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第4章〜⑧〜

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受付前のロビーでの挨拶が終わったあと、花火の観賞会場となっているバーベキュー・フィールドに移動すると、太陽は水平線に沈み、「ブルー・アワー」と呼ばれる陽の名残りに、辺りが濃い青色に染まる光景が拡がっていた。
 この時間帯を表す「黄昏時=誰そ彼(誰ですかあなたは)とたずねる時間帯」だという説明を小学生の時に大ヒットしたアニメ映画で観た気がするのだが……。
 確かに、周囲の照明がないと、人の顔の識別がつかない程度の明るさで、一時間もせずに打ち上げられる予定の花火への期待と、夏の終わりを感じさせる儚さが同居する不思議な気持ちにさせられる。
 バーベキューが行えるベンチに腰掛け、周囲に目を向けると、康之、哲夫、大嶋の三人は、来たるべき時間を待ちわびているのか、ソワソワとしながらも、娯楽の少なかった夏休みの報告をしあっている。
 小嶋夏海は、その輪から少し離れて何やら物思いに耽っているようだ。
 同級生たちのようすを観察していると、

「坂井、ちょっとイイ?」

と、声を掛けてくる人影があった。
 周囲が薄暗くなりつつあるなか、照明の明かりに照らされて確認できた声の主は、受付で、カワタさんにお礼を述べる小嶋夏海のようすを気に掛けていた中嶋由香だった。
 予想外の人物から声を掛けられたことに少し驚き、

「お、おう!? ナニか用か?」

声を上ずらせて返答すると、中嶋は、あらためてたずねてきた。

「いきなり話しかけてゴメンね。ちょっと、二人で話せない?」

(いったい、何の話だろう?)

と、不思議に思いながらも、「ん?あぁ……」と答えると、他の四人と距離を取るためか、オレの座っている隣のテーブルを指さして指定してきた。
 彼女と二人で移動し、席に着く。こちらが腰を下ろすと、

「あらためて、今日は誘ってくれて、ありがとう。それと、ユミコから聞いたんだけど、今日のことで、色々と気をつかってくれたんだね」

 華やかな見た目に反した、おっとりとした口調で、同級生の女子は話し始めた。
 友人も絡む色恋沙汰に関わる話しなので、どう答えたものか悩んだ挙げ句、

「あっ、いや、オレは、そんなに大したことは……」

少々挙動の怪しい口調で言葉を返すと、「ううん」と、中嶋は首を横に振り、

「プールに行ったことも、結果的に、坂井たち男子を自分たちのことに巻き込むことになっちゃったしね……」

と、申し訳なさそうに語る。
 その言葉に、

(アイツのことだけは、少し気に掛けてやってほしいが……)

というワードを飲み込みつつ、

「いや、まあ、プールでは、オレたち三人は楽しませてもらった部分が多いしな……」

当の中嶋のことを憎からず想っている康之のことは気になるが、やはり、そこは当人たちでケリをつけてもらう問題だろう、と考え、そう返答する。

「うん……そう言ってもらえると助かるけど、気を使ってない?」

 気が楽になったのか、少し微笑みながら、問い掛ける同級生女子に、

「いやいや、そんなことは……」

と、自分でも、まるで説得力のないとわかる言葉を返す。
 すると、彼女は、さらに可笑しそうに、

「そっか、そっか……じゃあ、私の方から勝手にお節介を焼かせてくれない?」

唐突な申し出をする。

(お節介ってなんのことだ?)

と言う疑問が顔に出たのか、こちらの考えを推しはかったように言葉を続けて、

「お節介ってのは、ナツミと坂井のこと。単刀直入に聞くけど、ぶっちゃっけ、二人は付き合ってんの?」

時速一六◯km/hを超える火の玉ストレートの質問が、歯に衣着せない勢いでぶつけられる。

「え!? そ、それは……」

 ただでさえ、挙動不審だった言動に加え、視線をそらしてしまったことで、すべてを察したのか、今度は、大げさに「はぁ〜」と、タメ息をついて、

「やっぱり、夏休み前からのナツミの態度は、『恋人のフリ』ムーブだったか……」

と、つぶやいたあと、

「でも、坂井は、気になってるんでしょ?ナツミのこと」

初球の剛速球に続けて、今度は、胸元をえぐるようなカミソリ・シュートを投げ込んできた。あまりに厳しいインコース攻めに、手が出せず

「あ、いや……」

と、言葉にならない言葉を返すと、

「で、実際、どうするつもりなの?」

もっとも、触れられたくないことをアウトコース低めに投じ、言葉に詰まる打者をアッサリと打ち取った。
 その直後、矢継ぎ早の質問を受け、時が止まったかのように固まるこちらの状態に気付いたのか、彼女は、

