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はじめまして、また会えるよ

ー/ー





『十五までは守られる時期、
好奇心から学びを経て沢山の経験を積むべし。
先生の話をよく聞くこと。
まだ男女の交際をするには早熟過ぎる。

十六から二十九までが恋の時期、
ここで運命の相手を見つけよ。
女性から言い寄るのは品がない。
男性から心を寄せ声をかけるべし。 
この時期までに一人目を妊娠するべき。

三十から六十は運命の相手との子を育て、
またその孫も愛する時期。
子供二人目を作ってもいい。
もちろん、三人が一番理想的。

八十は生き延びたことに感謝し土に還る。
そして新たな命と共にまた生き返る。』

田舎生まれの彼の実家に招待され重たい足を運ぶ。
店は小さな商店と酒とタバコしか置いてないコンビニしかなく、カフェや服屋などは見当たらない。

「……ねぇ悠人、いきなり実家に出向いて彼女妊娠してますなんて言ったら、ご両親怒るんじゃないかな……」
冷や汗が止まらない私とは裏腹に、彼は
「大丈夫でしょー、初孫だし喜ぶんじゃない?」
と呑気にあぜ道を運転する。
私と彼は付き合って3年になる。
そろそろ結婚を考えるか……と思ったタイミングでの妊娠。
私の親は
「ありえない!!」
と最初は怒り狂っていたが、今はベビー用品を一緒に見に行くまで落ち着いた。

彼の実家に着く。
蝉の声が騒がしいが、
怒られる恐怖に、それどころではなかった。
一般的な二世帯住宅といったところか、よくある古い物件だった。

「いらっしゃい!よく来たね〜」
玄関を開け恐る恐る前を見ると、私の想像とは正反対の、明るく優しそうなお義母さんが立っていた。
「もう!あんたまた呑気な顔して、体調崩しやすい時期なんだからしっかりしなさい!」
ごめんね〜、大変でしょ?そう言って
そっと麦茶を出してくれた。
「あ、すみません、ありがとうございます……」
振り絞る声で礼を言うと、お義母さんはまたにこやかに
「いいのよ〜。
ごめんなさいね、知らない土地の知らない人に囲まれたら緊張しちゃうね。
部屋、用意したからゆっくりしてね」
そう言って部屋を案内してくれた。
田舎は色々と怖いイメージが多かったけど、少し安心した。

しばらくして御手洗に立つ。
用を済ませ部屋に戻る途中、お婆ちゃんに声を掛けられた。
「もしも、お姉さん。お嫁さんね?」
「……え?は、はい……そうですけど」
「ちょっとこっちこんね、婆ちゃんとお話しようか」
小さな和室に手招きされる。
物ひとつない、整理された部屋だった。
「部屋は暑くねえか?」
「はい……」
「そりゃよかった。歳とるとね、暑いも寒いも分からんくなるのよ」
「そうですか……」
「うちの村は、昔から決まりがあってねぇ。
『十五までは子供。
十六から二十九までが恋の時期、この時期までに一人目を妊娠せんといかん。
これはちゃんと守れてあの子は偉かったね。
三十から六十は運命の相手との子育て、もちろん何人産んでもいいけど、三人が一番よかね。

そしてね八十は生き延びたことに感謝して土に還るのよ。

そして
新たな命と共にまた生き返るの。』
……昔からの決まりよ。
婆ちゃんもね、ありがたいこと80まで生き延びれたんよ」
「へ、へぇー……そうなんですか……」
そしてお婆ちゃんは私のお腹をじっと見る。
「今何ヶ月目ね?」
「5ヶ月です……」
「安定期やね、昔の人は生まれるまで働いてたよ、今の人はよかねぇ!」
「はは、そうですか……」
「……あなたが来てくれてよかった、本当によかったよ。
婆ちゃんはこの子の顔を見ることは出来ないけど、応援してるからね」
そう言ってゆっくりと私のお腹を撫でてきた。
……先が長くない、病気か何かなのだろうか?
「婆ちゃんの話を聞いてくれてありがとうね。ゆっくり立ちなさいよ」
「はい……」
……それでは、と言い私は部屋に向かった。

