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俺達と女の子達がパーティーに一部参加して囲碁とダンスの魅力と女の子の秘密を認知する話(5/5)

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 俺とゆうも負けじと漫才をしていると、ユキちゃんが話を進めた。 「私に権限があるわけじゃないから、ハッキリとは分からないけど……多分、男の人は加わらない、そんな気がする。まあ、それはそれとして、まだ話したいことがあるの。その前に、ちょっと待ってて」  ユキちゃんは、部屋に戻ると、問題なく歩けるようになってから、今までに集めた宝石箱を両手に持ち帰り、居間のテーブルに置いた。 「お父さん、これで、私が住む屋敷を建てて! 話に挙がった同僚に設計してもらって」 「な……お前、こんなに……しかも、俺に屋敷をって……何が何だか……」  父親は驚き、状況を理解できずに戸惑っていた。ユキちゃんが宝石箱から取り出した宝石は十個。イリスちゃんによると、ちゃんと鑑定すれば、裕福な男爵が住む屋敷レベルのものは建てられる金額になるそうだ。と言うより、『勇運』でそういう調整にしたのだろう。 「ユキ、どういうことなのか説明してくれる?」  母親の言葉に、ユキちゃんは椅子に座って、説明を始めた。 「私と大切な人達が住む屋敷を建てたい。メイド含めて、最低三十人住める屋敷。これをセフ村近くに建てる。もちろん、関係者と交渉してから。屋敷の外にも家を建てて住んでもらう。その都度、建てていくと集落になる。  まずは、最低百人の小さな村を興すことを目標にする。私が村長。もちろん、セフ村に迷惑がかからないようにする。魔法使い村ではないけど、お父さんお母さんがいた魔法使いの村のような集落になると思う。ある条件を満たさないと定住できない村。その条件はまだ詳しく言えない。  私が集めた宝石をちゃんとした鑑定の下で売れば、十分足りる建築費用と人件費用になる。当然、設計費用も含んでる。イリスちゃんとアースリーちゃんにこのことは言ってあって、私の代わりに彼女達が進めてくれることになってる。大工の同僚が来たら、彼女達に紹介してほしい。希望はまとめてあるから。  お父さん、早速だけど力を貸して! 男の人は住まないから! ……多分」  父親にとって大事なことを最後に付け加えて、さらにボソッと付け加えたユキちゃん。かわいい娘の頼み事が、想像の遥か上を行くような壮大な事で、父親は困惑していた。 「う……お、お前、どう思う……?」  父親が母親に助けを求めた。 「え……? い、いや……お、男の人が住まないのなら……」 「そんなことはどうでもいいだろ!」 「やったー! じゃあ、旅に出るのも屋敷を建てるのもオッケーってことで。じゃあ、お願いね。お父さん」  さっきと真逆のことを言った二人に、ユキちゃんは、すかさず話を割り込ませた。そういうことになるのか?  両親はやれやれという感じで、天井を仰ぎながら椅子の背にもたれた。  父親は、深呼吸のあと、ユキちゃんの両手を上から握って、真剣な表情をした。 「いいか、ユキ。絶対無事に帰ってくること。傷一つないように。それと、お前の言う通り、詳しくは聞かない、だが……絶対に幸せになれ! そして、そこに住む人達を幸せにしろ! 俺からは以上! あとは任せておけ!」 「うん!」  勢いに任せて立ち上がった父親を見上げて、ユキちゃんは元気良く返事をした。 「今のユキを見ていると、昔のユキを思い出して、何だかすごく嬉しくなっちゃう。子どものユキと歩けなかった時のユキ、成長したユキ、どれもかわいい私達の娘。親としては不安なこともあるけど、さらに成長した『将来のユキ』を楽しみにしてる。  