第4章〜⑬〜
ー/ー
「そうか……」
と、短くつぶやく。
彼女は、こちらの発した言葉を聞いて、小さく「うん」と、うなずき、
「原因はね……両親の不仲ーーーーーー離婚に向けて、二人が別居することになったから、私は、母親に着いて行くことになった」
淡々と、自らの置かれている状況を語った。
突然の報告ーーーーーーだと最初は感じたものの、今日の小嶋夏海の告白は、オレ自身が、どこかで、予感めいたものを感じていたことに、今さらながらに気付く。
・恋愛感情に対する忌避の言葉
・二人で交わした《契約書》が夏休みの期間限定であったこと
・時間停止状態で感じた想いについて、二人で話した合った時の会話の内容
彼女が、周囲の人間関係で悩んでいることや、夏休みの期間にこだわってコカリナの研究を進めようとしていたことなどを考えると、意外ーーーーーーではなく、予測できる範囲の内容とも言える。
さまざまな想いが頭を巡りながらも、
「そっか……」
と、短い答えしか返せない自分自身に腹が立つ。
(どんな内容であれ、小嶋夏海が、自ら話したいと考えたことなら、それを受け止めようーーーーーー)
そう考えてはいたが、いざ、彼女の口から具体的な話しを聞かされると、頭の中が真っ白になり、気の利いた言葉の一つも掛けられない自らの不甲斐なさを感じ、続く彼女の言葉に耳を傾けようとすると、目前の夜空には、これまで一発ずつ打ち上げられていた花火が、何発も続けて舞い上がって行った。
ド・ド・ド・ド〜〜〜〜〜〜ン!!!!!!
オープニング・シークエンスの見せ場なのだろうか、数十発の花火が連続で花開き、夜空が色とりどりの光で彩られる。
「スゴい……」
隣で夜空を見上げるクラスメートはポツリと口にして、続けて
「キレイだね」
と、つぶやいた。
その一言で、今日のもう一つの目的を思い出す。
「あっ、コレを使うのを忘れてた!!」
そう口にして、首に掛けていた『時のコカリナ』を手にして、小嶋夏海に確認を取る。
すると、彼女も、
「そう言えば、そうだったね」
と、思い出したように応じた。
小嶋夏海が、この不思議な木製細工を使って、と言っていたことは、この花火の課題をクリアすると、ミッション・コンプリートとなる。
しかし、花火のプログラムを知らされてない以上、時間を止めるタイミングを図るのは、なかなかに難しい。
いま見たような『スターマイン』と呼ばれる連続的に打ち上げられる大仕掛けの花火が、この先もプログラムにあれば良いのだが……。
「こっちでタイミングを決められない分、ベストな瞬間で時間を止めようと思ったら、今までで一番シビアな操作が求められるな」
苦笑しながら言うと、
「そこは、坂井の手腕に期待しておく。これ以上ないくらいの光景を見せてくれるんでしょ?」
彼女は、悪戯っぽい笑みで、強烈なプレッシャーを掛けてくる。
「エラい重圧だな。まぁ、期待にそえるよう、やれるだけはやってみるが……」
そう答えると、小嶋夏海は、笑顔のまま無言でうなずいた。
その反応を見ながら、
「わかったよ」
と、答えを返しておいた。
こちらの返答に、満足したように再びうなずいて、彼女は、夜空を見上げる。
連続的に打ち上げられた花火が、真っ黒な背景に光の筋を散らしたあと、空と観覧会場は、しばしの静寂に包まれた。
その静けさのなか、隣のクラスメートは、
「ねぇ、坂井はどうして、私がやりたいと言ったことに付き合ってくれたの? ハッキリ言って、私みたいな人間に時間を割くのは、面倒だったでしょ?」
虚空に目を向けたまま、こちらに問い掛けてきた。
彼女の問いに、
「今さらかよ……」
と、またも苦笑いの表情になりながら、
「そうだな……オレは、小嶋が羨ましかったのかもな……」
と、答えた。
その言葉に、彼女は、
「羨ましかった?」
と、つぶやき、意外そうなようすで、こちらを振り向き、どういうことなのか、と表情で問い掛けてくる。
「あぁ、このコカリナを授けてくれた祖父さんが、生きてた頃に、良く話してくれていたことがあるんだ……人生に大切なことは、『自分の人生を賭けて、夢中になれるモノを見つけること』だ。それは、仕事でも、研究でも、趣味でも、なんでも良い。ってーーーーーー」
そこまで話して一拍おいた。小嶋夏海は、真剣な表情で眼差しでこちらを向き、話しを聞いてくれている。
続けて話しをしても大丈夫だと判断し、思っていたこと、感じていたことを、ありのままに語った。
「『時のコカリナ』の能力を知ってから、小嶋はオレよりも熱心に、この能力を調べたり、研究しようとしてただろ? とても、楽しそうに……それに、今日の花火もそうだけど、『時間停止の発生時に、どんなことが起こるか観察しよう!』って、アイデアもどんどん出してくれたしな。それは、祖父さんの言ってた『夢中になれるモノ』なんじゃないかって思ったんだよ。祖父さんの言う『人生に大切なこと』を見つけることが出来た小嶋は羨ましいなーーーーーーそう感じていたんだと思う」
