
「ユカとユミコが、気を遣ったの?」
と、こちらにたずねる。
「あぁ……」
微苦笑で答えて、彼女が想っているであろうことに同意していることを示すと、友人たちの『お節介』に呆れたといった感じで、
「もう、余計なことしちゃって……しょうがないなぁ……」
そうつぶやいた小嶋夏海は、苦笑いを浮かべながら、
「それじゃ、二人の気持ちに応えて、坂井に話しを聞いてもらおうかな?」
と、こちらに意思の確認をしてきた。
彼女の言葉に、覚悟を決めて、無言でうなずく。
すると、こちらの想いを受け取ってくれたのだろう、彼女は、静かに語り始めた。
「今まで、話せなくて申し訳ないんだけど……私、夏休みが終わったら、転校することになったんだーーーーーー」
突然の報告に驚き、思わずピクリと、片方の眉が動いたのが、自分でもわかった。
友人たちの囲むテーブルに着こうとすると、康之が、笑いながら、肩に腕を回してジャレついて来る。戻ってくるなり、これだ……。
ミユキさんは、こいつのドコを見て、「とっても良い人」という評価を下したのか?
「ちょっと、カワタさんと積もる話しってヤツをしてたんだよ」
そう返答した後、
「これから、花火前の挨拶をするらしいから、しっかり聞いとけよ」
と、康之に伝える。
「おっ、そうなのか?」
カワタ姉弟の話題の中心であった悪友は、アッサリと身体を離し、その姉弟とともに夫妻が並んでいる一家が集まっている方向に向き直った。
すると、
「お集まりのみなさま!」
張り上げた声で、カワタさんが語り出す。
「今日は、花火観賞会にお越しいただいてありがとうございます。我が家の子どもたちもそうですが、感染症禍で、外出もままならず、屋外や多くの人が集まる場所での催しにが中止になったりして、せっかくの夏休みにもかかわらず、十分に楽しむことができなかった方も多いと思います。今夜は、ソーシャル・ディスタンスを守りながら、夏の思い出作りとして花火を楽しんでいただけるとうれしいな、と考えています!」
カワタさんは、淀みない口調で、そこまで語ったあと、
「それでは、カウントダウン!」
と、高々と三本指を掲げたあと、集まった数十人の人々と声を合わせ、
「三・二・一!」
秒読みを行い、一家の背後の夜空には
ヒュ〜!!
という音とともに、一筋の火の玉が打ち上がる。
そして、数秒後、
ド〜〜ン!!!!
という轟音とともに、火球は、真っ暗な空に大輪の花を咲かせた。
「「おお〜!!!!」」
集まった人々から一斉に拍手と歓声が上がる。
二千発が打ち上がる花火観賞会が始まったーーーーーー。
※
三号玉と呼ばれる高さ一五◯メートル近くまで打ち上がるオープニングの花火のあとは、より小型で、低い位置で開く花火が連続で打ち上げられた。
玉が割れた後、星が尾を引いて放射状に飛び散ることで夜空に描き出される菊の花。
丸く開くが、尾を引かず、光の点のように広がっていく牡丹の花。
玉が割れたあと、上空からの光跡が、枝の垂れ下がった柳のように落ちてくるものもある。
大きな音とともに、次々と夜空に花開く光の玉は、夏らしさを感じさせてくれる。
バーベキュー・フィールドの一角を占めるテーブルに集った友人一同は、その美しい光景に、ため息を漏らしながら、見入っている。
そんな彼ら彼女らのようすをうかがっていると、ふと中嶋由香と目があった。
カワタさんと話し込む前に、ここと同じ場所で、話しを聞かせてくれたクラスメートは、ニコリと笑い、大嶋と康之に声をかけ、隣のテーブルに移動をうながしたようだ。それに気付いた哲夫も、彼女たちのあとに続く。
四人が移動する中、こちらを向いた大嶋裕美子は、歩きながら片目を瞬きさせ、サムズアップのポーズで、何かを訴えてくる。
(絶対、なにか勘違いをしている……)
いつも朗らかなクラスメートの余計な気遣いに、少々頭を抱えつつ、オレは、気持ちを固め、小嶋夏海に話し掛けた。
「花火、キレイだな……」
唐突に声を掛けられたことに驚いたのか、花火に見入っていた彼女は、ハッとした表情になり、
「うん……」
と、穏やかな表情でうなずく。
そして、四人のクラスメートが席を離れたことに気付いて、
「ユカとユミコが、気を遣ったの?」
と、こちらにたずねる。
「あぁ……」
微苦笑で答えて、彼女が想っているであろうことに同意していることを示すと、友人たちの『お節介』に呆れたといった感じで、
「もう、余計なことしちゃって……しょうがないなぁ……」
そうつぶやいた小嶋夏海は、苦笑いを浮かべながら、
「それじゃ、二人の気持ちに応えて、坂井に話しを聞いてもらおうかな?」
と、こちらに意思の確認をしてきた。
彼女の言葉に、覚悟を決めて、無言でうなずく。
すると、こちらの想いを受け取ってくれたのだろう、彼女は、静かに語り始めた。
「今まで、話せなくて申し訳ないんだけど……私、夏休みが終わったら、転校することになったんだーーーーーー」
突然の報告に驚き、思わずピクリと、片方の眉が動いたのが、自分でもわかった。
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