そして、シキのこと。私達に、あなた達が笑い合っている姿を見せてほしい。私達家族が笑い合っている姿を、村のみんなに見てほしい。何かあったら相談してね。それと、ちょっと待っててね……」  母親はそう言うと、寝室に入り、すぐにまた戻ってきた。 「この宝石も使って。昔、ユキが拾ってきた宝石。普通の魔法書を買う分が、私達からの魔法書になって、余ってるから」  彼女の両手には、二個ほどの宝石が収まっている。  そのまま、ずっと保管していたのか。まるで、娘の旅立ちの、お互いに全てを吐露したこの日のために残しておいたかのようだ。全ては娘のために、自分達のことなど後回しで。まさに、親の愛だ。 「うん! ありがとう、お父さん、お母さん。私が言ったこと、二人が言ったこと、必ず全部実現させるから」  ユキちゃんの心強い宣言が、俺達を含めたその場の全員を安心させてくれた。追加の宝石の分を断るのは野暮と見て、それ以上の親孝行で返すつもりだろう。 「よーし! 明日は、村の奴らに完全回復したユキのお披露目と挨拶をして、夜は広場で盛大な壮行会をするぞ! 全員参加させてやる!」  父親は、腕っぷしを自慢するかのようなポーズをとり、張り切っていた。 「村長とアースリーちゃんは、明日帰ってくるよね? 間に合いそう?」  母親がユキちゃんに聞いたが、父親が割って入った。 「お、二人は外に行ってるのか。じゃあ、帰ってくるまで終わらなければいいって話だろ? 野郎共は当然、朝までだ」 「はぁ……嬉しさと酔った勢いで、若い子に余計なことペラペラ喋んないでよ? ただでさえ、みんな、久しぶりのそういう会なんだから」  両親のやり取りを見て、ユキちゃんはニコニコ笑っていた。良い家族だ。  それから、三人で明日の予定を立てたり、準備の方法について話し合っていた。 「家族……か。お兄ちゃんは寂しくなったりしないの? 辺境伯一家と、この家族を見て。あたしはウチの家族を思い出して寂しい。もうどうしようもないけど……。  でも、こういう家族を見られて嬉しい。女の子を幸せにすると、その家族も幸せになる。そしたら、その家族のことが大好きな人達も幸せになる。こう見えて、あたし達って色んな人達を幸せにしてるのかもね」  話の後半はポジティブなことを言っているにもかかわらず、いつもより暗めの声で話すゆう。 「俺も同じさ。もちろん寂しくなるが、同時に、みんなの笑顔が俺達を元気にしてくれる。クリスが言ってくれたように、俺達が人間だったら実現できなかったことかもしれないんだ。今の俺達だからできた。そういう自信にもなるから、俺達はこの先も女の子を幸せにし続ける。今が幸せなら、さらに幸せにする。  例えば、ここにシキちゃんを連れ帰ることでな。それに、寂しくなることは悪いことじゃない。ちゃんと元気になれるのであれば、どんどん寂しくなればいい。大切な人達のことを忘れないように」 「クリスに言った時みたいだね。発想の転換でしょ? まあ、それじゃあ、そういうふうに考えますか。でも、元気になるには、他にどうすればいいのさ」 「俺が元気にしてやるよ。持っていけ! 俺のありったけの元気をーー! うおおおお! も、持っていかれるぅぅぅ! 待て、それ以上は! う、うわああああ!」 「うざああああ!」  ユキちゃんの父親に負けないぐらいの元気を、ゆうに分け与えられたようで、俺は満足した。  辺境伯邸の俺達の部屋では、装飾品を外して、ドレスを脱いだシンシアとアースリーちゃん、リーディアちゃんが、歯磨きを済ませ、下着姿のまま、ベッドに腰掛けて談笑していた。 「そろそろじゃないかしら。多分、全員帰宅したと思うけど」  リーディアちゃんが、下着姿が外から見えないような角度で窓の外を覗いた。