見知った貴方の為なら?

ー/ー







 「待ってくださいお母様どういう事なんです?だってこの前皇帝決まったばかりじゃないですか、たしかヘラヘラ帝が死んで、それでその弟さんが……」

 「死んだわ。血筋が弱くて正統性がない。それでいてせっかく軍部が担ぎ上げてくれたのに弱腰過ぎて話にならないから殺されたの」

 「それとこれと何の関係が?ヘラヘラ帝の弟さんが死んだとして、どうして私が皇帝にならなくてはならないんです?他の者では……」

 母は頭を抱えながらこう答えた。

 「メアリ母様が軍部の前で私の娘の子は、つまり貴方はヘラヘラ帝の隠し子だって宣言したのです。私が不倫してって。元々私のお父様が神殿付きの神官だったことも変に説得性増しちゃって。もう収集がつかなくなってしまったので貴方が皇帝になるしかなくなってしまったのです」

 私が皇帝?マレ・ノストルムの皇帝?あり得ない。

 「少しだけ、考える時間を下さい。落ち着きたいんです」

 私は逃げるように当主の部屋を出て図書室に向かって、そしてユリアンに全てを話した。私が皇帝になるかもしれないと、そう話した。吐き出すように話したのだ。

 「ヘリオは皇帝になりたくないの?」

 皇帝になりたいか否か。こんなのなりたくないに決まってる。確かに皇帝という地位は神のような地位だけれど、でもヘラヘラ帝とかその弟が暗殺されたように、皇帝の死因はほとんど暗殺だ。それを知っていてなりたいなんて言える訳がない。
 でも私が皇帝にならなかったらこの事態が収集できなくて大変なことになる。

 「なりたくはないよ、でもやらなくちゃならないとは、思ってる」

 例え私がどう思っていても、マレ・ノストルムという国がこの時代に生きる私たちにとって世界そのものであるという事実は変わらない。だから合理的に考えれば私が皇帝にならないという選択肢はない。国がなければ人は生きて行けないのだから。
 でもだからと言って何で私がという気持ちが拭える訳では無い。私はそこまで合理的にはなれないよ。

 「ならやるしかないんじゃないかなってのは、私が言うと筋が通らないか」

 「そうだね。でも、あぁ、どうしたもんなんだろう」

 自分が皇帝にならなくても政務院とかが国を回してくれるんじゃないかな、そんな悪魔の声に耳を貸しそうになるけれど、政務院が何とかしても一時的に国が荒れてしまう事は変わらないし、私のわがままで貧しい人が死んでしまうと言うのもいけない。

 「私さ、思うんだ。私は教会の遠征団に入りたいって思ってるけど、多分私はなれないんだと思う。でもそれが私の幸せになれない理由にはならないとも思うんだ。結局、どんな場所でも幸せになれる可能性はあるはずだし」

 でも皇帝になったらその可能性が限りなく小さくなってしまう事に変わりはないだろう、そう反論してしまおうかと思ったけれど、彼女は私を慰めている訳で、これに反論するのは慰めに対する不義理になってしまうからしてはいけないはずだ。

 「なら私は皇帝になって、それでどうしたいんだろう」

 皇帝になった後、幸せになるには私のやりたい事をしなくちゃならない。でも私にはやりたいことなんてない。あるとすれば毎日美味しい食事をして温かいお風呂に入って夜ぐっすり眠ることだけれど、それは今でもできてるし皇帝になったらなったで忙しくて夜ぐっすり眠れなくなる可能性だってある。それは今ある幸せを皇帝としての責務が損なってしまっていると取れるから、そんな状態で皇帝である中で幸せを探せる訳がないんだ。

 「思いつかないな、どうしても。皇帝としての目的なしで皇帝なんてやってもその地位を恨むだけなのに」

 その時、ユリアンの碧眼が私の瞳を覗き込んだ。

 「どうしても無いならさ、私を目的にしてよ」

 「それは、どう言う意味?」

 「スカートを履いたまま皇帝になってよ」

 つまり私が、男であるヘリオース・エルガーベラスが女の服を着たまま皇帝になって、男と女の垣根を少しだけでも低くできたのならば、ユリアンのような女性が遠征団員になれるのかもしれないと言う訳か。でもそれはきっと恐ろしい選択だ。だってまだこの世界の暦はまだ342年、変な事をして歴史を捻じ曲げてしまう事になってしまはないだろうか。
 でもそれでも良いかもしれない。平等とかそう言うのではなく、純粋に目の前にいる友人の為になる選択をして友人の為になったのであれば、私は皇帝になったと言う選択を後悔しないと思う。

 「それは、良いかもしれない。そうだな、多分それが役割なのかもしれない」

 役割、これは多分私の私でない、私の肉体に引っ張れた私が発した言葉だろう。貴族として育てられたこの肉体は社会に対して享受した利益を還元する事を本能としてる。それはについての善悪を述べる気は毛頭ないけれど、私の心が歪められる感覚というのは、存外怖いものだ。





スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む いきなり結婚ってどういう事なのさ


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 「待ってくださいお母様どういう事なんです?だってこの前皇帝決まったばかりじゃないですか、たしかヘラヘラ帝が死んで、それでその弟さんが……」
 「死んだわ。血筋が弱くて正統性がない。それでいてせっかく軍部が担ぎ上げてくれたのに弱腰過ぎて話にならないから殺されたの」
 「それとこれと何の関係が?ヘラヘラ帝の弟さんが死んだとして、どうして私が皇帝にならなくてはならないんです?他の者では……」
 母は頭を抱えながらこう答えた。
 「メアリ母様が軍部の前で私の娘の子は、つまり貴方はヘラヘラ帝の隠し子だって宣言したのです。私が不倫してって。元々私のお父様が神殿付きの神官だったことも変に説得性増しちゃって。もう収集がつかなくなってしまったので貴方が皇帝になるしかなくなってしまったのです」
 私が皇帝?マレ・ノストルムの皇帝?あり得ない。
 「少しだけ、考える時間を下さい。落ち着きたいんです」
 私は逃げるように当主の部屋を出て図書室に向かって、そしてユリアンに全てを話した。私が皇帝になるかもしれないと、そう話した。吐き出すように話したのだ。
 「ヘリオは皇帝になりたくないの?」
 皇帝になりたいか否か。こんなのなりたくないに決まってる。確かに皇帝という地位は神のような地位だけれど、でもヘラヘラ帝とかその弟が暗殺されたように、皇帝の死因はほとんど暗殺だ。それを知っていてなりたいなんて言える訳がない。
 でも私が皇帝にならなかったらこの事態が収集できなくて大変なことになる。
 「なりたくはないよ、でもやらなくちゃならないとは、思ってる」
 例え私がどう思っていても、マレ・ノストルムという国がこの時代に生きる私たちにとって世界そのものであるという事実は変わらない。だから合理的に考えれば私が皇帝にならないという選択肢はない。国がなければ人は生きて行けないのだから。
 でもだからと言って何で私がという気持ちが拭える訳では無い。私はそこまで合理的にはなれないよ。
 「ならやるしかないんじゃないかなってのは、私が言うと筋が通らないか」
 「そうだね。でも、あぁ、どうしたもんなんだろう」
 自分が皇帝にならなくても政務院とかが国を回してくれるんじゃないかな、そんな悪魔の声に耳を貸しそうになるけれど、政務院が何とかしても一時的に国が荒れてしまう事は変わらないし、私のわがままで貧しい人が死んでしまうと言うのもいけない。
 「私さ、思うんだ。私は教会の遠征団に入りたいって思ってるけど、多分私はなれないんだと思う。でもそれが私の幸せになれない理由にはならないとも思うんだ。結局、どんな場所でも幸せになれる可能性はあるはずだし」
 でも皇帝になったらその可能性が限りなく小さくなってしまう事に変わりはないだろう、そう反論してしまおうかと思ったけれど、彼女は私を慰めている訳で、これに反論するのは慰めに対する不義理になってしまうからしてはいけないはずだ。
 「なら私は皇帝になって、それでどうしたいんだろう」
 皇帝になった後、幸せになるには私のやりたい事をしなくちゃならない。でも私にはやりたいことなんてない。あるとすれば毎日美味しい食事をして温かいお風呂に入って夜ぐっすり眠ることだけれど、それは今でもできてるし皇帝になったらなったで忙しくて夜ぐっすり眠れなくなる可能性だってある。それは今ある幸せを皇帝としての責務が損なってしまっていると取れるから、そんな状態で皇帝である中で幸せを探せる訳がないんだ。
 「思いつかないな、どうしても。皇帝としての目的なしで皇帝なんてやってもその地位を恨むだけなのに」
 その時、ユリアンの碧眼が私の瞳を覗き込んだ。
 「どうしても無いならさ、私を目的にしてよ」
 「それは、どう言う意味?」
 「スカートを履いたまま皇帝になってよ」
 つまり私が、男であるヘリオース・エルガーベラスが女の服を着たまま皇帝になって、男と女の垣根を少しだけでも低くできたのならば、ユリアンのような女性が遠征団員になれるのかもしれないと言う訳か。でもそれはきっと恐ろしい選択だ。だってまだこの世界の暦はまだ342年、変な事をして歴史を捻じ曲げてしまう事になってしまはないだろうか。
 でもそれでも良いかもしれない。平等とかそう言うのではなく、純粋に目の前にいる友人の為になる選択をして友人の為になったのであれば、私は皇帝になったと言う選択を後悔しないと思う。
 「それは、良いかもしれない。そうだな、多分それが役割なのかもしれない」
 役割、これは多分私の私でない、私の肉体に引っ張れた私が発した言葉だろう。貴族として育てられたこの肉体は社会に対して享受した利益を還元する事を本能としてる。それはについての善悪を述べる気は毛頭ないけれど、私の心が歪められる感覚というのは、存外怖いものだ。