10話 私の愛するふたりの天使
ー/ー 星域から帰ってきて、疲労でぐったりとしていた俺は、襲い来る睡魔に耐えきれず、すぐに布団に入った。
「ちゃんと、話したいこと話せた?」
「はい。なんかスッキリしたのです」
残された2人は暗闇の中で、部屋の壁に寄りかかりながら膝を抱えて小声で話している。
「まだアレシアのことで人間を憎んでる?」
エルシオの表情が変わり、場の雰囲気が冷たくなるのを感じた。
「知能の高い死神は地獄に落ちた人間そのものです。アレシアを殺したのは人間なのです。だから、私は人間を」
「好きになれない。ってことなんでしょ?」
「そんなことはないのです。ただ、あそこでくたばってる人間は、悪くない。だから、嫌う対象から外したのです」
「対象ねぇ〜」そうフィロは呟き、少し間をおいて続ける。
「エルシオはアレシアのこと、大好きだったもんね」
「……それより、粉についてですが、人間に渡して平気なのですか?」
「私は、楓のこと信じてるから」
エルシオの質問に、即答するフィロ。まるで、そう質問された時の答えを用意していたかのように思えた。
「なら……良かったのです。じゃあ、アレシアのお墓参りに行ってくるのです」
「ねえ、あそこでくたばってる人間にアレシアのことを話してもいい?」
「はい。別に隠すようなことでもないので」
今度は、エルシオがそうフィロの問いに即答した。
フィロの返事を待つことなく、ゲートを開いたエルシオはそこに飛び込んだ。
「聞いてたんでしょ? 楓はどう思う?」
俺は盗み聞きしてしまったことにバツの悪さを感じ、頭を掻きながらゆっくりと起き上がる。寝ようとは思っていたが、何やら2人小声で話し始めたためなかなか寝付けなかった。それにフィロの声量はあえて俺に聞かせていたようにも思える。
「まあ……良くはないよな。あいつは自分の気持ちに嘘ついて、蓋してる。それはわかる」
それを聞いたフィロは、嬉しそうなニコッとした笑顔を俺に見せると「そうだね」と応える。
「てか、壺ってなんかあんのか?」
「そんなの、気にしなくていいわよ」
「そうか」と納得しきれない部分もあったが、追求することなく俺はそう答えた。壺のことよりも、エルシオのことが気になっていたからだ。救ってあげたい。そう他人に思いを抱いたことは、俺にとってとても珍しいことだった。
エルシオに、人間を好きになってもらいたいとか、人間を恨むのをやめて欲しいとか、そんなことではない。
「何がともあれ、俺はエルシオを幸せにしたい」
「幸せに……か、楓も、私と同じってことね」
まだ会って数日しか経っていない少女に対してそんな思いを抱くのは、不自然なことなのだろう。だが、そんな不自然を覆し、自然なことにしてしまうのには理由がある。
エルシオが人間のことを嫌っている。そんなエルシオに、人間を好きになってもらいたい。その願望は、俺の自己中心的な考え方であり、エルシオの幸せではない。だから、そういうことならこんな気持ちにはならなかった。
今のエルシオは人間を嫌ってはいないのだ。エルシオは人間のことが好きだ。それなのにエルシオは、人間を好きにならない、いや、なれないのだ。だから、俺はエルシオをに気づいて欲しかった。なぜならそれは、とても辛いことだから。
人間を幸せにする仕事をしているのだ。エルシオにも、幸せになる権利はある。
それに、もう1つ幸せにしてやりたい理由がある。
「友達に、そんなことを思うのは不自然かな」
「全然。私だって、赤の他人に幸せを振り撒いてるのよ?」
「そうだな」と、思わず俺は笑顔を見せる。そんな俺を見て、フィロも微笑した後、あることを提案する。
「エルシオ、アレシアに会いに行ったら暫く帰ってこないの。だから、少し昔話をしてもいい?」
「エルシオとアレシアのことか?」
「そう。楓には知ってて欲しいの。私の愛する、ふたりの天使のお話」