ほどなくして、屋敷の門番をしていたクリスが部屋に戻ってきた。すると、リーディアちゃんが腰掛けていたベッドから立ち上がり、彼女に近づいて声をかけた。 「クリス、お疲れ様」 「お疲れ様です。どうしたんですか、そんな姿のまま」  クリスは外套を脱いだ。 「あなたのおかげで、無事にパーティーを終えられたんですもの。あなたにも楽しんでもらわなくちゃ。あなたがゲストで主役、私達が主催のパーティーを。この前、シンシアと二人で開いちゃったみたいだけど、それ以上のものにするから」  リーディアちゃんの合図に、シンシアとアースリーちゃんもベッドから立ち上がった。 「も、もしかして……」  クリスは気恥ずかしそうに、しかし期待に胸を膨らませている様子だった。 「まずは、みんなでお風呂に入りましょうか。脱がせてあげるわね」  リーディアちゃん達がクリスの服を順番に全て脱がせると、俺達は丁度良いサイズまで縮小化して、歩く時に邪魔にならないように、クリスの身体に巻き付いた。 「あ……」  クリスの身体を少しだけ強く絞め上げると、彼女のかわいい反応が聞こえた。  リーディアちゃんが彼女の手を引っ張り、風呂場に足を進める。簡易的に仕切られた脱衣所で、他の三人も全裸になり、脱いだ下着を入り口近くの籠に入れて、リーディアちゃんがその隣に用意されていた石鹸を持つと、さらに先へ進んだ。  部屋と同じぐらいの広さがある浴場の湯船には、お湯はすでに張られており、その脇には低い木製の椅子がいくつか置かれている。初日にも思ったことだが、二階に浴場があるのは、準備も含めて相当手間がかかっているはずだ。  そこで、クリスを他の三人が取り囲んだ。正面にはシンシア、向かって左側にアースリーちゃん、右側にリーディアちゃんがいる。俺達はクリスから一度離れた。リーディアちゃん達が石鹸でクリスの身体を洗うためだ。多分、泡立ちは現代ほど良くないと思う。  リーディアちゃん、アースリーちゃん、シンシアの順に石鹸を回し、自らの手と身体の前面に塗りたくると、クリスの身体を手で優しく撫で回したり、彼女を立たせて、身体を擦り付けたりした。正面のシンシアは、両胸でクリスの胸を念入りに洗っている。 「はぁ……はぁ……あっ……」  時折、胸の先端同士が触れて、声が抑えられなくなる両者。それを誤魔化すように、シンシアからクリスにキスをした。舌同士も絡まり、お互いにその隅々まで触れようと、激しくダンスしている。  次に、シンシアはクリスの歯や歯茎の隅々まで舌を這わせ、まるで口腔内まで綺麗にしようとしているほど時間をかけていた。最初こそクリスは驚いていたが、すぐに目がとろんとなって、彼女達の全力の奉仕に身を任せるようになっていた。 「うわー、めっちゃ気持ち良さそう。マッサージも気持ち良いと思うけど、やっぱり違うよね。でも、歯とか歯茎は、流石に恥ずかしくなっちゃうよ」 「恋人同士や夫婦でも、中々できないだろうな。自然にそれができるのは、身分などは当然気にせず、彼女達の関係がそれ以上の別次元にあるということだ」  俺とゆうが会話していると、囲んでいた三人が、時計回りに役割を交代して、アースリーが正面になった。再度、石鹸を塗り、同様の手順を踏む。次は、リーディアちゃん。  その場のみんなは、あえて無言で、彼女達の荒めの吐息と、敏感な部分が触れた時に発せられる小さい声、ぬちゃぬちゃと身体と舌が絡み合う音だけが、浴場に広がっていた。  全員一巡したところで、俺達が縮小化を解いたあと、彼女達にそれぞれ巻き付き、吸着率を駆使して、改めて全身を綺麗にしていく。俺達がいれば、身体については風呂入らずで、最初からやっても良かったのだが、雰囲気作りは重要だ。  髪については、リーディアちゃんがクリスとシンシアを、シンシアがアースリーちゃんを、アースリーちゃんがリーディアちゃんを順に担当した。  