8なんで?
ー/ー 月曜の朝。俺は通学路の十字路に立っていた。日曜日、怜が中村部長とどうなったか気になったからだ。かと言って、教室で聞くのも誰かに聞かれたら困るし。そんなわけで怜を待っている。
5分ほど立っていると、怜が家から出てきた。そして俺に気づき走ってくる。
「何してるの?」
「昨日どうなったかと思って」
怜は何度か瞬きすると、目を伏せ顔を赤らめた。
「え?なに?」
どういう反応なのかいまいち分からない。怜は躊躇いがちに、なにか言いかけ口を開け閉めする。
「付き合ってくれるって……」
「はあ!?」
思わず大きな声が出た。部長の感じからして、そんな展開になるとは思ってもみなかった。
「陽介、あんまり大きい声出さないでよ。いいから行こう」
怜が慌てて周囲を確認すると、俺の背中を押して歩かされる。
「告白したってこと?」
俺の言葉に怜の肩が一瞬跳ね、にやけそうなのを我慢しているような顔で見上げてきた。目が合うと、すっとそらされる。
「映画の後に海沿いを歩いたんだけど、夕方だったし人気がなくて……」
最後に何かボソボソ独り言のように喋っていたが、急に怜が押し黙った。
そして小声で「ごめん」と呟いた。
「何が?」
「陽介からすると気持ち悪いかもって……」
「そんなこと思わないけど、やっぱそうなの?」
さすがに直球で「男が好きってこと?」とは聞けなかったが、怜は無言で頷く。
「陽介にはちゃんと言っといた方がいいかなって……嫌なら離れてもいいよ」
怜は俺の顔を見ずに、両手でカバンをにぎりこんで歩いている。
「だから、嫌なんて言ってないだろ。そうじゃなくて、心配してんだよ」
「心配って?」
怜は本当に分からないようで、困った顔をしてきた。それもそうか。部長は元々怜のことを弟ぐらいにしか思ってなかった……下手したら女子扱いしてるかもなんて俺しか知らないわけだし。
「もういいよ。上手くいったならよかったな!」
「うん。…早くまた会いたいなぁ」
怜の浮かれた様子にため息が出た。
俺は放課後、急いで部活に向かった。早めにグラウンドに来たので人はまだ少ない。周囲に誰もいないとを確認すると、ゴールポストのそばで靴紐を結んでいる中村部長に話しかける。
「部長、怜と付き合うってマジなんすか?」
「なんだよ急に」
俺にいきなり後ろから質問されて部長は飛び退いた。
「怜のこと好きなんですか?」
「え?」
俺がストレートに言いすぎたのか、部長は急に目を泳がせて周囲を見回した。
「いや、好きっていうか……一緒にいたいって言うから、まぁいいかなって」
「そんなんでOKしたんですか?」
「あんな言い方されたらそうなるだろ……」
「断れますよ、普通」
まさかこの頼りがいがあると思っていた、中村部長がそんな適当な理由でOKするなんて信じられなかった。安易に怜が傷つきそうな展開なのが許せない。
「普通ねぇ、そうか……加藤はよっぽどモテんのか」
部長が俺のことを冷めた目で睨んできた。
「え!いや…」
「お前には関係ないだろ?ほっとけよ」
部長は面倒くさそうに言った。その態度に何となくムカついた。
「たとえ部長でも、友達傷つけたら許さないすからね」
「一年のくせにお前は生意気だな」
そういうと立ち上がり、先輩は俺の腹を軽く殴った。相変わらず痛い。
部長は本当に怜と付き合うってどういうことか、わかってるんだろうか?怜の方は浮かれてるし、先が思いやられる。
中村部長と怜の関係を知って一週間、美化委員の集まりの日がやってきた。こっそり二人の様子を伺う。
「先輩これ見てください」
なにかあったのか、怜が部長の服の裾を掴んで軽く引っ張っていた。部長もそれに従い視線を合わせる。
二人とも肩が触れそうな距離まで近づいていた。なんとなく落ち着かなくて、俺はそのまま目を逸らした。
かわりに津田先輩の方に視線を向けるが、普通に他の委員と話していて、二人のことはまるで見えていないようだった。そもそも津田先輩は知らなそうだし、当たり前だが付き合ってることは誰にも言っていないようだ。
「中村、ちょっといいか?」
