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第4章〜⑪〜

ー/ー



初対面の、しかも、我が子と同世代の人間の唐突な質問に、目の前の中年男性は、一瞬、逡巡する表情を見せたものの、

「僕が、『強い気持ちを持って生きられているているか』は、わからないけれどーーーーーー」

そう前置きした後、ハッキリとした口調で語った。

「それは、『愛する人を見つけること』と、『人生を賭けて、没頭できるモノを見つけること』じゃないかな? 僕の場合は、妻や子どもたち、そして、経営している会社の仕事が、それに当たる。愛する人は、異性に限らず、大切にしたいと想う人ーーーーーー没頭できるモノは、仕事だけじゃなく、ナツキくんの年齢なら、趣味や大学に進学してからの研究、なんでも良いんじゃないかな?」

 その言葉に、思わず、ハッとする。
 それは、死んだ祖父さんが、自分に言い聞かせていたことと、そっくりな内容だったからだ。
 驚いた表情で、相手を見つめるオレの顔色を見て、

「いや、ゴメン! ちょっと、抽象的で難しい話しだったかな?」

と、謝るカワタさんに、ブンブンと思い切り首を振り、

「いえ、違います! 死んだ……いや、亡くなったウチの祖父さん、いえ、祖父が良く聞かせてくれていた言葉と、あまりにも似ていたので、ビックリして……」

そう答えると、今度はカワタさんが驚いた表情で、「そうなんだ……」と、つぶやいたあと、

「ナツキくんのお祖父さんと同じような考え方を出来ているのは、光栄、と言って良いのかな? 自分も少しは、物事を深く考えることが出来るようになってきたのかも知れない」

そう語ってから、

「ただ、お祖父さんが、何歳の時に、その言葉にたどりついたのかは、わからないけれど……病気のせいか、自分もトシを取ったかな……」

と、苦笑いをしながら答えた。
 その優しげな表情に、自分の気持ちも穏やかなものになる。

「あの、さっきも言いましたが……本当に貴重なお話しを聞かせてもらって、ありがとうございました。今日、聞かせてもらったお話しは、胸に刻んでおこうと思います」

 素直な気持ちで、カワタさんにお礼を言うと、

「いや、こちらこそ……自分語りに付き合ってもらって、申し訳ない、と言うか、ありがたい、と言うか……とにかく、ナツキくんと話しが出来て良かったよ。ありがとう」

と、逆に感謝の言葉をいただいた。
 恐縮しながら、その言葉を受け取ると、

「思わず、長い話しになってゴメンね。花火が打ち上げられる時間が近づいてきたみたいだ。そろそろ、バーベキューのコーナーに移動しようか?」

カワタさんは、移動を促す。

「そうですね! あの……打ち上げ花火、楽しみにしてます!」

 そう答えて、二人でバーベキュー・フィールドに戻ることにした。



 打ち上げの開始時刻が迫ってきたためか、カワタさんとともに、ロッジの建物内にある受付前のロビーから花火観賞エリアのバーベキュー・フィールドに戻ると、数十人の人たちが集まって来ていた。

「あ、お父さん! どこ行ってたの?」

と、元気な声で話す小学生くらいの男の子と、自分と同年代だろうか、高校生くらいの女子が、カワタさんに近寄って来る。

「ねぇ、聞いて! 先月プールに行った時に、一緒に遊んだお兄ちゃんが、今日も来てくれてるんだよ!」

 息子さんと思しき少年の声に、カワタさんが、笑顔で

「そうか〜! タイガ、ちゃんとお礼は言ったのか?」

そう答えると、タイガくんは、「うん!」と、うなずいたあと、

「ほら、あそこに座ってるよ!」

と、バーベキュー・フィールドの一角にあるテーブルに陣取っているグループを指差す。
 五人のメンバーが揃う、その一団は、一時間ほど前に、オレと一緒にカワタさんと挨拶を交わした面々、つまりは、友人とクラスメートの女子一同だった。
 カワタさんも、すぐに、そのことに気付いたのか、オレと顔を見合わせる。