頭の先から足の先まで綺麗になったところで、髪が浸からないように、布でまとめ上げ、全員が静かに湯船に入った。歓談タイムだ。 「シュウ様は浮けるんですか?」  俺達は、『短浮力』スキルをまだ取得していないので、湯船には完全に浸からないようにしていた。 「分からないそうだ。試すのもリスクなので、していないとのことだ」 「ねぇ、クーちゃん。シュウちゃんが気にしてたんだけど、仮に敵を溺れさせるとしたら、どういう魔法があるのか、教えてほしいって」  クリスの正面にいたアースリーちゃんが、質問してくれた。 「水場が近くにある場合を除けば、おそらく、シュウ様が想定している通りです。対象の周りを大量の水で覆うか、顔を固定した上で、口に水を直接流し込む。  どちらも、近距離から中距離で可能ですが、中距離は、通常の私でも二十メートルの距離が限界です。それ以上になると、前者は水の形を保てなくなったり、地面を掴んでの匍匐前進や、水中で泳がれたりした時に追いかけられなくなり、後者は水の勢いがなくなります。  ちなみに、対象を覆う水のさらに外側に、中から出られないような壁を張ることは、通常できません。たとえ壁の形が単純でも、魔力の同時操作が難しすぎて、水の形を保てないからです。  あ、同時操作自体ができないわけではなく、『この場合は』難しいという意味です。水が常時変形しますからね。箱を作ってから水の順だと、それらは真っ先に破壊されるでしょう。  もし、破壊されなかったら、魔法使い相手の場合は勝利確定です。相手は溺れるか息を止めていなければならず、魔法を詠唱できないので。  したがって、戦闘では常に水魔法を注意している必要があります。二人以上が別々に魔法を使えば、同時操作ではないので簡単に実現可能です。一人の場合でも、作ったあとに魔力を通す必要がない土の壁を張る方法はありますが、水でふやけて普通に壊されるので、効果は薄いです。  それ以外の材質の壁は、いわゆる『物質生成魔法』でしか作れないので、実質不可能です。『物質生成魔法』は夢の魔法とされていて、この世の誰も使用できません……が、ユキさんならできるかもしれませんね」  俺が気になっていたことに、クリスは丁寧に答えてくれた。  ユキちゃんは歩行補助具を生み出そうと考えたことがあるから、『物質生成魔法』を使えるんだろうな。また一つ、魔法研究者の理論を破壊したのか。  俺は、教えてくれたお礼として、クリスの頬を舐めた。 「あとでお父様に聞けばいいことなんだけど、結局、怪しい人や催眠魔法にかかった人は来なかったってことでいいんでしょ?」  リーディアちゃんがクリスに確認した。 「はい。シンシアさんを監視してる二人組は、相変わらず遠くにいましたが。時々、私が門の外に出て、魔力感知魔法を当てると、ビクッと反応するのが、地味に面白かったです。  シンシアさんと私が城に向かう時は、本当にシンシアさんを監視しているのかを確認します。ある程度、街から離れて、私達に付いて来ないようなら、別の監視対象がいることになるので、次の町から辺境伯宛に手紙で知らせます」 「はぁ……そんな時がもう近づいてるのね……みんなと……離れたくない……アーちゃんとは明日お別れなんて……嫌だ……」  リーディアちゃんは大きくため息をついて、別れを惜しんでいた。泣いてはいないものの、その表情はすぐにも崩れそうだ。 「リーちゃん、私もだよ……。でも、このパーティーでは泣いて良かったんだっけ?」 「ううん、ダメ。涙を流すとしても、幸福感で泣くこと。そうだよね、まだ時間はある。まだまだ思い出を作ろう!」 「うん!」  全員が頷き、風呂から一斉に出て体を拭いたあと、ベッドに向かった。  俺達の夜のパーティーは始まったばかりだ。