部長は他の三年に呼ばれてその場をはなれようとした。怜もそれについて行こうとしたが制止される。
「北河原は作業続けといて」
そう言い残して、部長は怜を置いて行ってしまった。怜は仕方なく残りの花壇の手入れをはじめた。
だが、部長はなかなか戻って来ない。
結局ひとりで片付けまでさせられていて、少し可哀想に思えた。
それから数日して、昼休みに怜と人気のない中庭の花壇に来た。俺は木に寄りかかりながら、座って花を見る怜に問いかける。
「なあ、もうすぐ中間テストだけど部長とはどうなの?」
「テスト勉強もあるし会わないよ」
怜は抑揚のない声で淡々と答えた。
「じゃあ夜に通話とか?」
「しないよ」
「なんも変わってないじゃん」
俺の言い方が気にさわったのか、怜は少しむっとしたような感じで俺を見上げる。
「テスト終わったら会ってくれるって言ってたよ」
「それなら良かったな」
怜の気迫に押される。付き合ってるって、もっと何か変わるもんだと思ってた。まあ、怜の予定が空いてるなら遊べるしいいか。
「予定ないなら一緒に勉強しようぜ」
「いいよ」
怜の方も予定が埋まって嬉しかったのか、土日は怜の家で一緒に勉強して過ごした。あまり会話はないけれど、誰かと一緒にやると不思議と集中できた。
そうしているうちに、あっという間にテスト期間に入る。
一人でやる時よりサボらなかったおかげか、俺はなんとか80点台と普段のサボりを取り返すことができた。まあ上出来だろう。
一方怜の方は平均60点台で、結果を見たあと少しだけ黙り込んでいたのが気になった。俺達は揃うと遊んでばかりだから、これからもたまには一緒に勉強するのもいいかもしれない。
教室でお互いのテストの点を見せあって一喜一憂していると、西岡が通り過ぎ、横目で一瞬こちらのテストを覗き見て「低っ」と小声で言ってきた。俺が睨み返すと、顔を逸らして去って行った。
「大丈夫だよ」
言葉とは裏腹に怜は俺から顔を背けた。
「気にすんな」
まったく、西岡は余計なことしか言わないな。
「次はもっと点取れるように一緒に頑張ろうぜ」
励ましに意味があったかは分からないが、怜は黙ってうなずいた。
5分ほど立っていると、怜が家から出てきた。そして俺に気づき走ってくる。
「何してるの?」
「昨日どうなったかと思って」
怜は何度か瞬きすると、目を伏せ顔を赤らめた。
「え?なに?」
どういう反応なのかいまいち分からない。怜は躊躇いがちに、なにか言いかけ口を開け閉めする。
「付き合ってくれるって……」
「はあ!?」
思わず大きな声が出た。部長の感じからして、そんな展開になるとは思ってもみなかった。
「陽介、あんまり大きい声出さないでよ。いいから行こう」
怜が慌てて周囲を確認すると、俺の背中を押して歩かされる。
「告白したってこと?」
俺の言葉に怜の肩が一瞬跳ね、にやけそうなのを我慢しているような顔で見上げてきた。目が合うと、すっとそらされる。
「映画の後に海沿いを歩いたんだけど、夕方だったし人気がなくて……」
最後に何かボソボソ独り言のように喋っていたが、急に怜が押し黙った。
そして小声で「ごめん」と呟いた。
「何が?」
「陽介からすると気持ち悪いかもって……」
「そんなこと思わないけど、やっぱそうなの?」
さすがに直球で「男が好きってこと?」とは聞けなかったが、怜は無言で頷く。
「陽介にはちゃんと言っといた方がいいかなって……嫌なら離れてもいいよ」
怜は俺の顔を見ずに、両手でカバンをにぎりこんで歩いている。
「だから、嫌なんて言ってないだろ。そうじゃなくて、心配してんだよ」
「心配って?」
怜は本当に分からないようで、困った顔をしてきた。それもそうか。部長は元々怜のことを弟ぐらいにしか思ってなかった……下手したら女子扱いしてるかもなんて俺しか知らないわけだし。
「もういいよ。上手くいったならよかったな!」
「うん。…早くまた会いたいなぁ」
怜の浮かれた様子にため息が出た。
俺は放課後、急いで部活に向かった。早めにグラウンドに来たので人はまだ少ない。周囲に誰もいないとを確認すると、ゴールポストのそばで靴紐を結んでいる中村部長に話しかける。
