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12◆After story◆

ー/ー



「こんにちはー!」
 怜の家の玄関で俺は元気に挨拶した。
 怜とは受験先が別れてしまったせいで、遊ぶ機会がめっきり減った。新しい生活に加え、バイトもやり出して生活サイクルが合わなくなってしまったのだ。
 ただ今日は、怜から近況を聞いて会った方がいいなと思い立ち久々に顔を出した。
「陽ちゃんいらっしゃい」
 怜のお母さんは、いつも通り小型犬のコロロを抱いて出迎える。コロロにも挨拶しようと思って触ろうとしたら、グルグルと唸られた。全然慣れてくれない警戒心の強い犬だ。
「学校別れたのに、また遊びに来てくれてありがとうね」
「またたまに来ますね!これシュークリームです」
 俺は怜の家に来る前に、駅前まで行って買ってきた土産を渡した。
「あら、美味しそう。後でみんなで食べましょうね」
「怜ちゃん上ですか?」
「部屋にいるから上がってどうぞ」
 お母さんはそのままリビングに移動して行った。
「おじゃましまーす」
 俺は遠慮なく2階への階段に向かった。
 ドアをノックして怜の部屋に入ると、怜がふてぶてしい顔で俺を見ていた。
「なんで陽介まで、俺をちゃん付けで呼んでるんだよ」
「え?聞いてたの、怜ちゃん?」
「はぁ……」
 俺がわざとらしくおどけて言うと、呆れた様子でそっぽを向いた。
「ごめんて。っていうか、振られたって言うからもっと落ち込んでるかと思ったぞ」
「落ち込んでるよ」
 怜はクッションで顔を塞ぎ動かなくなった。 
「だからさぁ、なんでこう年上に弱いわけ?」
「部活の先輩なんだからしょうがないだろ」
「気まずくないの?」
「卒業して離れちゃったし」
「せめてさ、同じ同性愛者にしとけよ。こうなるのわかってるじゃん」
「……そんな簡単なら苦労しない」
 大人しそうなくせに結構頑固というか、こだわりが強くて、俺の言うことなんか聞きやしない。  
「もー泣くな。いい加減そろそろ、変なやつに引っかかるなよ」
 怜の背中をあやすように優しくさすった。
「泣いてないんだけど。説教みたいなこというな」
 そう言って、クッションから顔をあげると俺の手を払い除ける。
「で、ちなみにどんなやつだったのよ。写真とかないの?」
 野次馬心で聞いてみる。
 怜はおもむろにスマホを操作し、それを俺に渡してきた。画面には写真部の先輩なのに、スポーツマン系の爽やかイケメンが写っている。
「怜の趣味ってわかりやすいよな……」
 怜が昔惚れていた、サッカー部の部長が思い浮かんだ。
「どういう意味?」
 怜は眼光鋭く俺を睨みつけると、勢いよく俺からスマホを取り上げた。 
「まあとにかく、しばらくは部活に打ち込むことだな」
 俺がまだ気に食わないのか、まだ不満げな態度を取っている。仕方ないので別の話題を振った。
「そういえば、うちの写真部の後輩ですごい気が合うやつがいてさ」
「陽介みたいなのがもう1人いるのか…?」
「なんで嫌そうな顔すんだよ。で、今度そいつとあと何人かで撮影会しに行くんだけど、お前も来る?」
「……行かない。俺がいたら変だろ」
「別に平気なんだけど、行きたくないならいいや」
 気晴らしになるかと思ったが、無用なお節介だったようだ。
 怜は失恋の度にこんなに落ち込むくせに、わりとすぐ惚れるから心配で仕方がない。早くいい人が見つかるといいのだが、それまで道のりは遠そうだ。
「ごめん……ありがと」
 そっぽを向いていた怜がボソリと呟いて、視線だけこちらに向けた。
 相変わらずだなと思ったが、こうやって自分から辛い話をしてくれるようになったのは大進歩かもしれない。
「陽介は毎回俺の事ばかり心配してるけど、自分はどうなんだよ」
「俺?俺は忙しいからさあ」
「そう言って彼女ほったらかして、自分勝手にしてるからすぐ別れるんだろ」
 怜は冷ややかに言ってくる。確かに、俺は怜ほど誰かと付き合いたいとかはないから、つい自分優先になってしまう。だからすぐに愛想つかされて別れてしまっていた。そもそも告白も、されるけど自分からしたことはなかったから仕方がないのかもしれない。
「俺はたまに怜と遊ぶぐらいが気楽で丁度いいのかもな」
「俺より陽介の方が心配だと思うよ」
「んなことないだろ」
 何故かいつもの調子で、平行線になってしまった。
 まあ、未だに軽口叩きあって仲良く過ごせてるなら、これからも良い関係でいられるだろう。
 いくつになっても俺は友達だ。
 それだけはずっと変わらない。