夜も更け、食卓には豪華なご飯が並ぶ。
「ちょっとね、お母さん頑張っちゃった!
唐揚げと、煮物とサラダとね……
あ!食べられない物とかある?大丈夫?
苦手だったら残してね!」
明るいお義母さんにほっこりする。
私は唐揚げをひと口たべた。
少し癖があり繊維が少なく柔らかい肉質だ。
唐揚げを食べてお義父さんが一言
「そうか、今月は廻りの月か〜。母さん頑張ったもんな。
最後に君に会えてよかったって喜んでたよ」
ビールを一気に飲み干し私に笑顔を向ける。
少し目が赤いが酔っているのだろうか?
「よかったね、ばーちゃんに会えたんだ?なんか言ってた?」
相変わらず呑気な声で私に話しかける彼
「何って、あなたに会えてよかった。
婆ちゃんはこの子の顔を見ることは出来ないけどー……みたいなこと言ってたよ?
失礼だけど何かご病気でもされてるのかな?」
「ん?今月はね、ばーちゃんの廻りの月なんだよね。
八十からはなんとかーとか聞かなかった?」
「聞いたけど……それがどうしたの?」
そして彼はゆっくり微笑みながら答えた。
「ばーちゃんね、新しい命に生まれ変わる準備をしてるんよ」
「え?」
「ばーちゃんね、今日で終わりなんよ。だから君に食べてもらった」
「……は、は?え……?じゃあ、お婆ちゃんは……」
「多分、これかな」
そう言って彼はさっきまで食べてた唐揚げを指した。
箸が手から落ちる。目の前が真っ白になった。
「ゔぇ……ッ、ゔ……ぁ」
冷や汗が止まらない、胃が熱い。
強い吐き気が込み上げてくる。
「大丈夫?ごめん、ちょっと変わってたよね
ゆっくり息吸って……深呼吸して?」
彼が背中を撫でる
「あれ、ちゃんと血は抜いたはずなんだけど、不味かった?」
ティッシュを持ってお義母さんが駆けつける。
「ぁ……ぁ……やだ……やだ来ないで……」
「説明会が足りなかったね、ごめんね
でもここではこれが普通なんだよ、きっと婆ちゃんもお腹の中で喜んでるから、分かって、ね?」

