地元の名産物を語る【文語体】
ー/ー ワタシは地元を愛している。ワタシの地元愛は深淵並の深さがあるため、比較することが難しい。今日、ワタシの目の前に居る、地元に無頓着な男に私は地元を説く。
「当地の名産物は複数あるがまず筆頭にあがるのは養豚業が盛んであることが有名だ。地元観光地で提供されるソーセージは非常に濃厚な味わいがあり、噛むと溢れ出る汁は、水っぽさまったくなく、肉の旨味と油が感じ取れる。観光客の目玉商品として賑わっている。また地元の養豚業者は加工も行なっており、工場ではソーセージをはじめ、豚漬けという味噌に豚をつけた製品も名物となっている」
その言葉に無頓着な男は言う。
「ソーセージは良質なものは皆そのような特徴を持っている。確かに味噌豚は独自かも知れない。生姜焼きとは何が違うのか、返答を求める」
まさに地元愛のない言葉であった。
「わからないものを説明することは出来ない。食べることで味、食感を確認するべきだと考える」
「いいでしょう。これは一旦美味しいものだと思われる事にしましょう。他にいいものはあるだろうか?」
ワタシには造作もないことだった。言葉を続ける。
「次におすすめするものは日本酒。地域柄、標高の高い森林地帯から流れ出る良質な水源と、極端に標高の低い地域で取れる米を用いた地元の酒はとても甘く、そしてフルーティーな味わい。東北の酒のような、まるで蒸留酒のようなカラッとした味とは対角線上にある、カクテルにも似たような文字通りの「甘み」を持つ。有名どころで言うならば獺祭のような地酒もフルーティーと表現されるため、同じような味を持っている可能性がある。恐らくこのフルーティーさは辛口から日本酒に触れた方にとっては日本酒という酒の奥深さ、幅の広さを教えてくれる一口となっている。また獺祭と違い、知名度が低いため、価格が安価なのも魅力の一つである」
ワタシが地酒について語ると無頓着な男は反論した。
「ボクは酒に詳しくない……貴方が酒が好きだという事実はよく伝わった」
ワタシは怒りを抑えて語る。
「確かにワタシは酒が好きだ、しかし今の話を聞いて酒が好きなだけというのはいささか乱暴な指摘であると思われる。君は論理的思考を放棄しているのではないだろうかとワタシは考えるが」
すると無頓着な男は答えた。
「わかった。ただ知らないものに対して考えを適用することは誠意に欠けると思おって私は沈黙を選んだ。それを咎めることは貴方の誠意として正しいのか?」
ワタシの郷土愛を布教する試みは茨の道だと認識した。
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