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 俺とゆうも負けじと漫才をしていると、ユキちゃんが話を進めた。 「私に権限があるわけじゃないから、ハッキリとは分からないけど……多分、男の人は加わらない、そんな気がする。まあ、それはそれとして、まだ話したいことがあるの。その前に、ちょっと待ってて」  ユキちゃんは、部屋に戻ると、問題なく歩けるようになってから、今までに集めた宝石箱を両手に持ち帰り、居間のテーブルに置いた。 「お父さん、これで、私が住む屋敷を建てて! 話に挙がった同僚に設計してもらって」 「な……お前、こんなに……しかも、俺に屋敷をって……何が何だか……」  父親は驚き、状況を理解できずに戸惑っていた。ユキちゃんが宝石箱から取り出した宝石は十個。イリスちゃんによると、ちゃんと鑑定すれば、裕福な男爵が住む屋敷レベルのものは建てられる金額になるそうだ。と言うより、『勇運』でそういう調整にしたのだろう。 「ユキ、どういうことなのか説明してくれる?」  母親の言葉に、ユキちゃんは椅子に座って、説明を始めた。 「私と大切な人達が住む屋敷を建てたい。メイド含めて、最低三十人住める屋敷。これをセフ村近くに建てる。もちろん、関係者と交渉してから。屋敷の外にも家を建てて住んでもらう。その都度、建てていくと集落になる。  まずは、最低百人の小さな村を興すことを目標にする。私が村長。もちろん、セフ村に迷惑がかからないようにする。魔法使い村ではないけど、お父さんお母さんがいた魔法使いの村のような集落になると思う。ある条件を満たさないと定住できない村。その条件はまだ詳しく言えない。  私が集めた宝石をちゃんとした鑑定の下で売れば、十分足りる建築費用と人件費用になる。当然、設計費用も含んでる。イリスちゃんとアースリーちゃんにこのことは言ってあって、私の代わりに彼女達が進めてくれることになってる。大工の同僚が来たら、彼女達に紹介してほしい。希望はまとめてあるから。  お父さん、早速だけど力を貸して! 男の人は住まないから! ……多分」  父親にとって大事なことを最後に付け加えて、さらにボソッと付け加えたユキちゃん。かわいい娘の頼み事が、想像の遥か上を行くような壮大な事で、父親は困惑していた。 「う……お、お前、どう思う……?」  父親が母親に助けを求めた。 「え……? い、いや……お、男の人が住まないのなら……」 「そんなことはどうでもいいだろ!」 「やったー! じゃあ、旅に出るのも屋敷を建てるのもオッケーってことで。じゃあ、お願いね。お父さん」  さっきと真逆のことを言った二人に、ユキちゃんは、すかさず話を割り込ませた。そういうことになるのか?  両親はやれやれという感じで、天井を仰ぎながら椅子の背にもたれた。  父親は、深呼吸のあと、ユキちゃんの両手を上から握って、真剣な表情をした。 「いいか、ユキ。絶対無事に帰ってくること。傷一つないように。それと、お前の言う通り、詳しくは聞かない、だが……絶対に幸せになれ! そして、そこに住む人達を幸せにしろ! 俺からは以上! あとは任せておけ!」 「うん!」  勢いに任せて立ち上がった父親を見上げて、ユキちゃんは元気良く返事をした。 「今のユキを見ていると、昔のユキを思い出して、何だかすごく嬉しくなっちゃう。子どものユキと歩けなかった時のユキ、成長したユキ、どれもかわいい私達の娘。親としては不安なこともあるけど、さらに成長した『将来のユキ』を楽しみにしてる。  そして、シキのこと。私達に、あなた達が笑い合っている姿を見せてほしい。私達家族が笑い合っている姿を、村のみんなに見てほしい。