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森の街ウィレルへ〜ウィシュ茸の薫りに導かれ〜

ー/ー



 「片眼鏡に黒いチョーカー、白の法衣を着た女神官って…………本当にいたんだな」

 「どんな怪我や病気も癒すっていう噂の神官だよな。確か、対価は……………」

 街道ですれ違う行商人さんの会話が聞こえました。優雅にお辞儀をしてから、疑問の答えをお教えします。

 「神に捧げる熱い愛ですわ。癒しをお望みになる際はわたくしを愛してくださいね。では、ごめんあそばせ」

 呆気にとられているお二人の脇を通り、次の街を目指します。
 
 エメラルドグリーンの髪をかき上げて、今日も旅を続ける。私の名はアリス、愛の神様に全てを捧げた者です。

 妖艶にして荘厳。

 耽美にして博愛。

 愛の神様がお授けくださった、黒き聖典を胸に抱く者。癒しを待つ子羊を救うのが私の使命です。

 私は愛の神様の導きにより失った手足を癒し、病を快癒させる力を頂いています。神より授かったこの力の対価は愛です。

 神様が望む愛。

 それ以外はいりません。愛の神様の癒やしの対価は金銭では受け取りません。

 全て断ります。

 中には偽りの愛で私を謀る者もいますが、全て看破し相応の罰を与えます。このことは各地に私の容姿と愛が対価という噂と共に広まっています。

 先ほどの商人さん達のように旅人を中心として噂は流れ、片眼鏡に黒いチョーカー、白の法衣を着た女神官は、愛を対価にどんな傷や病も癒すと吟遊詩人にも歌われています。

 それはさておき、あぁ旅は楽しいですね。私は、商業で栄える『ウィレル』という中規模都市の特産物を思い浮かべます。

 ウィレルの近くには豊かな大森林が広がっており、獣の肉やキノコ等の加工品がたくさん生産されています。

 その中でも私はとても希少なキノコである『ウィシュ茸』の発酵漬けが大好物です。各地で見かけるたびに食しています。

 とにかく濃厚でパンに塗ってもスープに一垂らし入れても、その芳醇でなんとも言えない奥深い味わいが癖になります。

 発酵食品のため、私が今まで食してきたのは熱を入れ発酵を止めたものばかりです。ある行商人に聞いたところ、生の火が入らぬ物は別物と感じられるくらいの味わいとのこと。これは食べないとですね。

 私は気ままな一人旅。行く先を変えるのは気軽です。そのような経緯で私はこの街を次の目的地としたのです。

 街に入りマーケットを目指します。ここは、森林資源が豊富なこともあり、街の雰囲気が他の都市と違う気がします。

 露店で売られているものが畑などで採れたものよりも森林で採ってきたものが圧倒的に多いのです。他の街では見かけない果物や獣の肉が沢山並んでいます。

 キョロキョロしながらお目当てのものを探しますが他にも美味しそうなものが沢山あり目移りしてしまいます。

 気がつくと、鳥さんの甘辛串焼きと、少し酸味のある木の実のジュースを手に持っていました。持っているだけではなんですから、モグモグしながら参りましょう。

 この鳥さん、甘辛いタレの味だけじゃありません。少し酸味があります、これはきのみのジャムか何かに漬け込んでますね。

 少し筋の多いお肉が柔らかく口の中で溶け、タレの甘さを酸味が際立たせていて美味です。また、ジュースは違った酸味でお口が爽やかになります。

 これは、優勝ですね。勝ちです勝ち!

 と、美味しい物を食べながらしばらく探していると、ウィシュ茸の発酵漬けを見つけたのですが…………生のものはなく、いつもの火入れしたものしかなくガッカリです。

 生のものはないのか聞くと、ここ半年ほどウィシュ茸の納品がなく新しいものが作れていないとのことでした。

 次の納品を聞きましたが残念ながら納品元の方がしばらくいらっしゃっていないとのこと。

 ここまで来て、食べられないなんて。愛の神様…………これは試練ですか?