「部長、怜と付き合うってマジなんすか?」
「なんだよ急に」
俺にいきなり後ろから質問されて部長は飛び退いた。
「怜のこと好きなんですか?」
「え?」
俺がストレートに言いすぎたのか、部長は急に目を泳がせて周囲を見回した。
「いや、好きっていうか……一緒にいたいって言うから、まぁいいかなって」
「そんなんでOKしたんですか?」
「あんな言い方されたらそうなるだろ……」
「断れますよ、普通」
まさかこの頼りがいがあると思っていた、中村部長がそんな適当な理由でOKするなんて信じられなかった。安易に怜が傷つきそうな展開なのが許せない。
「普通ねぇ、そうか……加藤はよっぽどモテんのか」
部長が俺のことを冷めた目で睨んできた。
「え!いや…」
「お前には関係ないだろ?ほっとけよ」
部長は面倒くさそうに言った。その態度に何となくムカついた。
「たとえ部長でも、友達傷つけたら許さないすからね」
「一年のくせにお前は生意気だな」
そういうと立ち上がり、先輩は俺の腹を軽く殴った。相変わらず痛い。
部長は本当に怜と付き合うってどういうことか、わかってるんだろうか?怜の方は浮かれてるし、先が思いやられる。
中村部長と怜の関係を知って一週間、美化委員の集まりの日がやってきた。こっそり二人の様子を伺う。
「先輩これ見てください」
なにかあったのか、怜が部長の服の裾を掴んで軽く引っ張っていた。部長もそれに従い視線を合わせる。
二人とも肩が触れそうな距離まで近づいていた。なんとなく落ち着かなくて、俺はそのまま目を逸らした。
かわりに津田先輩の方に視線を向けるが、普通に他の委員と話していて、二人のことはまるで見えていないようだった。そもそも津田先輩は知らなそうだし、当たり前だが付き合ってることは誰にも言っていないようだ。
「中村、ちょっといいか?」
部長は他の三年に呼ばれてその場をはなれようとした。怜もそれについて行こうとしたが制止される。
「北河原は作業続けといて」
そう言い残して、部長は怜を置いて行ってしまった。怜は仕方なく残りの花壇の手入れをはじめた。
だが、部長はなかなか戻って来ない。
結局ひとりで片付けまでさせられていて、少し可哀想に思えた。
それから数日して、昼休みに怜と人気のない中庭の花壇に来た。俺は木に寄りかかりながら、座って花を見る怜に問いかける。
「なあ、もうすぐ中間テストだけど部長とはどうなの?」
「テスト勉強もあるし会わないよ」
怜は抑揚のない声で淡々と答えた。
「じゃあ夜に通話とか?」
「しないよ」
「なんも変わってないじゃん」
俺の言い方が気にさわったのか、怜は少しむっとしたような感じで俺を見上げる。
「テスト終わったら会ってくれるって言ってたよ」
「それなら良かったな」
怜の気迫に押される。付き合ってるって、もっと何か変わるもんだと思ってた。まあ、怜の予定が空いてるなら遊べるしいいか。
「予定ないなら一緒に勉強しようぜ」
「いいよ」
怜の方も予定が埋まって嬉しかったのか、土日は怜の家で一緒に勉強して過ごした。あまり会話はないけれど、誰かと一緒にやると不思議と集中できた。
そうしているうちに、あっという間にテスト期間に入る。
一人でやる時よりサボらなかったおかげか、俺はなんとか80点台と普段のサボりを取り返すことができた。まあ上出来だろう。
一方怜の方は平均60点台で、結果を見たあと少しだけ黙り込んでいたのが気になった。俺達は揃うと遊んでばかりだから、これからもたまには一緒に勉強するのもいいかもしれない。
教室でお互いのテストの点を見せあって一喜一憂していると、西岡が通り過ぎ、横目で一瞬こちらのテストを覗き見て「低っ」と小声で言ってきた。俺が睨み返すと、顔を逸らして去って行った。
「大丈夫だよ」
言葉とは裏腹に怜は俺から顔を背けた。
「気にすんな」
まったく、西岡は余計なことしか言わないな。
「次はもっと点取れるように一緒に頑張ろうぜ」
励ましに意味があったかは分からないが、怜は黙ってうなずいた。
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