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「そうか……」
と、短くつぶやく。
彼女は、こちらの発した言葉を聞いて、小さく「うん」と、うなずき、
「原因はね……両親の不仲ーーーーーー離婚に向けて、二人が別居することになったから、私は、母親に着いて行くことになった」
淡々と、自らの置かれている状況を語った。
突然の報告ーーーーーーだと最初は感じたものの、今日の小嶋夏海の告白は、オレ自身が、どこかで、予感めいたものを感じていたことに、今さらながらに気付く。
・恋愛感情に対する忌避の言葉
・二人で交わした《契約書》が夏休みの期間限定であったこと
・時間停止状態で感じた想いについて、二人で話した合った時の会話の内容
彼女が、周囲の人間関係で悩んでいることや、夏休みの期間にこだわってコカリナの研究を進めようとしていたことなどを考えると、意外ーーーーーーではなく、予測できる範囲の内容とも言える。
さまざまな想いが頭を巡りながらも、
「そっか……」
と、短い答えしか返せない自分自身に腹が立つ。
(どんな内容であれ、小嶋夏海が、自ら話したいと考えたことなら、それを受け止めようーーーーーー)
そう考えてはいたが、いざ、彼女の口から具体的な話しを聞かされると、頭の中が真っ白になり、気の利いた言葉の一つも掛けられない自らの不甲斐なさを感じ、続く彼女の言葉に耳を傾けようとすると、目前の夜空には、これまで一発ずつ打ち上げられていた花火が、何発も続けて舞い上がって行った。
ド・ド・ド・ド〜〜〜〜〜〜ン!!!!!!
オープニング・シークエンスの見せ場なのだろうか、数十発の花火が連続で花開き、夜空が色とりどりの光で彩られる。
「スゴい……」
隣で夜空を見上げるクラスメートはポツリと口にして、続けて
「キレイだね」
と、つぶやいた。
その一言で、今日のもう一つの目的を思い出す。
「あっ、コレを使うのを忘れてた!!」
そう口にして、首に掛けていた『時のコカリナ』を手にして、小嶋夏海に確認を取る。
すると、彼女も、
「そう言えば、そうだったね」
と、思い出したように応じた。
小嶋夏海が、この不思議な木製細工を使って、《やってみたい》と言っていたことは、この花火の課題をクリアすると、ミッション・コンプリートとなる。
しかし、花火のプログラムを知らされてない以上、時間を止めるタイミングを図るのは、なかなかに難しい。
いま見たような『スターマイン』と呼ばれる連続的に打ち上げられる大仕掛けの花火が、この先もプログラムにあれば良いのだが……。
「こっちでタイミングを決められない分、ベストな瞬間で時間を止めようと思ったら、今までで一番シビアな操作が求められるな」
苦笑しながら言うと、
「そこは、坂井の手腕に期待しておく。《《これ以上ないくらい》》の光景を見せてくれるんでしょ?」
彼女は、悪戯っぽい笑みで、強烈なプレッシャーを掛けてくる。
「エラい重圧だな。まぁ、期待にそえるよう、やれるだけはやってみるが……」
そう答えると、小嶋夏海は、笑顔のまま無言でうなずいた。
その反応を見ながら、
「わかったよ」
と、答えを返しておいた。
こちらの返答に、満足したように再びうなずいて、彼女は、夜空を見上げる。
連続的に打ち上げられた花火が、真っ黒な背景に光の筋を散らしたあと、空と観覧会場は、しばしの静寂に包まれた。
その静けさのなか、隣のクラスメートは、
「ねぇ、坂井はどうして、私がやりたいと言ったことに付き合ってくれたの? ハッキリ言って、私みたいな人間に時間を割くのは、面倒だったでしょ?」
虚空に目を向けたまま、こちらに問い掛けてきた。
彼女の問いに、
「今さらかよ……」
と、またも苦笑いの表情になりながら、
「そうだな……オレは、小嶋が羨ましかったのかもな……」
と、答えた。
その言葉に、彼女は、
「羨ましかった?」
と、つぶやき、意外そうなようすで、こちらを振り向き、どういうことなのか、と表情で問い掛けてくる。
「あぁ、このコカリナを授けてくれた祖父さんが、生きてた頃に、良く話してくれていたことがあるんだ……人生に大切なことは、『自分の人生を賭けて、夢中になれるモノを見つけること』だ。それは、仕事でも、研究でも、趣味でも、なんでも良い。ってーーーーーー」
そこまで話して一拍おいた。小嶋夏海は、真剣な表情で眼差しでこちらを向き、話しを聞いてくれている。
続けて話しをしても大丈夫だと判断し、思っていたこと、感じていたことを、ありのままに語った。
「『時のコカリナ』の能力を知ってから、小嶋はオレよりも熱心に、この能力を調べたり、研究しようとしてただろ? とても、楽しそうに……それに、今日の花火もそうだけど、『時間停止の発生時に、どんなことが起こるか観察しよう!』って、アイデアもどんどん出してくれたしな。それは、祖父さんの言ってた『夢中になれるモノ』なんじゃないかって思ったんだよ。祖父さんの言う『人生に大切なこと』を見つけることが出来た小嶋は羨ましいなーーーーーーそう感じていたんだと思う」