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第3章〜⑰〜

ー/ー



周囲の喧騒の中、事故に遭いかけた少年だけが、一人キョトンとして、生け垣の段差に座り込んでいる。
 まぁ、当の本人からすると、気づかぬうちに、まるで、瞬間移動でもしたかのように道路の真ん中を走っていた自転車から、車道の脇にある生け垣のそばに自分の身体が動いていたのだから、無理もないだろう。
 そんなことを考えながら、当事者の少年を横目で見つつ、ようやく呼吸が整ってきたことを確認して立ち上がったオレに、母親と思しき女性が、

「あなたが、この子を助けてくれたんですね! 本当に、なんとお礼を言ったらいいか……」

目に涙を浮かべ、言葉をつまらせながら、声を掛けてきた。

「ほら、あなたもお礼を言いなさい」

 相変わらず、呆然としている少年も、そう促されて、ポツリと、つぶやくように言った。

「お兄ちゃん、ありがとう……」

そばにいた自動車のドライバーからも、

「ホント、事故にならなくて良かった。ボクの方からも礼を言うよ。ありがとう」

と、声が掛かる。

「いえいえ……」

 曖昧に返事をすると、ようやくドライバーの存在に気付いたのか、

「タカシくん、ちゃんと運転手さんにも謝りなさい!」

と、母親らしき女性が息子を諭す。

「道路に飛び出してしまって、ゴメンナサイ」

 飛び出し行為に対しては、悪いことをしたという自覚があったのだろうか、少年は、今度はすぐにドライバーに向かって、謝罪した。

「いや、このお兄さんのおかげで、何事もなくて良かったよ。これからは、急に車道に飛び出さないようにね」

 事故を回避できた安堵感からか、ドライバーは優しく少年を諭す。
 交通事故を防げたこともそうだが、何よりドライバーが優しそうな人で良かった、とこちらも胸を撫で下ろしていると、

「今回は、事なきを得たけど、やっぱりアクシデントに備えて、ドラレコは付けとかないとだな〜」

というドライバーの一人言が聞こえ、一瞬、肝を冷やした。
 今日のように、事故にならなかった場合は、ドライブレコーダーの映像を警察や保険会社が確認することはないのかも知れないが、万が一、少年を車道脇に動かした瞬間の前後の場面が映像に残っていたら、大変なことになったかも知れない。
 おそらく、残された映像には、車道の真ん中を自転車で走る少年が一瞬にして消え去り、次の瞬間には、車道の隅で座り込んでいる少年と、どこからか現れた男子高校生が映り込んでいるハズだ。
 動画サイトなどの配信者が編集時に活用しているジャンプカットの様に、カメラに映る登場人物がスムーズに話しているかのごとく視聴できる演出なら問題ないだろうが、この場合、映像内の人物が一瞬にして移動したり、現れたりするため、記録映像としては、はなはだ不自然に映るだろう。
 そんな想像を頭から振り払うように、

「なにもなければ、これで……」

と、すぐに、この場を離れようとするオレに、車道の脇の自転車を起こした親子は、再度、頭を下げてきた。

「本当に、ありがとうございました」

「いえいえ、これからは気をつけてください」

と、曖昧に笑いながら、オレは、放置してしまっていた自転車と小嶋夏海の元に戻ったのだがーーーーーー。


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周囲の喧騒の中、事故に遭いかけた少年だけが、一人キョトンとして、生け垣の段差に座り込んでいる。
 まぁ、当の本人からすると、気づかぬうちに、まるで、瞬間移動でもしたかのように道路の真ん中を走っていた自転車から、車道の脇にある生け垣のそばに自分の身体が動いていたのだから、無理もないだろう。
 そんなことを考えながら、当事者の少年を横目で見つつ、ようやく呼吸が整ってきたことを確認して立ち上がったオレに、母親と思しき女性が、
「あなたが、この子を助けてくれたんですね! 本当に、なんとお礼を言ったらいいか……」
目に涙を浮かべ、言葉をつまらせながら、声を掛けてきた。
「ほら、あなたもお礼を言いなさい」
 相変わらず、呆然としている少年も、そう促されて、ポツリと、つぶやくように言った。
「お兄ちゃん、ありがとう……」
そばにいた自動車のドライバーからも、
「ホント、事故にならなくて良かった。ボクの方からも礼を言うよ。ありがとう」
と、声が掛かる。
「いえいえ……」
 曖昧に返事をすると、ようやくドライバーの存在に気付いたのか、
「タカシくん、ちゃんと運転手さんにも謝りなさい!」
と、母親らしき女性が息子を諭す。
「道路に飛び出してしまって、ゴメンナサイ」
 飛び出し行為に対しては、悪いことをしたという自覚があったのだろうか、少年は、今度はすぐにドライバーに向かって、謝罪した。
「いや、このお兄さんのおかげで、何事もなくて良かったよ。これからは、急に車道に飛び出さないようにね」
 事故を回避できた安堵感からか、ドライバーは優しく少年を諭す。
 交通事故を防げたこともそうだが、何よりドライバーが優しそうな人で良かった、とこちらも胸を撫で下ろしていると、
「今回は、事なきを得たけど、やっぱりアクシデントに備えて、ドラレコは付けとかないとだな〜」
というドライバーの一人言が聞こえ、一瞬、肝を冷やした。
 今日のように、事故にならなかった場合は、ドライブレコーダーの映像を警察や保険会社が確認することはないのかも知れないが、万が一、少年を車道脇に動かした瞬間の前後の場面が映像に残っていたら、大変なことになったかも知れない。
 おそらく、残された映像には、車道の真ん中を自転車で走る少年が一瞬にして消え去り、次の瞬間には、車道の隅で座り込んでいる少年と、どこからか現れた男子高校生が映り込んでいるハズだ。
 動画サイトなどの配信者が編集時に活用しているジャンプカットの様に、カメラに映る登場人物がスムーズに話しているかのごとく視聴できる演出なら問題ないだろうが、この場合、映像内の人物が一瞬にして移動したり、現れたりするため、記録映像としては、はなはだ不自然に映るだろう。
 そんな想像を頭から振り払うように、
「なにもなければ、これで……」
と、すぐに、この場を離れようとするオレに、車道の脇の自転車を起こした親子は、再度、頭を下げてきた。
「本当に、ありがとうございました」
「いえいえ、これからは気をつけてください」
と、曖昧に笑いながら、オレは、放置してしまっていた自転車と小嶋夏海の元に戻ったのだがーーーーーー。