 しばらく放心しましたが、気を取り直し傭兵ギルドに向かいます。長期戦に切り替えます。ここは、大森林のお膝元なので獣や魔獣と戦う傭兵たちが多いので怪我人が多いのです。

 愛の神様から頂いた特別な癒しの対価は熱き愛しかいただきませんが、それだけだと私は美味しいものをいただけません。

 なので、定期的に傭兵ギルド等で傷付いた方を普通の魔術回路で癒しお金を頂きます。

 生きていくのにお金は必須ですし、茸の納品を待つ間の宿代が必要です。稼げるときに稼ぐのです。

 愛の神様も、お金大事って黒き聖典の中で仰ってます。

 さて、傭兵ギルド等荒事が得意な方が集まる場所は大抵の街で表通りから一本奥に入った少し裏路地に近いあたりにあります。ですが、この街は大森林の魔獣等を退治するのに傭兵が必要ということもあり広い通りにあります。

 印象隠蔽と容姿撹乱の魔術回路を展開します。こうすることでほとんどの人は、なんとなくしか私の事を認識できなくなります。

 愛の神官は傭兵の中ではかなり有名なので、私と知られると癒やしを乞う方が多くいらっしゃるので目立たないようにしています。

 傭兵ギルドは大概交流の場を兼ねた酒場と併設されており、カウンターには受付兼バーテンダー的な人がいるのが一般的です。

 ウィレルの傭兵ギルドも酒場が併設されていますが傭兵のお仕事が多いようで、迷宮があるような巨大な都市と同様にバーカウンターとギルドの受付が分かれています。

 私は三つあるギルドの受け付けの内、良い体格の自らも傭兵業をしていそうな栗毛の男性の窓口に向かいます。

 上腕の筋肉が見える、袖のないシャツを着ていらっしゃるのも選定のポイントです。私、惚れっぽい自覚あります。お相手はいるのかしら?  いらっしゃらなかったら………お茶のお誘いしてみましょうかしら?

 逞しい男性の窓口で、傭兵登録証を提示して傷の治療の案件がないか、付き合っている方はいらっしゃるか確認します。

 残念ながら、受け付けの男性には妻子がいらっしゃるとの事でした。仕方ありません、人のものは取ったらダメ、ゼッタイという愛の神様の教えに従い私の片思い終了です。

 お仕事の方は何人か怪我人がいらっしゃるそうなので応募を受けるようお伝えします。

 案内を受け、酒場の奥にある衝立で仕切ってあるスペースに移動します。個別に魔術のサービスを請け負う術師の為に大きな街の傭兵ギルドにはこのようなスペースがあります。

 ここは、中程度の街ですが傭兵が多くいる為、術師の需要が多くきちんと場所が確保されているのでしょう。

 衝立に、治癒術師というプレートと私の「スードニム」という偽名の札がかかります。

 早速、女性の方とお仲間がいらっしゃいます。右の太ももに血まみれの包帯を巻いています。おそらくまだ完全に血が止まっていません。すぐに簡易ベットに横になっていただきます。