「冗談で言ってたことが、事実だったとは……いや〜、世間は狭いね」

苦笑しながら言うカワタさんに、

「ですね……」

と、自分も同じ表情で同意する。
 そんな自分たち二人の会話に、

「岡村さんたち、とっても良い人たちだったよ!」

同年代の女子の方が割って入ってきた。

「そうか! ミユキも、ナツキくんのお友達と話していたのか?」

 カワタさんが、娘の言葉に応じると、彼女は屈託ない表情で答えた。
 そのタイミングで、自分たちの会話を遠目から見ていた康之が、こちらに向かって手を振る。

「うん! 岡村さんとメッセージアプリも交換させてもらったよ!」

「ハハハ……そうか……」

 父親として思うところがあるのだろう、オレの隣では乾いた笑いが起きている。

(ヤスユキは、あんな見た目ですが、女子に対しては純情なタイプなので……)

 心のなかで、悪友をフォローしつつ、中嶋との一件のこともあって、その友人をポジティブに評価してくれる女子がいることを、なんとなく嬉しく思えた。
 そんなことを考えていると、隣で腕時計に目をやったカワタさんが、

「そろそろ時間だな」

と、つぶやいた。

「打ち上げが始まる前に、一言、挨拶をさせてもらいたいから、行かせてもらうね。それじゃ、ナツキくん。さっきも言ったけど、今夜は楽しんで行ってね!」

 そう言い残して、カワタさんは、子どもたちを連れて、バーベキュー・フィールドの端の方に歩いて行った。

「バイバイ、お兄ちゃん!」

 タイガくんが、オレに向かって手を振り、ミユキさんは、軽く会釈をして父親について行く。
 三人が去ったのに合わせて、自分もカワタ姉弟が話題にしていたクラスメートの元に向かうことにした。