「あっ、ゴメン……ちょっと、先を急ぎすぎた」

と、謝罪の言葉を口にする。


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受付前のロビーでの挨拶が終わったあと、花火の観賞会場となっているバーベキュー・フィールドに移動すると、太陽は水平線に沈み、「ブルー・アワー」と呼ばれる陽の名残りに、辺りが濃い青色に染まる光景が拡がっていた。
 この時間帯を表す「黄昏時=誰そ彼(誰ですかあなたは)とたずねる時間帯」だという説明を小学生の時に大ヒットしたアニメ映画で観た気がするのだが……。
 確かに、周囲の照明がないと、人の顔の識別がつかない程度の明るさで、一時間もせずに打ち上げられる予定の花火への期待と、夏の終わりを感じさせる儚さが同居する不思議な気持ちにさせられる。
 バーベキューが行えるベンチに腰掛け、周囲に目を向けると、康之、哲夫、大嶋の三人は、来たるべき時間を待ちわびているのか、ソワソワとしながらも、娯楽の少なかった夏休みの報告をしあっている。
 小嶋夏海は、その輪から少し離れて何やら物思いに耽っているようだ。
 同級生たちのようすを観察していると、
「坂井、ちょっとイイ?」
と、声を掛けてくる人影があった。
 周囲が薄暗くなりつつあるなか、照明の明かりに照らされて確認できた声の主は、受付で、カワタさんにお礼を述べる小嶋夏海のようすを気に掛けていた中嶋由香だった。
 予想外の人物から声を掛けられたことに少し驚き、
「お、おう!? ナニか用か?」
声を上ずらせて返答すると、中嶋は、あらためてたずねてきた。
「いきなり話しかけてゴメンね。ちょっと、二人で話せない?」
(いったい、何の話だろう?)
と、不思議に思いながらも、「ん?あぁ……」と答えると、他の四人と距離を取るためか、オレの座っている隣のテーブルを指さして指定してきた。
 彼女と二人で移動し、席に着く。こちらが腰を下ろすと、
「あらためて、今日は誘ってくれて、ありがとう。それと、ユミコから聞いたんだけど、今日のことで、色々と気をつかってくれたんだね」
 華やかな見た目に反した、おっとりとした口調で、同級生の女子は話し始めた。
 友人も絡む色恋沙汰に関わる話しなので、どう答えたものか悩んだ挙げ句、
「あっ、いや、オレは、そんなに大したことは……」
少々挙動の怪しい口調で言葉を返すと、「ううん」と、中嶋は首を横に振り、
「プールに行ったことも、結果的に、坂井たち男子を自分たちのことに巻き込むことになっちゃったしね……」
と、申し訳なさそうに語る。
 その言葉に、
(アイツのことだけは、少し気に掛けてやってほしいが……)
というワードを飲み込みつつ、
「いや、まあ、プールでは、オレたち三人は楽しませてもらった部分が多いしな……」
当の中嶋のことを憎からず想っている康之のことは気になるが、やはり、そこは当人たちでケリをつけてもらう問題だろう、と考え、そう返答する。
「うん……そう言ってもらえると助かるけど、気を使ってない?」
 気が楽になったのか、少し微笑みながら、問い掛ける同級生女子に、
「いやいや、そんなことは……」
と、自分でも、まるで説得力のないとわかる言葉を返す。
 すると、彼女は、さらに可笑しそうに、
「そっか、そっか……じゃあ、私の方から勝手にお節介を焼かせてくれない?」
唐突な申し出をする。
(お節介ってなんのことだ?)
と言う疑問が顔に出たのか、こちらの考えを推しはかったように言葉を続けて、
「お節介ってのは、ナツミと坂井のこと。単刀直入に聞くけど、ぶっちゃっけ、二人は付き合ってんの?」
時速一六◯km/hを超える火の玉ストレートの質問が、歯に衣着せない勢いでぶつけられる。
「え!? そ、それは……」
 ただでさえ、挙動不審だった言動に加え、視線をそらしてしまったことで、すべてを察したのか、今度は、大げさに「はぁ〜」と、タメ息をついて、
「やっぱり、夏休み前からのナツミの態度は、『恋人のフリ』ムーブだったか……」
と、つぶやいたあと、
「でも、坂井は、気になってるんでしょ?ナツミのこと」
初球の剛速球に続けて、今度は、胸元をえぐるようなカミソリ・シュートを投げ込んできた。あまりに厳しいインコース攻めに、手が出せず
「あ、いや……」
と、言葉にならない言葉を返すと、
「で、実際、どうするつもりなの?」
もっとも、触れられたくないことをアウトコース低めに投じ、言葉に詰まる打者をアッサリと打ち取った。
 その直後、矢継ぎ早の質問を受け、時が止まったかのように固まるこちらの状態に気付いたのか、彼女は、
「あっ、ゴメン……ちょっと、先を急ぎすぎた」
と、謝罪の言葉を口にする。