賽を投げよう、一緒に

ー/ー







 ラスアジィンニコフは私の指示に従って奴隷市から美少年は買い、幾ばくかの金貨を持たせて親元に返した。

 「一定値の賛同は得られるでしょう。でも決して正しい事ではなかったと、それだけは理解いただきたい」

 あの時、咄嗟に出た言葉の結末を執務室で聞いた。
 私が奴隷を大量に買ったせいで美少年奴隷の価値が高騰、奴隷商は更に美少年奴隷を仕入れようとするし、親元に返した美少年奴隷も価値が上がったからって事で半分くらいは再び奴隷市に売られた。
 結局、私のした事は美少年奴隷の価値をあげて雌雄同体の神性さを奴隷市場に作っただけだった。

 「わかってる、わかってる。私のした事は無駄だった」

 「そうでしょうか」

 彼は懐から一枚の手紙を取り出し、私の前で広げた。そこには子供売るしかなかった親からの感謝が綴られていた。

 「感謝状ですよ、貴方に対する。しかしこんな物に何の意味がありましょうか」

 彼はその手紙を破って床に捨てた。
 悲しくはない、怒りもない。だって彼は皇帝の立場からして正しい事を言っている。

 「貴方は一人の人間にとっての善人ではいけない。多くの人々に善人に見える人でなくてはならないの」

 「わかってる、だから私は……ガイウス魔法法を改正したいんだ。素振りだけじゃなくて、段階的に変える。そして最終的には廃止にしたい」

 彼は私の両肩に手を乗せて顔を近づけて睨んだ。彼の強い意志のある黒の眼が怖い。

 「本気で言ってるんですか?ヘリオース陛下。それはマレ・ノストルムを壊しかねない選択だ」

 「わかってる。でも私は自分の罪とか醜さとか、そう言うものに耐えきれそうにない。だから……」

 選択の後悔、結局私は弱くて、誰の為の選択をしても過去の知らない誰かを損なっているという事実に耐えきれない。ならば、私はこれ以上醜くならない為に正しいと思える選択をし続けるしかない。

 「だから急進的な事をすると?人道的に正しい事を?違うでしょ、貴方は人間だ。いくらエルの治癒魔法を使えるからって救世主のように神性を持ってる訳じゃないでしょ。貴方は醜さに耐えられないから正しい事をするよと言いながら、その先の報酬を欲している、違いますか?」

 肉体が、私の中のヘリオースが自分の欲望を吐き出した。

 「……名を残したい、ヘリオース・エルガーベラスとして歴史に」

 ラスアジィンニコフは満足したんだろう、私の欲望を聞いて。だから彼は私の目の前から離れて窓の側に立った。

 「でしょうね。だって醜くありたくないってだけなら別に今のまま保守的な事しときゃ良いんだから」

 「まぁ良いですよ。私も協力しましょう。ガイウス魔法法改正は元平民の私の本望でありますからね」

 「てっきり改正する素振りだけ見せるって言ってたから改正しないつもりだと思ってた」

 「ん、あれは改正の瀬戸際に立たせて背中から蹴ってやろうかなと思ってましたので」

 本当にこの人は腹黒い人だ。もしかしたら私がこう言うことも織り込み済みだったのかもしれない。でも目的が一致しているのなら協力な助っ人にはなるはず。あとは私がこの人に振り回されないように無理にでも着いていくしかない。

 「野心家だ、貴方はノストルムで一番の」

 「そうですね、でも貴方もそうだ。不遜にも1000年の歴史を持つマレ・ノストルムを造り替えようとしている。しかもその根源は承認欲求ときた」

 彼はもう一度私に向き直りこう言った。

 「では私と賽を投げましょう。このラスアジィンニコフ・カエセリオンと共に」

 差し出されたガッチリとしている手を私はとってしまった。

 「いいね、じゃあガイウス魔法法の改正草案を作成と政務院への根回しをやらないと」

 マレ・ノストルムの立法・改正の手順はこうだ。まず草案を私の指示の下作成してこの世界の衆議院的存在である政務院と神星院に通してここで承認されると、次は参議院的存在の護民院に通されてここでやっと法律として宣言しても問題なしとなる。そして最後に皇帝が宣言してその日から法律が有効になる。

 「政務院の方は私にお任せください、あと護民院の方も」

 じゃあ私は宗教サイドの衆議院の神星院とそれと……

 「うん。なら私は神星院と帰還してくるスピキ将軍を」

 スピキ将軍、マレ・ノストルム最大の敵ハンニヴァルカを打ち破った、いわゆる大英雄という人だ。それがもし、こちら側についてくれるのなら法改正は確実になる。

 「ならそちらは任せましたよ」

 一ヶ月後、彼は帰還する。だから先に私は神星院を片付けなくてはならない。
 翌日、私は神星院に向かい神星院の議員達と対談した。イグニオン神星会議で正統(オルドクスス)をアルメリウス学派に定めたからだろう、アルメリウス学派を支持する聖職者の多い神星院はイグニオンの例との事でガイウス魔法法の改正には割と簡単に乗ってくれた。と言っても、乗ってくれたの改正の一段階目だけだったけれど、でも最初の改正はそれで十分だ。
 だから私側の残る問題はスピキ将軍だけである。





