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7がんばる

ー/ー



 窓から差し込む朝日が眩しい。
 普段ならまだ寝ている時間だ。今日は小テストがあると言うのに、うっかり昨日はノートを忘れてしまった。仕方ないので朝勉でなんとかしようと早起きしてみる。
 今ぐらいの時間だと、ちょうど美化委員の活動中だ。怜たちが当番のはずだから、ついでに軽く様子を見て挨拶していこう。辺りを見回してもいないので、ゴミ置き場の裏庭の方に向かってみた。
 話し声がするので覗いてみると、やはり怜と中村部長だった。部長は大きめのゴミを怜の代わりに持って捨ててあげている。楽しそうに話しているので、ちょっと声をかけづらい。
 まあいいか、と思いその場を離れようとした時、怜の話が耳に届いた。 
「中村先輩、いつもありがとうございます」
「これぐらい気にすんな」
 部長は崩れ落ちていたダンボールの束を積み直している。 その背中を見ながら怜は、落ち着きなくズボンを握ったり離したりしていた。
「それであの、先輩に言いたいことがあって……」
 体を縮こませながら上目遣いに喋り出す。
「良かったら、今度一緒に映画行きませんか?」
「ん?俺と映画?」
 心臓が変に早くなって、俺は息を殺した。
 何だこの会話。これ、聞いていいのか?  
「えっと、この前怪我した時色々してもらったお礼がしたくて」
「行くのは別にいいけど……そんなのいちいち気にすることないのに」
 怜の誘いに、中村部長も戸惑っているような感じがする。
「いいんです。ありがとうございます、嬉しいです」
 一方怜の方はやたら照れてるように見えた。
 俺の思い違いだろうか。友達を誘うような、さっぱりした雰囲気ではなくて、まるでデートに誘うかのような感じがした。
 姉の持ってた少女漫画でもこんなやり取りあった気がするが、怜は中村部長が好きということなのか?
「まさかなぁ?」
 思わず声が出てしまう。
 二人がこちらに来そうな雰囲気を感じたので、俺は慌ててその場を離れることにした。

 
 教室に入るとまだ三人しかいなかった。
 授業まではまだ時間があるからいけると思ったのに、さっきのやり取りが気になりすぎて勉強が全然手につかなかった。怜が来るまでがやたら長く感じる。
 ノートを流し見していると、怜がいつも通り教室に入ってきた。「おはよう」と俺に声をかけ、荷物を机に置く。先程の様子が嘘みたいだ。
 俺は椅子を傾け乗り出し気味に怜に話しかける。先程聞いてしまった件を、改めて怜に確認してみたかった。
 「なぁ、さっき部長と映画行くって言ってなかったか?」
「聞いてたの?」
 怜は強ばった様子でカバンを握る。
「いや、聞こえたというか…」
「もしかして、陽介も行きたいの?」
「お前今、めちゃ嫌そうな顔したな」
「してないよ」
「嘘つけ、行くかよバカ!」
「ばか……?」
 怜が動きを止める。
 うっかり暴言を吐いてしまった。俺も動揺しているみたいだ。
「ちがう、そうじゃなくて。俺は応援したいというか、まぁがんばれよ」
 俺の言葉に怜は顔を赤くし体を揺らした。
「変なこと言わないで。僕、別に……」
 この様子だとはやり中村部長のことが好きな感じがする。とは言っても、憧れの先輩という枠かもしれないし、恋愛で好きとは限らない。深堀るわけにもいかないし、様子を見るしかないんだろうな。
 それにしても怜と先輩の映画は本当に行くのだろうか。

