…だから命を賭けてでも娘を守りたかった。
「でも無事に生まれて特に問題もなく大人になれたわ。」
高校時代。少し古い母校。
それが俺とみゆきが出逢った場所。
部活が同じだった。
美術部だ。俺は幽霊部員だったけど、彼女は熱心に活動に勤しんでいた。
ある日部活に来ないかと誘われたのだ。
いつまでも幽霊では勿体無いと。
明るい彼女。元気な彼女。努力家な彼女。
そして…笑顔が素敵な彼女。
何度も頼み込まれてつい、行くと言ってしまった。その笑顔で首を縦に振るみゆきに惚れてしまったから。
後にみゆきに聞いたが、好きな人だから誘ったそうだ。
付き合って、色々経験した。
思い出もいっぱい作った。
何年かして結婚をした。
「…みゆきは、いつだって笑ってましたよね。」
義母は…いや、幸子さんは涙を流す。
「あなたはみゆきをきちんと見ていたんですね。」
ああ、後悔だ。私の娘が選んだ人はとても良い人ではないか。
娘が素性も知らぬ男に取られてしまう。そう知った時に…いや、今日…葬儀中にだって沢山言ったいじわる。
その一つ一つを思い出し胸が痛くなる。
ああ、後悔だ。私の娘が選んだ椛さんは、娘の死後だってこんなに想えるとても良い人ではないか。
私は彼に嫉妬していたのだ。
そして己の娘にも。
みゆきを奪い去ってしまう事に。
私と違って良い人に出逢えた事に。
ああ、後悔だ。
今からでも、許されるでしょうか。
いいえ、この子たちの結婚を心から祝って喜べなかった私にそんな価値はないわよね。
それでも。
「ごめんなさい…。」
謝らなくてはいけない。
「あなたはとても良い人だわ。最愛の娘が選んだ私の自慢の息子よ。」
そして…。おれいを。
「ありがとう。みゆきを選んでくれて。みゆきの相手が椛さんで良かった。」
泣き崩れる私にそっとハンカチを差し出す椛さん。
ハンカチを受け取った時にそっと触れた指はとても暖かかった。
12月の寒い冬空。
優しく頬を撫でる風はとても冷たい。
けれど私に触れた指はずっと暖かかった。