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初対面の、しかも、我が子と同世代の人間の唐突な質問に、目の前の中年男性は、一瞬、逡巡する表情を見せたものの、
「僕が、『強い気持ちを持って生きられているているか』は、わからないけれどーーーーーー」
そう前置きした後、ハッキリとした口調で語った。
「それは、『愛する人を見つけること』と、『人生を賭けて、没頭できるモノを見つけること』じゃないかな? 僕の場合は、妻や子どもたち、そして、経営している会社の仕事が、それに当たる。愛する人は、異性に限らず、大切にしたいと想う人ーーーーーー没頭できるモノは、仕事だけじゃなく、ナツキくんの年齢なら、趣味や大学に進学してからの研究、なんでも良いんじゃないかな?」
 その言葉に、思わず、ハッとする。
 それは、死んだ祖父さんが、自分に言い聞かせていたことと、そっくりな内容だったからだ。
 驚いた表情で、相手を見つめるオレの顔色を見て、
「いや、ゴメン! ちょっと、抽象的で難しい話しだったかな?」
と、謝るカワタさんに、ブンブンと思い切り首を振り、
「いえ、違います! 死んだ……いや、亡くなったウチの祖父さん、いえ、祖父が良く聞かせてくれていた言葉と、あまりにも似ていたので、ビックリして……」
そう答えると、今度はカワタさんが驚いた表情で、「そうなんだ……」と、つぶやいたあと、
「ナツキくんのお祖父さんと同じような考え方を出来ているのは、光栄、と言って良いのかな? 自分も少しは、物事を深く考えることが出来るようになってきたのかも知れない」
そう語ってから、
「ただ、お祖父さんが、何歳の時に、その言葉にたどりついたのかは、わからないけれど……病気のせいか、自分もトシを取ったかな……」
と、苦笑いをしながら答えた。
 その優しげな表情に、自分の気持ちも穏やかなものになる。
「あの、さっきも言いましたが……本当に貴重なお話しを聞かせてもらって、ありがとうございました。今日、聞かせてもらったお話しは、胸に刻んでおこうと思います」
 素直な気持ちで、カワタさんにお礼を言うと、
「いや、こちらこそ……自分語りに付き合ってもらって、申し訳ない、と言うか、ありがたい、と言うか……とにかく、ナツキくんと話しが出来て良かったよ。ありがとう」
と、逆に感謝の言葉をいただいた。
 恐縮しながら、その言葉を受け取ると、
「思わず、長い話しになってゴメンね。花火が打ち上げられる時間が近づいてきたみたいだ。そろそろ、バーベキューのコーナーに移動しようか?」
カワタさんは、移動を促す。
「そうですね! あの……打ち上げ花火、楽しみにしてます!」
 そう答えて、二人でバーベキュー・フィールドに戻ることにした。
 打ち上げの開始時刻が迫ってきたためか、カワタさんとともに、ロッジの建物内にある受付前のロビーから花火観賞エリアのバーベキュー・フィールドに戻ると、数十人の人たちが集まって来ていた。
「あ、お父さん! どこ行ってたの?」
と、元気な声で話す小学生くらいの男の子と、自分と同年代だろうか、高校生くらいの女子が、カワタさんに近寄って来る。
「ねぇ、聞いて! 先月プールに行った時に、一緒に遊んだお兄ちゃんが、今日も来てくれてるんだよ!」
 息子さんと思しき少年の声に、カワタさんが、笑顔で
「そうか〜! タイガ、ちゃんとお礼は言ったのか?」
そう答えると、タイガくんは、「うん!」と、うなずいたあと、
「ほら、あそこに座ってるよ!」
と、バーベキュー・フィールドの一角にあるテーブルに陣取っているグループを指差す。
 五人のメンバーが揃う、その一団は、一時間ほど前に、オレと一緒にカワタさんと挨拶を交わした面々、つまりは、友人とクラスメートの女子一同だった。
 カワタさんも、すぐに、そのことに気付いたのか、オレと顔を見合わせる。
「冗談で言ってたことが、事実だったとは……いや〜、世間は狭いね」
苦笑しながら言うカワタさんに、
「ですね……」
と、自分も同じ表情で同意する。
 そんな自分たち二人の会話に、
「岡村さんたち、とっても良い人たちだったよ!」
同年代の女子の方が割って入ってきた。
「そうか! ミユキも、ナツキくんのお友達と話していたのか?」
 カワタさんが、娘の言葉に応じると、彼女は屈託ない表情で答えた。
 そのタイミングで、自分たちの会話を遠目から見ていた康之が、こちらに向かって手を振る。
「うん! 岡村さんとメッセージアプリも交換させてもらったよ!」
「ハハハ……そうか……」
 父親として思うところがあるのだろう、オレの隣では乾いた笑いが起きている。
(ヤスユキは、あんな見た目ですが、女子に対しては純情なタイプなので……)
 心のなかで、悪友をフォローしつつ、中嶋との一件のこともあって、その友人をポジティブに評価してくれる女子がいることを、なんとなく嬉しく思えた。
 そんなことを考えていると、隣で腕時計に目をやったカワタさんが、
「そろそろ時間だな」
と、つぶやいた。
「打ち上げが始まる前に、一言、挨拶をさせてもらいたいから、行かせてもらうね。それじゃ、ナツキくん。さっきも言ったけど、今夜は楽しんで行ってね!」
 そう言い残して、カワタさんは、子どもたちを連れて、バーベキュー・フィールドの端の方に歩いて行った。
「バイバイ、お兄ちゃん!」
 タイガくんが、オレに向かって手を振り、ミユキさんは、軽く会釈をして父親について行く。
 三人が去ったのに合わせて、自分もカワタ姉弟が話題にしていたクラスメートの元に向かうことにした。