「ちゃんと、話したいこと話せた?」
「はい。なんかスッキリしたのです」
残された2人は暗闇の中で、部屋の壁に寄りかかりながら膝を抱えて小声で話している。
「まだアレシアのことで人間を憎んでる?」
エルシオの表情が変わり、場の雰囲気が冷たくなるのを感じた。
「知能の高い死神は地獄に落ちた人間そのものです。アレシアを殺したのは人間なのです。だから、私は人間を」
「好きになれない。ってことなんでしょ?」
「そんなことはないのです。ただ、あそこでくたばってる人間は、悪くない。だから、嫌う対象から外したのです」
「対象ねぇ〜」そうフィロは呟き、少し間をおいて続ける。
「エルシオはアレシアのこと、大好きだったもんね」
「……それより、粉についてですが、人間に渡して平気なのですか?」
「私は、楓のこと信じてるから」
エルシオの質問に、即答するフィロ。まるで、そう質問された時の答えを用意していたかのように思えた。
「なら……良かったのです。じゃあ、アレシアのお墓参りに行ってくるのです」
「ねえ、あそこでくたばってる人間にアレシアのことを話してもいい?」
「はい。別に隠すようなことでもないので」
今度は、エルシオがそうフィロの問いに即答した。
フィロの返事を待つことなく、ゲートを開いたエルシオはそこに飛び込んだ。
「聞いてたんでしょ? 楓はどう思う?」
俺は盗み聞きしてしまったことにバツの悪さを感じ、頭を掻きながらゆっくりと起き上がる。寝ようとは思っていたが、何やら2人小声で話し始めたためなかなか寝付けなかった。それにフィロの声量はあえて俺に聞かせていたようにも思える。
「まあ……良くはないよな。あいつは自分の気持ちに嘘ついて、蓋してる。それはわかる」
それを聞いたフィロは、嬉しそうなニコッとした笑顔を俺に見せると「そうだね」と応える。
「てか、壺ってなんかあんのか?」
「そんなの、気にしなくていいわよ」
「そうか」と納得しきれない部分もあったが、追求することなく俺はそう答えた。壺のことよりも、エルシオのことが気になっていたからだ。救ってあげたい。そう他人に思いを抱いたことは、俺にとってとても珍しいことだった。
エルシオに、人間を好きになってもらいたいとか、人間を恨むのをやめて欲しいとか、そんなことではない。
「何がともあれ、俺はエルシオを幸せにしたい」
「幸せに……か、楓も、私と同じってことね」
まだ会って数日しか経っていない少女に対してそんな思いを抱くのは、不自然なことなのだろう。だが、そんな不自然を覆し、自然なことにしてしまうのには理由がある。
エルシオが人間のことを嫌っている。そんなエルシオに、人間を好きになってもらいたい。その願望は、俺の自己中心的な考え方であり、エルシオの幸せではない。だから、そういうことならこんな気持ちにはならなかった。
今のエルシオは人間を嫌ってはいないのだ。エルシオは人間のことが好きだ。それなのにエルシオは、人間を好きにならない、いや、なれないのだ。だから、俺はエルシオをに気づいて欲しかった。なぜならそれは、とても辛いことだから。
人間を幸せにする仕事をしているのだ。エルシオにも、幸せになる権利はある。
それに、もう1つ幸せにしてやりたい理由がある。
「友達に、そんなことを思うのは不自然かな」
「全然。私だって、赤の他人に幸せを振り撒いてるのよ?」
「そうだな」と、思わず俺は笑顔を見せる。そんな俺を見て、フィロも微笑した後、あることを提案する。
「エルシオ、アレシアに会いに行ったら暫く帰ってこないの。だから、少し昔話をしてもいい?」
「エルシオとアレシアのことか?」
「そう。楓には知ってて欲しいの。私の愛する、ふたりの天使のお話」
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