第3話
ー/ー 広間の巨大なホログラム・スクリーンに、黄金の文字が踊る。
『第一遊戯:バウンティ・ラッシュ』
及川は、手元の端末を操作しながら冷ややかに笑った。
「ルールは簡単だ。これは、お前たちの『価値』を自分で決めるゲームだ」
スクリーンに映し出されたのは、蜘蛛のような多脚を持ち、全身が冷徹なクロムで覆われた自律型追跡機――通称『リーパー』。
及川が指を鳴らすと、スクリーンに賞金額の階段が浮かび上がった。
1〜3枚 :通常追跡
4〜7枚 :高速追跡
8〜15枚 :位置情報リアルタイム公開
16枚以上 :ドローン常時監視・逃走ルート封鎖
「リーパーのAIは『高い賞金』を好む。1枚の小物を追うほど暇じゃない」
ざわめきが広がる中、誰かが叫んだ。
「だったら1枚だけ賭けて、隅っこで震えてりゃいいじゃねえか!」
「ハハッ、賢いな。だが甘い」
及川が指を鳴らす。
「リーパーのAIは『高い賞金』を好む。1枚の小物を追うほど暇じゃない。だが、欲をかいて10枚、20枚と賭けてみろ。リーパーのスペックは跳ね上がり、お前の網膜IDを地獄の果てまで追跡するようになる。……さあ、選べ。安全なドブネズミとして生き延びるか、高価な獲物として死ぬか。入力期限はあと30秒だ」
忠茂の手のひらが、じっとりと汗ばむ。
借金300万。チップ換算で3枚。倍にしたところで6枚にしかならない。返済には、最低でも10倍の倍率が要る。
——10枚賭けて、20枚で生き延びる。それが、最低ライン。
(山口……俺を売ったあいつなら、いくら賭ける?)
中学時代、いつも無茶をしていた友人の顔が浮かぶ。
忠茂は震える指先で、数値を打ち込んだ。
ピコン、ピコン、と方々で確定音が鳴る。
視界の端に、他の債務者の数字が流れた。
『1』『1』『1』——大半は、震える小物だ。
『50』。誰かが、頭のおかしい数字を打ち込んだ。広間の中央で、髭面の大男が下卑た笑いを上げている。
『有賀忠茂:設定賞金額 10枚』
刹那、船内にけたたましいサイレンが鳴り響いた。
「強欲なバカが揃ったようだな、リーパーに触れられれば――全財産は消える。そして、運が悪ければ、人間としての尊厳もな」
及川は、にやりと笑った。
——尊厳。その言葉の意味を、忠茂はまだ知らない。
及川の合図とともに、広間の床がスライドし、暗い船底へと続くゲートが口を開けた。
「狩りの時間だ」
床が、消えた。
忠茂の体が暗闇に投げ出される直前、及川の声だけが追ってきた。
「——走れ」
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