抱けない、抱けないんだ

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 夜伽、そう、性行為である。皇帝たるもの、その血を絶やしてはならない。なぜなら皇帝の子供がいなければ次が誰の皇帝になるのかと争いを産んでしまう。だから義務として、私はヘリオースという肉体を使ってユリアンを抱かなくてはならない。
 そして今、私は天蓋付きのベットの下、お互い薄着となってユリアンと語らっている。

 「謝ってばかりだけど、ごめんね。ユリアン、こうなってしまって。嫌ならば、拒んでくれて良いからさ」

 「だから辞めてって。これが私の役割だかさ。さ、抱きなよ」

 ユリアンの柔らかい身体をベットに押し倒した。男であるヘリオースに心が引っ張られて、転生前では感じれなかった女体に対する興奮を少しだけ感じてしまって、頬が赤くなる。
 自分の右手を彼女のその大きな乳に沈める。かつて煩わしいと思っていたそれに触れて昂っている、私の中の私がヘリオースである私を計熱する。

 「ヘリオ……」

 お互い服を脱ぐ。彼女の全てを自分の目で見ている。乳、肋骨、普段隠れて見えない物、私はそれを見てそれを触った。彼女の太腿が私についたそれに触れた時、彼女はこう言った。

 「あ……ごめんね、ヘリオ」

 「ごめん、ユリアン、ごめん」

 私は彼女を抱けなかった。なぜなら私の心は女であって、いくら肉体に引っ張られても最後の一線だけは越えれなかった。しかし逆に肉体に引っ張られて最後の一線の直前までは行ってしまった。つまり、ユリアンに対して性的な興奮を抱いていたのもまた事実であった。
 私は一体なんなんだろう。
 私はヘリオースという一人の人間なのか、それかヘリオースという人間を操っている転生者の魂なのか。
 私の存在とは?

 「今日は寝よう、明日はきっと」

 彼女に服を着せてその日はそのまま寝た。そして明日も夜伽を行ったが、結果は変わらなかった。
 それから三ヶ月が過ぎてしまった。彼女と結婚して彼女を抱かず、三ヶ月が経ってしまったのである。

 「陛下、それで昨晩も抱けなかったのですか?」

 皇帝の補佐として政務長官にまで出世したラスアジィンニコフは私の執務室でそう言った。

 「えぇ、どうしてもです、いや、仕方ない、だろう」

 目下の者に敬語を使ってはならない。皇帝とは全ての上に立つ存在であるのだから。でも慣れないものだ。幼い頃から砕けた口調で喋るのはユリアンだけだったのだから。

 「正直私には分かりかねますね。しかし嘘も限度があります。あまりにも長くユリアン様がご懐妊なさらないとなれば、政務長として私は離婚を勧めなくてはならなくなる」

 それは嫌だ。子を成せなくて離婚なんて、ユリアンが一族から恥晒し扱いされかねない。

 「という訳でここで私は提案したいのです。一向にご懐妊なさらない王妃殿下から目を逸らす最善の方法を」

 「最善?」

 「はい、ガイウス魔法法を改正致しましょう」

 ガイウス魔法法とは政務院に認めらた魔法学校以外で魔法を教えてはならないというあれだ。しかしこれを改正?できる訳がない。だってこれは階級を隔てる根源であり、それを取り外そうなんて政務院は愚かマレ・ノストルム中が黙っていない。

 「ラスアジィンニコフ、貴方は自分の言っている意味がわかっているの?」

 「はい勿論。だから言ったんです。貴方がガイウス魔法法を改正する素振りを見せ続ければ誰も王妃の事など見ない。合理的でしょう?」

 「しかし危険過ぎる」

 「では私は今年中に政務長としてご懐妊なさらない、役割を果たせない妻とは離婚せよと、政務院最終勧告を叩き付けなくてはなりません」

 それは嫌だ。でも政務院最終勧告は無視できない。何故ならM•(政務院)I•(皇帝)M•(マレ)N•(ノストルム)という言葉の通り皇帝の権力と政務院全体の権力はほぼ同じか皇帝の方が少し上くらいであり、政務院からの最終勧告は無視するという事は首を挿げ替えられる覚悟がありますよと宣言する事なのである。

 「わかった、でも急進的過ぎる事は絶対にやらない。いいね?」

 「いいでしょう、しかしです、貴方にそれができるんですか?だって貴方はあの老人を治癒したではありませんか」

 「何が言いたいの」

 「いえ、貴方は知らない方がいい」

 ラスアジィンニコフの嫌な所はこういう所だ。最後の最後まで必要な事を言ってくれない。でも今はビジネスパートナーとして良い顔をするしかないだろう。

 「じゃあこれだけは教えてよ、政務長。ガイウス魔法法の改正を匂わさせる方法を」

 彼は一度顎に手を置いて考える。そして一分後、すぐに回答が出た。

 「そうですね、まずそれをするには貴方自身が力を持たなくてはならない。その為にイグニオン神星会議でア=ステラの神性を肯定するのが楽でしょう」

 ア=ステラは神なのかあるいは人なのか、星教内でも争論となる所だ。だからイグニオン神星会議で正式にそれについて論争する訳だけれど、それが私が力を持つことに何の関係があるんだろう。

 「正直言って全く分からない。私は貴方のスピードに付いていけないから一から説明して欲しい」

 「それは私の利益を損なうからダメです。でも私に着いてくれば何とかなるし、何とかしてやる。これだけは教えておきますよ」

 勉強しよう、本気でそう思った。だってこれではラスアジィンニコフなしでは何も出来なくなってしまう。
 でも今はまだ、ラスアジィンニコフの意見に従って置く。少なくとも私が利益を彼に与えているうちは彼は裏切らないだろうから。


