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6美化委員

ー/ー



 翌日、怜は一見普通に見えた。
 挨拶も変わらず返してくれるし、雑談にものってくれる。ただそれが本当に昨日の続きを引きずっていないからなのか、そうしているだけなのか、俺には分からなかった。 
 いつも通り一緒に昼を食べる。弁当を食べるのに集中している怜に、ゴールデンウィークの予定を聞いてみた。
「もうすぐ休みだな〜怜んちはどこか行くの?」
「北海道の保養所に行く予定だよ」
 弁当のハンバーグを割りながら答えた。
「まじかよ、すごいな」
「陽介の方は?」
「うちは兄ちゃん受験でピリピリしてるから行かないなぁ」
 去年も姉ちゃんが受験だったから、どこにも行かなかった。俺も旅行行きたいな。
「そっか。帰ってきたら撮ってきた写真見てよ」
「おう、俺もなんか撮りに出かけてみようかな」
 一人でちょっと遠出してみるのはありかもしれない。俺ももう大人みたいなもんだし。
 学校での面倒くさいできごとが忘れられる休みが楽しみだ。俺は休みの予定が決まり満足したので、止めていた手を動かしおかずを食べ始める。
 本当に忘れられるかどうかは、考えないことにした。

  
 気がつけばジャケット着なくても平気な日が増えてきた。じんわりと暑く、汗をかきながら俺たち美化委員は、花壇の手入れをしていた。ゴールデンウィーク中にそこかしこ雑草が伸びてきており、休み明けの仕事は総出だ。
「結構足に来ますね」
 俺は近くにいる津田先輩に話しかけた。
「だから筋トレになるんだけどね〜」
 素早い動きでどんどん引き抜いて行く。俺も負けじと素早く取っては投げた。
 雑草を抜きながら、向かいの花壇の草取りをしている怜と中村先輩を眺める。相性悪そうに見えて、二人とも普通に会話をしながら作業をしていた。
 おまけに、怜の代わりに散らかった雑草を集めて、袋に入れてやってるし。
  「中村部長って、怜に甘いと思いません?」
 俺の言葉を聞くと、津田先輩も向かいの二人を見た。 中村先輩がなにか言ったのか、怜が笑いながらうなずいている。
 特に津田先輩は何も感じないようで、すぐに視線を戻してまた草をむしり始めた。
「中村って下に小学生の弟いるから、世話したくなるんじゃない?」
 そういうものなのか?俺は下に兄弟はいないからいまいちよく分からない。
「北河原くんって見てるとなんか心配になるよね」
「それは確かに」
 俺と津田先輩は顔を見合わせた。

 
 引き抜いて散らばった雑草達をほうきと塵取りで集めていく。怜はゴミ袋を縛ってくれている。
「いたっ」
 怜が突然声を上げた。
「どした?」
 俺が覗き込むと、怜の軍手から血が滲んでいた。ゴミ袋を見ると小枝がいくつか突き出ている。
「うわあ!なんか刺さったのか?」
「多分……」
 血を見て怯んでしまう。それを尻目に中村部長が「先生、怪我したんで保健室いきます!」と声を上げた。
「北河原保健室わかる?分からないなら一緒にきて」
「ありがとうございます」
 怜はすごすごと中村部長について行っていく。まさか怪我するなんてなぁ。
「硬いの混じってるから加藤も注意してね」
 津田先輩がアドバイスをくれたが、最初から言っておいてほしかった。

 
 怜たちが戻ってくる前に、委員会の方は解散になった。だいぶ血が出ていたし、怜はそのまま帰ったのだろうか。中村部長が戻ってきたら様子を聞きたかったのだが、なかなか帰って来ない。
 校舎の外周を走り込みしていると、裏門の近くに部長がいるのが見えた。女の子と話していたようだか、軽く手を上げて別れる。俺が立ち止まっていたので、部長と目があった。
「何やってんだ?走り込みはどうした?」
「すみません。あの、怜って大丈夫でした?」
 今聞くことではないとわかっていたが、どうしても気になり中村部長に確認をしてみる。
「ああ、出血は多かったけど傷は浅いって」
「良かった」
「お前はビビりすぎ」
 先輩は俺の腹にパンチを食らわせた。冗談なのにかなり痛い。 
「北河原はなんか抜けてるんだよなぁ。可愛いから許されるんだろうけど」
 少し呆れたような、困った感じで部長は呟いた。意外な風に見ていたんだな。もっと普通に可愛がってるのだとばかり思っていた。
「先輩もそう思うんすか?」
「そりゃあまあ……話してると女子といるみたいな気分になるし」
 女子……また変な括りにされている。とはいえ、西岡みたいに攻撃してくるよりはいいよな。多分、その方が楽だろう。
「あ、あれからうるさいヤツらきた?」
 思いだしたかのように、以前来た女子軍の話題を振られる。
「ないです。ただ……」
 西岡の件がよぎった。
「なんかあったのか?」
「その……部長の言うように、みんなが見た目で許してくれればいいんすけどね」
 部長は俺の言葉に瞬きを繰り返し顎をさすった。
「同じクラスだったらウザイかもなぁ。自分より下だから可愛いで許せるみたいな」
 部長の言葉に納得する。俺からするとそのズレた感じが面白いんだけど、同い年だと嫌な奴もいるよな。怜の抱えている問題は根深そうだ。
「いっけね」
 部長が突然はっとする。
「長話してる場合じゃないぞ、早く戻れ!」
 部長は慌てて急ぎ走り出した。
「はい!」 
 グラウンドに戻る部長に煽られて、俺も後ろを走り出した。これは後でもっと怒られるかもな。