何かあったら相談してね。それと、ちょっと待っててね……」  母親はそう言うと、寝室に入り、すぐにまた戻ってきた。 「この宝石も使って。昔、ユキが拾ってきた宝石。普通の魔法書を買う分が、私達からの魔法書になって、余ってるから」  彼女の両手には、二個ほどの宝石が収まっている。  そのまま、ずっと保管していたのか。まるで、娘の旅立ちの、お互いに全てを吐露したこの日のために残しておいたかのようだ。全ては娘のために、自分達のことなど後回しで。まさに、親の愛だ。 「うん! ありがとう、お父さん、お母さん。私が言ったこと、二人が言ったこと、必ず全部実現させるから」  ユキちゃんの心強い宣言が、俺達を含めたその場の全員を安心させてくれた。追加の宝石の分を断るのは野暮と見て、それ以上の親孝行で返すつもりだろう。 「よーし! 明日は、村の奴らに完全回復したユキのお披露目と挨拶をして、夜は広場で盛大な壮行会をするぞ! 全員参加させてやる!」  父親は、腕っぷしを自慢するかのようなポーズをとり、張り切っていた。 「村長とアースリーちゃんは、明日帰ってくるよね? 間に合いそう?」  母親がユキちゃんに聞いたが、父親が割って入った。 「お、二人は外に行ってるのか。じゃあ、帰ってくるまで終わらなければいいって話だろ? 野郎共は当然、朝までだ」 「はぁ……嬉しさと酔った勢いで、若い子に余計なことペラペラ喋んないでよ? ただでさえ、みんな、久しぶりのそういう会なんだから」  両親のやり取りを見て、ユキちゃんはニコニコ笑っていた。良い家族だ。  それから、三人で明日の予定を立てたり、準備の方法について話し合っていた。 「家族……か。お兄ちゃんは寂しくなったりしないの? 辺境伯一家と、この家族を見て。あたしはウチの家族を思い出して寂しい。もうどうしようもないけど……。  でも、こういう家族を見られて嬉しい。女の子を幸せにすると、その家族も幸せになる。そしたら、その家族のことが大好きな人達も幸せになる。こう見えて、あたし達って色んな人達を幸せにしてるのかもね」  話の後半はポジティブなことを言っているにもかかわらず、いつもより暗めの声で話すゆう。 「俺も同じさ。もちろん寂しくなるが、同時に、みんなの笑顔が俺達を元気にしてくれる。クリスが言ってくれたように、俺達が人間だったら実現できなかったことかもしれないんだ。今の俺達だからできた。そういう自信にもなるから、俺達はこの先も女の子を幸せにし続ける。今が幸せなら、さらに幸せにする。  例えば、ここにシキちゃんを連れ帰ることでな。それに、寂しくなることは悪いことじゃない。ちゃんと元気になれるのであれば、どんどん寂しくなればいい。大切な人達のことを忘れないように」 「クリスに言った時みたいだね。発想の転換でしょ? まあ、それじゃあ、そういうふうに考えますか。でも、元気になるには、他にどうすればいいのさ」 「俺が元気にしてやるよ。持っていけ! 俺のありったけの元気をーー! うおおおお! も、持っていかれるぅぅぅ! 待て、それ以上は! う、うわああああ!」 「うざああああ!」  ユキちゃんの父親に負けないぐらいの元気を、ゆうに分け与えられたようで、俺は満足した。  辺境伯邸の俺達の部屋では、装飾品を外して、ドレスを脱いだシンシアとアースリーちゃん、リーディアちゃんが、歯磨きを済ませ、下着姿のまま、ベッドに腰掛けて談笑していた。 「そろそろじゃないかしら。多分、全員帰宅したと思うけど」  リーディアちゃんが、下着姿が外から見えないような角度で窓の外を覗いた。ほどなくして、屋敷の門番をしていたクリスが部屋に戻ってきた。すると、リーディアちゃんが腰掛けていたベッドから立ち上がり、彼女に近づいて声をかけた。 