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「こんにちはー!」
 怜の家の玄関で俺は元気に挨拶した。
 怜とは受験先が別れてしまったせいで、遊ぶ機会がめっきり減った。新しい生活に加え、バイトもやり出して生活サイクルが合わなくなってしまったのだ。
 ただ今日は、怜から近況を聞いて会った方がいいなと思い立ち久々に顔を出した。
「陽ちゃんいらっしゃい」
 怜のお母さんは、いつも通り小型犬のコロロを抱いて出迎える。コロロにも挨拶しようと思って触ろうとしたら、グルグルと唸られた。全然慣れてくれない警戒心の強い犬だ。
「学校別れたのに、また遊びに来てくれてありがとうね」
「またたまに来ますね!これシュークリームです」
 俺は怜の家に来る前に、駅前まで行って買ってきた土産を渡した。
「あら、美味しそう。後でみんなで食べましょうね」
「怜ちゃん上ですか?」
「部屋にいるから上がってどうぞ」
 お母さんはそのままリビングに移動して行った。
「おじゃましまーす」
 俺は遠慮なく2階への階段に向かった。
 ドアをノックして怜の部屋に入ると、怜がふてぶてしい顔で俺を見ていた。
「なんで陽介まで、俺をちゃん付けで呼んでるんだよ」
「え?聞いてたの、怜ちゃん?」
「はぁ……」
 俺がわざとらしくおどけて言うと、呆れた様子でそっぽを向いた。
「ごめんて。っていうか、振られたって言うからもっと落ち込んでるかと思ったぞ」
「落ち込んでるよ」
 怜はクッションで顔を塞ぎ動かなくなった。 
「だからさぁ、なんでこう年上に弱いわけ?」
「部活の先輩なんだからしょうがないだろ」
「気まずくないの?」
「卒業して離れちゃったし」
「せめてさ、同じ同性愛者にしとけよ。こうなるのわかってるじゃん」
「……そんな簡単なら苦労しない」
 大人しそうなくせに結構頑固というか、こだわりが強くて、俺の言うことなんか聞きやしない。  
「もー泣くな。いい加減そろそろ、変なやつに引っかかるなよ」
 怜の背中をあやすように優しくさすった。
「泣いてないんだけど。説教みたいなこというな」
 そう言って、クッションから顔をあげると俺の手を払い除ける。
「で、ちなみにどんなやつだったのよ。写真とかないの?」
 野次馬心で聞いてみる。
 怜はおもむろにスマホを操作し、それを俺に渡してきた。画面には写真部の先輩なのに、スポーツマン系の爽やかイケメンが写っている。
「怜の趣味ってわかりやすいよな……」
 怜が昔惚れていた、サッカー部の部長が思い浮かんだ。
「どういう意味?」
 怜は眼光鋭く俺を睨みつけると、勢いよく俺からスマホを取り上げた。 
「まあとにかく、しばらくは部活に打ち込むことだな」
 俺がまだ気に食わないのか、まだ不満げな態度を取っている。仕方ないので別の話題を振った。
「そういえば、うちの写真部の後輩ですごい気が合うやつがいてさ」
「陽介みたいなのがもう1人いるのか…?」
「なんで嫌そうな顔すんだよ。で、今度そいつとあと何人かで撮影会しに行くんだけど、お前も来る?」
「……行かない。俺がいたら変だろ」
「別に平気なんだけど、行きたくないならいいや」
 気晴らしになるかと思ったが、無用なお節介だったようだ。
 怜は失恋の度にこんなに落ち込むくせに、わりとすぐ惚れるから心配で仕方がない。早くいい人が見つかるといいのだが、それまで道のりは遠そうだ。
「ごめん……ありがと」
 そっぽを向いていた怜がボソリと呟いて、視線だけこちらに向けた。
 相変わらずだなと思ったが、こうやって自分から辛い話をしてくれるようになったのは大進歩かもしれない。
「陽介は毎回俺の事ばかり心配してるけど、自分はどうなんだよ」
「俺?俺は忙しいからさあ」
「そう言って彼女ほったらかして、自分勝手にしてるからすぐ別れるんだろ」
 怜は冷ややかに言ってくる。確かに、俺は怜ほど誰かと付き合いたいとかはないから、つい自分優先になってしまう。だからすぐに愛想つかされて別れてしまっていた。そもそも告白も、されるけど自分からしたことはなかったから仕方がないのかもしれない。
「俺はたまに怜と遊ぶぐらいが気楽で丁度いいのかもな」
「俺より陽介の方が心配だと思うよ」
「んなことないだろ」
 何故かいつもの調子で、平行線になってしまった。
 まあ、未だに軽口叩きあって仲良く過ごせてるなら、これからも良い関係でいられるだろう。
 いくつになっても俺は友達だ。
 それだけはずっと変わらない。