 お連れの男性二人には衝立の外に出ていただき、手早く止血の魔術回路を組んで魔力を流し発動します。

 包帯を丁寧に解いていきます。血がこびり付いているので傷が開かないよう水筒の水をかけながらゆっくりと剥がしていきます。

 かなり大きな傷口です。大猪の牙に引っ掛けた感じですね。もう少し抉られていたら足は動かなくなっていたことでしょう、ただほおっておけば…………深いし広い傷です。

 すぐバーテンダーさんに、バケツに水を持ってくるよう指示いたします。

 水を待つ間バックの中から薬草を取り出して口に含みクチャクチャと噛みます。ある程度砕けたものを伸ばしながら傷口に塗りつけて…………

 「うっ」

 うめき声を上げる女性。かなり痛むと思いますが、我慢強いですね、さすが傭兵さんです。必ず綺麗に治しますね。

 「私を信じてくださいますか? 眠りの術で寝かせて治療します、良いですか?」

 お連れの方も含めて確認を取ります。

 皆、頷いてくれます。今回偶然ですが、私が来ていなければこの方の脚は二度と動かなかったかも知れません。

 全ては、愛の神様のお導きですね。

 さっそく術を発動し女性を深い眠りに落とします。

 法衣の裏地に隠したナイフで傷口の表面を削いでいきます。正確に、かつ素早く傷口にナイフを差し入れます。

 血が噴き出しますが、バーテンダーさんの持ってきた水をかけ、傷口を確認しながらさらに肉を躊躇なく剥いていきます。

 先程の薬草で傷口部分が泡立っているので、それを頼りにナイフをめり込ませていきます。

 赤々とした傷口から血が滴りますが水で流します。

 傷口の形と、左足の太ももの形を観察し頭の中に刻み込みます。そして、刻み込んだ太ももの形を元にして治療の魔術回路を再構築。

 新しく創り出した魔術回路に魔力を流し新陳代謝を最大限まで引き出す魔術を行使します。

 モゾモゾと傷口がうねりだし早送りのように肉が盛り上がります。みるみる傷口が塞がっていきます。

 タイミングを見計らい魔術破壊の魔力回路を使って治癒を止めます。よく見れば少し肌の色が違いますが、概ね綺麗な太ももが蘇りました。

 ふぅ~、普通の術の応用で治る程度の傷で良かったです。

 お連れの方にお声がけをしますと、とても喜んでくださいました。

 女性の方はしばらく寝ていただきます。自然治癒力を強制的に引き上げて治しましたので、ひどく疲れているはずです。お連れの方にも説明いたしました。

 最後に石畳に何度か水をまき血を排水口に流して終了です。

 しばらく宿に泊まれるほどのお代金をいただけました。この金額はもらい過ぎなのですが、傷が深く致命的でしたので技術料として頂きました。

 その後、酒場で傭兵達に交じり食事とお酒を頂きながら噂を流します。

 愛の神官がこの街を訪れていることと、少し考えれば私が泊まっている宿を特定出来るようなヒントを流しました。

 愛の神様の癒しが必要な方に届くことを願いながら。

 

 

 

 

 


 


 
 

 

 

 

 