「クリス、お疲れ様」 「お疲れ様です。どうしたんですか、そんな姿のまま」  クリスは外套を脱いだ。 「あなたのおかげで、無事にパーティーを終えられたんですもの。あなたにも楽しんでもらわなくちゃ。あなたがゲストで主役、私達が主催のパーティーを。この前、シンシアと二人で開いちゃったみたいだけど、それ以上のものにするから」  リーディアちゃんの合図に、シンシアとアースリーちゃんもベッドから立ち上がった。 「も、もしかして……」  クリスは気恥ずかしそうに、しかし期待に胸を膨らませている様子だった。 「まずは、みんなでお風呂に入りましょうか。脱がせてあげるわね」  リーディアちゃん達がクリスの服を順番に全て脱がせると、俺達は丁度良いサイズまで縮小化して、歩く時に邪魔にならないように、クリスの身体に巻き付いた。 「あ……」  クリスの身体を少しだけ強く絞め上げると、彼女のかわいい反応が聞こえた。  リーディアちゃんが彼女の手を引っ張り、風呂場に足を進める。簡易的に仕切られた脱衣所で、他の三人も全裸になり、脱いだ下着を入り口近くの籠に入れて、リーディアちゃんがその隣に用意されていた石鹸を持つと、さらに先へ進んだ。  部屋と同じぐらいの広さがある浴場の湯船には、お湯はすでに張られており、その脇には低い木製の椅子がいくつか置かれている。初日にも思ったことだが、二階に浴場があるのは、準備も含めて相当手間がかかっているはずだ。  そこで、クリスを他の三人が取り囲んだ。正面にはシンシア、向かって左側にアースリーちゃん、右側にリーディアちゃんがいる。俺達はクリスから一度離れた。リーディアちゃん達が石鹸でクリスの身体を洗うためだ。多分、泡立ちは現代ほど良くないと思う。  リーディアちゃん、アースリーちゃん、シンシアの順に石鹸を回し、自らの手と身体の前面に塗りたくると、クリスの身体を手で優しく撫で回したり、彼女を立たせて、身体を擦り付けたりした。正面のシンシアは、両胸でクリスの胸を念入りに洗っている。 「はぁ……はぁ……あっ……」  時折、胸の先端同士が触れて、声が抑えられなくなる両者。それを誤魔化すように、シンシアからクリスにキスをした。舌同士も絡まり、お互いにその隅々まで触れようと、激しくダンスしている。  次に、シンシアはクリスの歯や歯茎の隅々まで舌を這わせ、まるで口腔内まで綺麗にしようとしているほど時間をかけていた。最初こそクリスは驚いていたが、すぐに目がとろんとなって、彼女達の全力の奉仕に身を任せるようになっていた。 「うわー、めっちゃ気持ち良さそう。マッサージも気持ち良いと思うけど、やっぱり違うよね。でも、歯とか歯茎は、流石に恥ずかしくなっちゃうよ」 「恋人同士や夫婦でも、中々できないだろうな。自然にそれができるのは、身分などは当然気にせず、彼女達の関係がそれ以上の別次元にあるということだ」  俺とゆうが会話していると、囲んでいた三人が、時計回りに役割を交代して、アースリーが正面になった。再度、石鹸を塗り、同様の手順を踏む。次は、リーディアちゃん。  その場のみんなは、あえて無言で、彼女達の荒めの吐息と、敏感な部分が触れた時に発せられる小さい声、ぬちゃぬちゃと身体と舌が絡み合う音だけが、浴場に広がっていた。  全員一巡したところで、俺達が縮小化を解いたあと、彼女達にそれぞれ巻き付き、吸着率を駆使して、改めて全身を綺麗にしていく。俺達がいれば、身体については風呂入らずで、最初からやっても良かったのだが、雰囲気作りは重要だ。  髪については、リーディアちゃんがクリスとシンシアを、シンシアがアースリーちゃんを、アースリーちゃんがリーディアちゃんを順に担当した。  頭の先から足の先まで綺麗になったところで、髪が浸からないように、布でまとめ上げ、全員が静かに湯船に入った。