  
 土曜日、部屋で横になりながら漫画を読んでいると、怜からスマホに連絡が来た。予定がないなら家に来て欲しいと言うので、暇な俺は怜の家に行くことにする。怜とは一応連絡先を交換はしていたが、はじめてメッセージがきた。何となく中村部長と関係がある気がする。
 俺は急いで準備すると怜の家に向かった。そしていつも通りお母さんに挨拶すると怜の部屋に入る。部屋は相変わらず綺麗だったが、いつもと違って洋服がベッドに並べられていた。
「なにしてんの?」
「……明日、先輩と映画なんだけど。服どうしようかなって」
「女子かよ」
「いいでしょ別に」
 思わず俺も女子なんて言ってしまった。部長と同じじゃないか、なんだかモヤっとした。そして怜も俺の言い方に腹が立ったのか睨んでいる。
「悪い。……怜ってさ、こういうこと言われるのってやっぱ嫌だよな?」
「……そんなの嬉しいわけないじゃん。でもいちいち文句言ってられないのに、僕だってどうしたらいかわかんないよ」
 口を真一文字に結んで床に視線を落としている怜に、聞いてはいけないことを聞いてしまった気持ちになった。
「難しいよな。俺も分かんないし」
 怜は俺の言葉にうんうん頷くと、また服を選び出した。 
 怜はやっぱり先輩が好きなのだろうか?恋愛自体いまいちピンとこない俺からしたら遠い話しすぎてわからない。
 ただそんな俺でさえ先輩の様子を思い出すと、あまり上手くいくようには思えなかった。
 怜は着替えのためにシャツのボタンを外しはじめたので俺は目を背けた。改めて置いてある服を見ると、ベストだのショートパンツだのと種類があって俺よりお洒落だな、と感心した。
「陽介」
 呼ばれたので振り向くと新しい格好を見せてくる。
「こんな感じとかどうかなって」
 ゆったりしたパーカーに細身のズボン。いたって普通だが妙に可愛らしく見えた。
「いいと思うけど」
「先輩ってどんなのが好きなんだろう」
 怜はまだ悩んでいるが、スカートじゃない?とは口が裂けても言えなかった。
 ひとしきり組み合わせを見せられたが、結局最初のパーカースタイルに決まった。俺は何をさせられているんだろうか。
 洋服を決めた後、そのまま帰るのも馬鹿らしいので一緒にゲームで遊んでから帰宅した。