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 ラスアジィンニコフは私の指示に従って奴隷市から美少年は買い、幾ばくかの金貨を持たせて親元に返した。
 「一定値の賛同は得られるでしょう。でも決して正しい事ではなかったと、それだけは理解いただきたい」
 あの時、咄嗟に出た言葉の結末を執務室で聞いた。
 私が奴隷を大量に買ったせいで美少年奴隷の価値が高騰、奴隷商は更に美少年奴隷を仕入れようとするし、親元に返した美少年奴隷も価値が上がったからって事で半分くらいは再び奴隷市に売られた。
 結局、私のした事は美少年奴隷の価値をあげて雌雄同体の神性さを奴隷市場に作っただけだった。
 「わかってる、わかってる。私のした事は無駄だった」
 「そうでしょうか」
 彼は懐から一枚の手紙を取り出し、私の前で広げた。そこには子供売るしかなかった親からの感謝が綴られていた。
 「感謝状ですよ、貴方に対する。しかしこんな物に何の意味がありましょうか」
 彼はその手紙を破って床に捨てた。
 悲しくはない、怒りもない。だって彼は皇帝の立場からして正しい事を言っている。
 「貴方は一人の人間にとっての善人ではいけない。多くの人々に善人に見える人でなくてはならないの」
 「わかってる、だから私は……ガイウス魔法法を改正したいんだ。素振りだけじゃなくて、段階的に変える。そして最終的には廃止にしたい」
 彼は私の両肩に手を乗せて顔を近づけて睨んだ。彼の強い意志のある黒の眼が怖い。
 「本気で言ってるんですか?ヘリオース陛下。それはマレ・ノストルムを壊しかねない選択だ」
 「わかってる。でも私は自分の罪とか醜さとか、そう言うものに耐えきれそうにない。だから……」
 選択の後悔、結局私は弱くて、誰の為の選択をしても過去の知らない誰かを損なっているという事実に耐えきれない。ならば、私はこれ以上醜くならない為に正しいと思える選択をし続けるしかない。
 「だから急進的な事をすると?人道的に正しい事を?違うでしょ、貴方は人間だ。いくらエルの治癒魔法を使えるからって救世主のように神性を持ってる訳じゃないでしょ。貴方は醜さに耐えられないから正しい事をするよと言いながら、その先の報酬を欲している、違いますか?」
 肉体が、私の中のヘリオースが自分の欲望を吐き出した。
 「……名を残したい、ヘリオース・エルガーベラスとして歴史に」
 ラスアジィンニコフは満足したんだろう、私の欲望を聞いて。だから彼は私の目の前から離れて窓の側に立った。
 「でしょうね。だって醜くありたくないってだけなら別に今のまま保守的な事しときゃ良いんだから」
 「まぁ良いですよ。私も協力しましょう。ガイウス魔法法改正は元平民の私の本望でありますからね」
 「てっきり改正する素振りだけ見せるって言ってたから改正しないつもりだと思ってた」
 「ん、あれは改正の瀬戸際に立たせて背中から蹴ってやろうかなと思ってましたので」
 本当にこの人は腹黒い人だ。もしかしたら私がこう言うことも織り込み済みだったのかもしれない。でも目的が一致しているのなら協力な助っ人にはなるはず。あとは私がこの人に振り回されないように無理にでも着いていくしかない。
 「野心家だ、貴方はノストルムで一番の」
 「そうですね、でも貴方もそうだ。不遜にも1000年の歴史を持つマレ・ノストルムを造り替えようとしている。しかもその根源は承認欲求ときた」
 彼はもう一度私に向き直りこう言った。
 「では私と賽を投げましょう。このラスアジィンニコフ・カエセリオンと共に」
 差し出されたガッチリとしている手を私はとってしまった。
 「いいね、じゃあガイウス魔法法の改正草案を作成と政務院への根回しをやらないと」
 マレ・ノストルムの立法・改正の手順はこうだ。まず草案を私の指示の下作成してこの世界の衆議院的存在である政務院と神星院に通してここで承認されると、次は参議院的存在の護民院に通されてここでやっと法律として宣言しても問題なしとなる。そして最後に皇帝が宣言してその日から法律が有効になる。
 「政務院の方は私にお任せください、あと護民院の方も」
 じゃあ私は宗教サイドの衆議院の神星院とそれと……
 「うん。なら私は神星院と帰還してくるスピキ将軍を」
 スピキ将軍、マレ・ノストルム最大の敵ハンニヴァルカを打ち破った、いわゆる大英雄という人だ。それがもし、こちら側についてくれるのなら法改正は確実になる。
 「ならそちらは任せましたよ」
 一ヶ月後、彼は帰還する。だから先に私は神星院を片付けなくてはならない。
 翌日、私は神星院に向かい神星院の議員達と対談した。イグニオン神星会議で正統(オルドクスス)をアルメリウス学派に定めたからだろう、アルメリウス学派を支持する聖職者の多い神星院はイグニオンの例との事でガイウス魔法法の改正には割と簡単に乗ってくれた。と言っても、乗ってくれたの改正の一段階目だけだったけれど、でも最初の改正はそれで十分だ。
 だから私側の残る問題はスピキ将軍だけである。