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 夜伽、そう、性行為である。皇帝たるもの、その血を絶やしてはならない。なぜなら皇帝の子供がいなければ次が誰の皇帝になるのかと争いを産んでしまう。だから義務として、私はヘリオースという肉体を使ってユリアンを抱かなくてはならない。
 そして今、私は天蓋付きのベットの下、お互い薄着となってユリアンと語らっている。
 「謝ってばかりだけど、ごめんね。ユリアン、こうなってしまって。嫌ならば、拒んでくれて良いからさ」
 「だから辞めてって。これが私の役割だかさ。さ、抱きなよ」
 ユリアンの柔らかい身体をベットに押し倒した。男であるヘリオースに心が引っ張られて、転生前では感じれなかった女体に対する興奮を少しだけ感じてしまって、頬が赤くなる。
 自分の右手を彼女のその大きな乳に沈める。かつて煩わしいと思っていたそれに触れて昂っている、私の中の私がヘリオースである私を計熱する。
 「ヘリオ……」
 お互い服を脱ぐ。彼女の全てを自分の目で見ている。乳、肋骨、普段隠れて見えない物、私はそれを見てそれを触った。彼女の太腿が私についたそれに触れた時、彼女はこう言った。
 「あ……ごめんね、ヘリオ」
 「ごめん、ユリアン、ごめん」
 私は彼女を抱けなかった。なぜなら私の心は女であって、いくら肉体に引っ張られても最後の一線だけは越えれなかった。しかし逆に肉体に引っ張られて最後の一線の直前までは行ってしまった。つまり、ユリアンに対して性的な興奮を抱いていたのもまた事実であった。
 私は一体なんなんだろう。
 私はヘリオースという一人の人間なのか、それかヘリオースという人間を操っている転生者の魂なのか。
 私の存在とは?
 「今日は寝よう、明日はきっと」
 彼女に服を着せてその日はそのまま寝た。そして明日も夜伽を行ったが、結果は変わらなかった。
 それから三ヶ月が過ぎてしまった。彼女と結婚して彼女を抱かず、三ヶ月が経ってしまったのである。
 「陛下、それで昨晩も抱けなかったのですか?」
 皇帝の補佐として政務長官にまで出世したラスアジィンニコフは私の執務室でそう言った。
 「えぇ、どうしてもです、いや、仕方ない、だろう」
 目下の者に敬語を使ってはならない。皇帝とは全ての上に立つ存在であるのだから。でも慣れないものだ。幼い頃から砕けた口調で喋るのはユリアンだけだったのだから。
 「正直私には分かりかねますね。しかし嘘も限度があります。あまりにも長くユリアン様がご懐妊なさらないとなれば、政務長として私は離婚を勧めなくてはならなくなる」
 それは嫌だ。子を成せなくて離婚なんて、ユリアンが一族から恥晒し扱いされかねない。
 「という訳でここで私は提案したいのです。一向にご懐妊なさらない王妃殿下から目を逸らす最善の方法を」
 「最善?」
 「はい、ガイウス魔法法を改正致しましょう」
 ガイウス魔法法とは政務院に認めらた魔法学校以外で魔法を教えてはならないというあれだ。しかしこれを改正?できる訳がない。だってこれは階級を隔てる根源であり、それを取り外そうなんて政務院は愚かマレ・ノストルム中が黙っていない。
 「ラスアジィンニコフ、貴方は自分の言っている意味がわかっているの?」
 「はい勿論。だから言ったんです。貴方がガイウス魔法法を改正する素振りを見せ続ければ誰も王妃の事など見ない。合理的でしょう?」
 「しかし危険過ぎる」
 「では私は今年中に政務長としてご懐妊なさらない、役割を果たせない妻とは離婚せよと、政務院最終勧告を叩き付けなくてはなりません」
 それは嫌だ。でも政務院最終勧告は無視できない。何故なら|M•《政務院》|I•《皇帝》|M•《マレ》|N•《ノストルム》という言葉の通り皇帝の権力と政務院全体の権力はほぼ同じか皇帝の方が少し上くらいであり、政務院からの最終勧告は無視するという事は首を挿げ替えられる覚悟がありますよと宣言する事なのである。
 「わかった、でも急進的過ぎる事は絶対にやらない。いいね?」
 「いいでしょう、しかしです、貴方にそれができるんですか?だって貴方はあの老人を治癒したではありませんか」
 「何が言いたいの」
 「いえ、貴方は知らない方がいい」
 ラスアジィンニコフの嫌な所はこういう所だ。最後の最後まで必要な事を言ってくれない。でも今はビジネスパートナーとして良い顔をするしかないだろう。
 「じゃあこれだけは教えてよ、政務長。ガイウス魔法法の改正を匂わさせる方法を」
 彼は一度顎に手を置いて考える。そして一分後、すぐに回答が出た。
 「そうですね、まずそれをするには貴方自身が力を持たなくてはならない。その為にイグニオン神星会議でア=ステラの神性を肯定するのが楽でしょう」
 ア=ステラは神なのかあるいは人なのか、星教内でも争論となる所だ。だからイグニオン神星会議で正式にそれについて論争する訳だけれど、それが私が力を持つことに何の関係があるんだろう。
 「正直言って全く分からない。私は貴方のスピードに付いていけないから一から説明して欲しい」
 「それは私の利益を損なうからダメです。でも私に着いてくれば何とかなるし、何とかしてやる。これだけは教えておきますよ」
 勉強しよう、本気でそう思った。だってこれではラスアジィンニコフなしでは何も出来なくなってしまう。
 でも今はまだ、ラスアジィンニコフの意見に従って置く。少なくとも私が利益を彼に与えているうちは彼は裏切らないだろうから。