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 翌日、怜は一見普通に見えた。
 挨拶も変わらず返してくれるし、雑談にものってくれる。ただそれが本当に昨日の続きを引きずっていないからなのか、そうしているだけなのか、俺には分からなかった。 
 いつも通り一緒に昼を食べる。弁当を食べるのに集中している怜に、ゴールデンウィークの予定を聞いてみた。
「もうすぐ休みだな〜怜んちはどこか行くの?」
「北海道の保養所に行く予定だよ」
 弁当のハンバーグを割りながら答えた。
「まじかよ、すごいな」
「陽介の方は?」
「うちは兄ちゃん受験でピリピリしてるから行かないなぁ」
 去年も姉ちゃんが受験だったから、どこにも行かなかった。俺も旅行行きたいな。
「そっか。帰ってきたら撮ってきた写真見てよ」
「おう、俺もなんか撮りに出かけてみようかな」
 一人でちょっと遠出してみるのはありかもしれない。俺ももう大人みたいなもんだし。
 学校での面倒くさいできごとが忘れられる休みが楽しみだ。俺は休みの予定が決まり満足したので、止めていた手を動かしおかずを食べ始める。
 本当に忘れられるかどうかは、考えないことにした。
 気がつけばジャケット着なくても平気な日が増えてきた。じんわりと暑く、汗をかきながら俺たち美化委員は、花壇の手入れをしていた。ゴールデンウィーク中にそこかしこ雑草が伸びてきており、休み明けの仕事は総出だ。
「結構足に来ますね」
 俺は近くにいる津田先輩に話しかけた。
「だから筋トレになるんだけどね〜」
 素早い動きでどんどん引き抜いて行く。俺も負けじと素早く取っては投げた。
 雑草を抜きながら、向かいの花壇の草取りをしている怜と中村先輩を眺める。相性悪そうに見えて、二人とも普通に会話をしながら作業をしていた。
 おまけに、怜の代わりに散らかった雑草を集めて、袋に入れてやってるし。
  「中村部長って、怜に甘いと思いません?」
 俺の言葉を聞くと、津田先輩も向かいの二人を見た。 中村先輩がなにか言ったのか、怜が笑いながらうなずいている。
 特に津田先輩は何も感じないようで、すぐに視線を戻してまた草をむしり始めた。
「中村って下に小学生の弟いるから、世話したくなるんじゃない?」
 そういうものなのか?俺は下に兄弟はいないからいまいちよく分からない。
「北河原くんって見てるとなんか心配になるよね」
「それは確かに」
 俺と津田先輩は顔を見合わせた。
 引き抜いて散らばった雑草達をほうきと塵取りで集めていく。怜はゴミ袋を縛ってくれている。
「いたっ」
 怜が突然声を上げた。
「どした?」
 俺が覗き込むと、怜の軍手から血が滲んでいた。ゴミ袋を見ると小枝がいくつか突き出ている。
「うわあ!なんか刺さったのか?」
「多分……」
 血を見て怯んでしまう。それを尻目に中村部長が「先生、怪我したんで保健室いきます!」と声を上げた。
「北河原保健室わかる?分からないなら一緒にきて」
「ありがとうございます」
 怜はすごすごと中村部長について行っていく。まさか怪我するなんてなぁ。
「硬いの混じってるから加藤も注意してね」
 津田先輩がアドバイスをくれたが、最初から言っておいてほしかった。
 怜たちが戻ってくる前に、委員会の方は解散になった。だいぶ血が出ていたし、怜はそのまま帰ったのだろうか。中村部長が戻ってきたら様子を聞きたかったのだが、なかなか帰って来ない。
 校舎の外周を走り込みしていると、裏門の近くに部長がいるのが見えた。女の子と話していたようだか、軽く手を上げて別れる。俺が立ち止まっていたので、部長と目があった。
「何やってんだ?走り込みはどうした?」
「すみません。あの、怜って大丈夫でした?」
 今聞くことではないとわかっていたが、どうしても気になり中村部長に確認をしてみる。
「ああ、出血は多かったけど傷は浅いって」
「良かった」
「お前はビビりすぎ」
 先輩は俺の腹にパンチを食らわせた。冗談なのにかなり痛い。 
「北河原はなんか抜けてるんだよなぁ。可愛いから許されるんだろうけど」
 少し呆れたような、困った感じで部長は呟いた。意外な風に見ていたんだな。もっと普通に可愛がってるのだとばかり思っていた。
「先輩もそう思うんすか?」
「そりゃあまあ……話してると女子といるみたいな気分になるし」
 女子……また変な括りにされている。とはいえ、西岡みたいに攻撃してくるよりはいいよな。多分、その方が楽だろう。
「あ、あれからうるさいヤツらきた?」
 思いだしたかのように、以前来た女子軍の話題を振られる。
「ないです。ただ……」
 西岡の件がよぎった。
「なんかあったのか?」
「その……部長の言うように、みんなが見た目で許してくれればいいんすけどね」
 部長は俺の言葉に瞬きを繰り返し顎をさすった。
「同じクラスだったらウザイかもなぁ。自分より下だから可愛いで許せるみたいな」
 部長の言葉に納得する。俺からするとそのズレた感じが面白いんだけど、同い年だと嫌な奴もいるよな。怜の抱えている問題は根深そうだ。
「いっけね」
 部長が突然はっとする。
「長話してる場合じゃないぞ、早く戻れ!」
 部長は慌てて急ぎ走り出した。
「はい!」 
 グラウンドに戻る部長に煽られて、俺も後ろを走り出した。これは後でもっと怒られるかもな。