肉の感触と味がまだ口の中に残るまま、えずくことしか出来ない。お腹の子は一体誰なのだろうか。


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好奇心から学びを経て沢山の経験を積むべし。
先生の話をよく聞くこと。
まだ男女の交際をするには早熟過ぎる。
十六から二十九までが恋の時期、
ここで運命の相手を見つけよ。
女性から言い寄るのは品がない。
男性から心を寄せ声をかけるべし。 
この時期までに一人目を妊娠するべき。
三十から六十は運命の相手との子を育て、
またその孫も愛する時期。
子供二人目を作ってもいい。
もちろん、三人が一番理想的。
八十は生き延びたことに感謝し土に還る。
そして新たな命と共にまた生き返る。』
田舎生まれの彼の実家に招待され重たい足を運ぶ。
店は小さな商店と酒とタバコしか置いてないコンビニしかなく、カフェや服屋などは見当たらない。
「……ねぇ悠人、いきなり実家に出向いて彼女妊娠してますなんて言ったら、ご両親怒るんじゃないかな……」
冷や汗が止まらない私とは裏腹に、彼は
「大丈夫でしょー、初孫だし喜ぶんじゃない?」
と呑気にあぜ道を運転する。
私と彼は付き合って3年になる。
そろそろ結婚を考えるか……と思ったタイミングでの妊娠。
私の親は
「ありえない!!」
と最初は怒り狂っていたが、今はベビー用品を一緒に見に行くまで落ち着いた。
彼の実家に着く。
蝉の声が騒がしいが、
怒られる恐怖に、それどころではなかった。
一般的な二世帯住宅といったところか、よくある古い物件だった。
「いらっしゃい!よく来たね〜」
玄関を開け恐る恐る前を見ると、私の想像とは正反対の、明るく優しそうなお義母さんが立っていた。
「もう!あんたまた呑気な顔して、体調崩しやすい時期なんだからしっかりしなさい!」
ごめんね〜、大変でしょ?そう言って
そっと麦茶を出してくれた。
「あ、すみません、ありがとうございます……」
振り絞る声で礼を言うと、お義母さんはまたにこやかに
「いいのよ〜。
ごめんなさいね、知らない土地の知らない人に囲まれたら緊張しちゃうね。
部屋、用意したからゆっくりしてね」
そう言って部屋を案内してくれた。
田舎は色々と怖いイメージが多かったけど、少し安心した。
しばらくして御手洗に立つ。
用を済ませ部屋に戻る途中、お婆ちゃんに声を掛けられた。
「もしも、お姉さん。お嫁さんね?」
「……え?は、はい……そうですけど」
「ちょっとこっちこんね、婆ちゃんとお話しようか」
小さな和室に手招きされる。
物ひとつない、整理された部屋だった。
「部屋は暑くねえか?」
「はい……」
「そりゃよかった。歳とるとね、暑いも寒いも分からんくなるのよ」
「そうですか……」
「うちの村は、昔から決まりがあってねぇ。
『十五までは子供。
十六から二十九までが恋の時期、この時期までに一人目を妊娠せんといかん。
これはちゃんと守れてあの子は偉かったね。
三十から六十は運命の相手との子育て、もちろん何人産んでもいいけど、三人が一番よかね。
そしてね八十は生き延びたことに感謝して土に還るのよ。
そして
新たな命と共にまた生き返るの。』
……昔からの決まりよ。
婆ちゃんもね、ありがたいこと80まで生き延びれたんよ」
「へ、へぇー……そうなんですか……」
そしてお婆ちゃんは私のお腹をじっと見る。
「今何ヶ月目ね?」
「5ヶ月です……」
「安定期やね、昔の人は生まれるまで働いてたよ、今の人はよかねぇ!」
「はは、そうですか……」
「……あなたが来てくれてよかった、本当によかったよ。
婆ちゃんはこの子の顔を見ることは出来ないけど、応援してるからね」
そう言ってゆっくりと私のお腹を撫でてきた。
……先が長くない、病気か何かなのだろうか?
「婆ちゃんの話を聞いてくれてありがとうね。ゆっくり立ちなさいよ」
「はい……」
……それでは、と言い私は部屋に向かった。
夜も更け、食卓には豪華なご飯が並ぶ。
「ちょっとね、お母さん頑張っちゃった!
唐揚げと、煮物とサラダとね……
あ!食べられない物とかある?大丈夫?
苦手だったら残してね!」
明るいお義母さんにほっこりする。
私は唐揚げをひと口たべた。
少し癖があり繊維が少なく柔らかい肉質だ。
唐揚げを食べてお義父さんが一言
「そうか、今月は廻りの月か〜。母さん頑張ったもんな。
最後に君に会えてよかったって喜んでたよ」
ビールを一気に飲み干し私に笑顔を向ける。
少し目が赤いが酔っているのだろうか?
「よかったね、ばーちゃんに会えたんだ?なんか言ってた?」
相変わらず呑気な声で私に話しかける彼
「何って、あなたに会えてよかった。
婆ちゃんはこの子の顔を見ることは出来ないけどー……みたいなこと言ってたよ?
失礼だけど何かご病気でもされてるのかな?」
「ん?今月はね、ばーちゃんの廻りの月なんだよね。
八十からはなんとかーとか聞かなかった?」
「聞いたけど……それがどうしたの?」
そして彼はゆっくり微笑みながら答えた。
「ばーちゃんね、新しい命に生まれ変わる準備をしてるんよ」
「え?」
「ばーちゃんね、今日で終わりなんよ。だから君に食べてもらった」
「……は、は?え……?じゃあ、お婆ちゃんは……」
「多分、これかな」
そう言って彼はさっきまで食べてた唐揚げを指した。
箸が手から落ちる。目の前が真っ白になった。
「ゔぇ……ッ、ゔ……ぁ」
冷や汗が止まらない、胃が熱い。
強い吐き気が込み上げてくる。
「大丈夫?ごめん、ちょっと変わってたよね
ゆっくり息吸って……深呼吸して?」
彼が背中を撫でる
「あれ、ちゃんと血は抜いたはずなんだけど、不味かった?」
ティッシュを持ってお義母さんが駆けつける。
「ぁ……ぁ……やだ……やだ来ないで……」
「説明会が足りなかったね、ごめんね
でもここではこれが普通なんだよ、きっと婆ちゃんもお腹の中で喜んでるから、分かって、ね?」
肉の感触と味がまだ口の中に残るまま、えずくことしか出来ない。お腹の子は一体誰なのだろうか。