歓談タイムだ。 「シュウ様は浮けるんですか?」  俺達は、『短浮力』スキルをまだ取得していないので、湯船には完全に浸からないようにしていた。 「分からないそうだ。試すのもリスクなので、していないとのことだ」 「ねぇ、クーちゃん。シュウちゃんが気にしてたんだけど、仮に敵を溺れさせるとしたら、どういう魔法があるのか、教えてほしいって」  クリスの正面にいたアースリーちゃんが、質問してくれた。 「水場が近くにある場合を除けば、おそらく、シュウ様が想定している通りです。対象の周りを大量の水で覆うか、顔を固定した上で、口に水を直接流し込む。  どちらも、近距離から中距離で可能ですが、中距離は、通常の私でも二十メートルの距離が限界です。それ以上になると、前者は水の形を保てなくなったり、地面を掴んでの匍匐前進や、水中で泳がれたりした時に追いかけられなくなり、後者は水の勢いがなくなります。  ちなみに、対象を覆う水のさらに外側に、中から出られないような壁を張ることは、通常できません。たとえ壁の形が単純でも、魔力の同時操作が難しすぎて、水の形を保てないからです。  あ、同時操作自体ができないわけではなく、『この場合は』難しいという意味です。水が常時変形しますからね。箱を作ってから水の順だと、それらは真っ先に破壊されるでしょう。  もし、破壊されなかったら、魔法使い相手の場合は勝利確定です。相手は溺れるか息を止めていなければならず、魔法を詠唱できないので。  したがって、戦闘では常に水魔法を注意している必要があります。二人以上が別々に魔法を使えば、同時操作ではないので簡単に実現可能です。一人の場合でも、作ったあとに魔力を通す必要がない土の壁を張る方法はありますが、水でふやけて普通に壊されるので、効果は薄いです。  それ以外の材質の壁は、いわゆる『物質生成魔法』でしか作れないので、実質不可能です。『物質生成魔法』は夢の魔法とされていて、この世の誰も使用できません……が、ユキさんならできるかもしれませんね」  俺が気になっていたことに、クリスは丁寧に答えてくれた。  ユキちゃんは歩行補助具を生み出そうと考えたことがあるから、『物質生成魔法』を使えるんだろうな。また一つ、魔法研究者の理論を破壊したのか。  俺は、教えてくれたお礼として、クリスの頬を舐めた。 「あとでお父様に聞けばいいことなんだけど、結局、怪しい人や催眠魔法にかかった人は来なかったってことでいいんでしょ?」  リーディアちゃんがクリスに確認した。 「はい。シンシアさんを監視してる二人組は、相変わらず遠くにいましたが。時々、私が門の外に出て、魔力感知魔法を当てると、ビクッと反応するのが、地味に面白かったです。  シンシアさんと私が城に向かう時は、本当にシンシアさんを監視しているのかを確認します。ある程度、街から離れて、私達に付いて来ないようなら、別の監視対象がいることになるので、次の町から辺境伯宛に手紙で知らせます」 「はぁ……そんな時がもう近づいてるのね……みんなと……離れたくない……アーちゃんとは明日お別れなんて……嫌だ……」  リーディアちゃんは大きくため息をついて、別れを惜しんでいた。泣いてはいないものの、その表情はすぐにも崩れそうだ。 「リーちゃん、私もだよ……。でも、このパーティーでは泣いて良かったんだっけ?」 「ううん、ダメ。涙を流すとしても、幸福感で泣くこと。そうだよね、まだ時間はある。まだまだ思い出を作ろう!」 「うん!」  全員が頷き、風呂から一斉に出て体を拭いたあと、ベッドに向かった。  俺達の夜のパーティーは始まったばかりだ。



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