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 窓から差し込む朝日が眩しい。
 普段ならまだ寝ている時間だ。今日は小テストがあると言うのに、うっかり昨日はノートを忘れてしまった。仕方ないので朝勉でなんとかしようと早起きしてみる。
 今ぐらいの時間だと、ちょうど美化委員の活動中だ。怜たちが当番のはずだから、ついでに軽く様子を見て挨拶していこう。辺りを見回してもいないので、ゴミ置き場の裏庭の方に向かってみた。
 話し声がするので覗いてみると、やはり怜と中村部長だった。部長は大きめのゴミを怜の代わりに持って捨ててあげている。楽しそうに話しているので、ちょっと声をかけづらい。
 まあいいか、と思いその場を離れようとした時、怜の話が耳に届いた。 
「中村先輩、いつもありがとうございます」
「これぐらい気にすんな」
 部長は崩れ落ちていたダンボールの束を積み直している。 その背中を見ながら怜は、落ち着きなくズボンを握ったり離したりしていた。
「それであの、先輩に言いたいことがあって……」
 体を縮こませながら上目遣いに喋り出す。
「良かったら、今度一緒に映画行きませんか?」
「ん?俺と映画?」
 心臓が変に早くなって、俺は息を殺した。
 何だこの会話。これ、聞いていいのか?  
「えっと、この前怪我した時色々してもらったお礼がしたくて」
「行くのは別にいいけど……そんなのいちいち気にすることないのに」
 怜の誘いに、中村部長も戸惑っているような感じがする。
「いいんです。ありがとうございます、嬉しいです」
 一方怜の方はやたら照れてるように見えた。
 俺の思い違いだろうか。友達を誘うような、さっぱりした雰囲気ではなくて、まるでデートに誘うかのような感じがした。
 姉の持ってた少女漫画でもこんなやり取りあった気がするが、怜は中村部長が好きということなのか?
「まさかなぁ?」
 思わず声が出てしまう。
 二人がこちらに来そうな雰囲気を感じたので、俺は慌ててその場を離れることにした。
 教室に入るとまだ三人しかいなかった。
 授業まではまだ時間があるからいけると思ったのに、さっきのやり取りが気になりすぎて勉強が全然手につかなかった。怜が来るまでがやたら長く感じる。
 ノートを流し見していると、怜がいつも通り教室に入ってきた。「おはよう」と俺に声をかけ、荷物を机に置く。先程の様子が嘘みたいだ。
 俺は椅子を傾け乗り出し気味に怜に話しかける。先程聞いてしまった件を、改めて怜に確認してみたかった。
 「なぁ、さっき部長と映画行くって言ってなかったか?」
「聞いてたの?」
 怜は強ばった様子でカバンを握る。
「いや、聞こえたというか…」
「もしかして、陽介も行きたいの?」
「お前今、めちゃ嫌そうな顔したな」
「してないよ」
「嘘つけ、行くかよバカ!」
「ばか……?」
 怜が動きを止める。
 うっかり暴言を吐いてしまった。俺も動揺しているみたいだ。
「ちがう、そうじゃなくて。俺は応援したいというか、まぁがんばれよ」
 俺の言葉に怜は顔を赤くし体を揺らした。
「変なこと言わないで。僕、別に……」
 この様子だとはやり中村部長のことが好きな感じがする。とは言っても、憧れの先輩という枠かもしれないし、恋愛で好きとは限らない。深堀るわけにもいかないし、様子を見るしかないんだろうな。
 それにしても怜と先輩の映画は本当に行くのだろうか。
 土曜日、部屋で横になりながら漫画を読んでいると、怜からスマホに連絡が来た。予定がないなら家に来て欲しいと言うので、暇な俺は怜の家に行くことにする。怜とは一応連絡先を交換はしていたが、はじめてメッセージがきた。何となく中村部長と関係がある気がする。
 俺は急いで準備すると怜の家に向かった。そしていつも通りお母さんに挨拶すると怜の部屋に入る。部屋は相変わらず綺麗だったが、いつもと違って洋服がベッドに並べられていた。
「なにしてんの?」
「……明日、先輩と映画なんだけど。服どうしようかなって」
「女子かよ」
「いいでしょ別に」
 思わず俺も女子なんて言ってしまった。部長と同じじゃないか、なんだかモヤっとした。そして怜も俺の言い方に腹が立ったのか睨んでいる。
「悪い。……怜ってさ、こういうこと言われるのってやっぱ嫌だよな?」
「……そんなの嬉しいわけないじゃん。でもいちいち文句言ってられないのに、僕だってどうしたらいかわかんないよ」
 口を真一文字に結んで床に視線を落としている怜に、聞いてはいけないことを聞いてしまった気持ちになった。
「難しいよな。俺も分かんないし」
 怜は俺の言葉にうんうん頷くと、また服を選び出した。 
 怜はやっぱり先輩が好きなのだろうか?恋愛自体いまいちピンとこない俺からしたら遠い話しすぎてわからない。
 ただそんな俺でさえ先輩の様子を思い出すと、あまり上手くいくようには思えなかった。
 怜は着替えのためにシャツのボタンを外しはじめたので俺は目を背けた。改めて置いてある服を見ると、ベストだのショートパンツだのと種類があって俺よりお洒落だな、と感心した。
「陽介」
 呼ばれたので振り向くと新しい格好を見せてくる。
「こんな感じとかどうかなって」
 ゆったりしたパーカーに細身のズボン。いたって普通だが妙に可愛らしく見えた。
「いいと思うけど」
「先輩ってどんなのが好きなんだろう」
 怜はまだ悩んでいるが、スカートじゃない?とは口が裂けても言えなかった。
 ひとしきり組み合わせを見せられたが、結局最初のパーカースタイルに決まった。俺は何をさせられているんだろうか。
 洋服を決めた後、そのまま帰るのも馬鹿らしいので一緒にゲームで遊んでから帰宅した。