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 「どんな怪我や病気も癒すっていう噂の神官だよな。確か、対価は……………」
 街道ですれ違う行商人さんの会話が聞こえました。優雅にお辞儀をしてから、疑問の答えをお教えします。
 「神に捧げる熱い愛ですわ。癒しをお望みになる際はわたくしを愛してくださいね。では、ごめんあそばせ」
 呆気にとられているお二人の脇を通り、次の街を目指します。
 エメラルドグリーンの髪をかき上げて、今日も旅を続ける。私の名はアリス、愛の神様に全てを捧げた者です。
 妖艶にして荘厳。
 耽美にして博愛。
 愛の神様がお授けくださった、黒き聖典を胸に抱く者。癒しを待つ子羊を救うのが私の使命です。
 私は愛の神様の導きにより失った手足を癒し、病を快癒させる力を頂いています。神より授かったこの力の対価は愛です。
 神様が望む愛。
 それ以外はいりません。愛の神様の癒やしの対価は金銭では受け取りません。
 全て断ります。
 中には偽りの愛で私を謀る者もいますが、全て看破し相応の罰を与えます。このことは各地に私の容姿と愛が対価という噂と共に広まっています。
 先ほどの商人さん達のように旅人を中心として噂は流れ、片眼鏡に黒いチョーカー、白の法衣を着た女神官は、愛を対価にどんな傷や病も癒すと吟遊詩人にも歌われています。
 それはさておき、あぁ旅は楽しいですね。私は、商業で栄える『ウィレル』という中規模都市の特産物を思い浮かべます。
 ウィレルの近くには豊かな大森林が広がっており、獣の肉やキノコ等の加工品がたくさん生産されています。
 その中でも私はとても希少なキノコである『ウィシュ茸』の発酵漬けが大好物です。各地で見かけるたびに食しています。
 とにかく濃厚でパンに塗ってもスープに一垂らし入れても、その芳醇でなんとも言えない奥深い味わいが癖になります。
 発酵食品のため、私が今まで食してきたのは熱を入れ発酵を止めたものばかりです。ある行商人に聞いたところ、生の火が入らぬ物は別物と感じられるくらいの味わいとのこと。これは食べないとですね。
 私は気ままな一人旅。行く先を変えるのは気軽です。そのような経緯で私はこの街を次の目的地としたのです。
 街に入りマーケットを目指します。ここは、森林資源が豊富なこともあり、街の雰囲気が他の都市と違う気がします。
 露店で売られているものが畑などで採れたものよりも森林で採ってきたものが圧倒的に多いのです。他の街では見かけない果物や獣の肉が沢山並んでいます。
 キョロキョロしながらお目当てのものを探しますが他にも美味しそうなものが沢山あり目移りしてしまいます。
 気がつくと、鳥さんの甘辛串焼きと、少し酸味のある木の実のジュースを手に持っていました。持っているだけではなんですから、モグモグしながら参りましょう。
 この鳥さん、甘辛いタレの味だけじゃありません。少し酸味があります、これはきのみのジャムか何かに漬け込んでますね。
 少し筋の多いお肉が柔らかく口の中で溶け、タレの甘さを酸味が際立たせていて美味です。また、ジュースは違った酸味でお口が爽やかになります。
 これは、優勝ですね。勝ちです勝ち!
 と、美味しい物を食べながらしばらく探していると、ウィシュ茸の発酵漬けを見つけたのですが…………生のものはなく、いつもの火入れしたものしかなくガッカリです。
 生のものはないのか聞くと、ここ半年ほどウィシュ茸の納品がなく新しいものが作れていないとのことでした。
 次の納品を聞きましたが残念ながら納品元の方がしばらくいらっしゃっていないとのこと。
 ここまで来て、食べられないなんて。愛の神様…………これは試練ですか?
 しばらく放心しましたが、気を取り直し傭兵ギルドに向かいます。長期戦に切り替えます。ここは、大森林のお膝元なので獣や魔獣と戦う傭兵たちが多いので怪我人が多いのです。
 愛の神様から頂いた特別な癒しの対価は熱き愛しかいただきませんが、それだけだと私は美味しいものをいただけません。
 なので、定期的に傭兵ギルド等で傷付いた方を普通の魔術回路で癒しお金を頂きます。
 生きていくのにお金は必須ですし、茸の納品を待つ間の宿代が必要です。稼げるときに稼ぐのです。
 愛の神様も、お金大事って黒き聖典の中で仰ってます。
 さて、傭兵ギルド等荒事が得意な方が集まる場所は大抵の街で表通りから一本奥に入った少し裏路地に近いあたりにあります。ですが、この街は大森林の魔獣等を退治するのに傭兵が必要ということもあり広い通りにあります。
 印象隠蔽と容姿撹乱の魔術回路を展開します。こうすることでほとんどの人は、なんとなくしか私の事を認識できなくなります。
 愛の神官は傭兵の中ではかなり有名なので、私と知られると癒やしを乞う方が多くいらっしゃるので目立たないようにしています。
 傭兵ギルドは大概交流の場を兼ねた酒場と併設されており、カウンターには受付兼バーテンダー的な人がいるのが一般的です。
 ウィレルの傭兵ギルドも酒場が併設されていますが傭兵のお仕事が多いようで、迷宮があるような巨大な都市と同様にバーカウンターとギルドの受付が分かれています。
 私は三つあるギルドの受け付けの内、良い体格の自らも傭兵業をしていそうな栗毛の男性の窓口に向かいます。
 上腕の筋肉が見える、袖のないシャツを着ていらっしゃるのも選定のポイントです。私、惚れっぽい自覚あります。お相手はいるのかしら?  いらっしゃらなかったら………お茶のお誘いしてみましょうかしら?
 逞しい男性の窓口で、傭兵登録証を提示して傷の治療の案件がないか、付き合っている方はいらっしゃるか確認します。
 残念ながら、受け付けの男性には妻子がいらっしゃるとの事でした。仕方ありません、人のものは取ったらダメ、ゼッタイという愛の神様の教えに従い私の片思い終了です。
 お仕事の方は何人か怪我人がいらっしゃるそうなので応募を受けるようお伝えします。
 案内を受け、酒場の奥にある衝立で仕切ってあるスペースに移動します。個別に魔術のサービスを請け負う術師の為に大きな街の傭兵ギルドにはこのようなスペースがあります。
 ここは、中程度の街ですが傭兵が多くいる為、術師の需要が多くきちんと場所が確保されているのでしょう。
 衝立に、治癒術師というプレートと私の「スードニム」という偽名の札がかかります。
 早速、女性の方とお仲間がいらっしゃいます。右の太ももに血まみれの包帯を巻いています。おそらくまだ完全に血が止まっていません。すぐに簡易ベットに横になっていただきます。
 お連れの男性二人には衝立の外に出ていただき、手早く止血の魔術回路を組んで魔力を流し発動します。
 包帯を丁寧に解いていきます。血がこびり付いているので傷が開かないよう水筒の水をかけながらゆっくりと剥がしていきます。
 かなり大きな傷口です。大猪の牙に引っ掛けた感じですね。もう少し抉られていたら足は動かなくなっていたことでしょう、ただほおっておけば…………深いし広い傷です。
 すぐバーテンダーさんに、バケツに水を持ってくるよう指示いたします。
 水を待つ間バックの中から薬草を取り出して口に含みクチャクチャと噛みます。ある程度砕けたものを伸ばしながら傷口に塗りつけて…………
 「うっ」
 うめき声を上げる女性。かなり痛むと思いますが、我慢強いですね、さすが傭兵さんです。必ず綺麗に治しますね。
 「私を信じてくださいますか? 眠りの術で寝かせて治療します、良いですか?」
 お連れの方も含めて確認を取ります。
 皆、頷いてくれます。今回偶然ですが、私が来ていなければこの方の脚は二度と動かなかったかも知れません。
 全ては、愛の神様のお導きですね。
 さっそく術を発動し女性を深い眠りに落とします。
 法衣の裏地に隠したナイフで傷口の表面を削いでいきます。正確に、かつ素早く傷口にナイフを差し入れます。
 血が噴き出しますが、バーテンダーさんの持ってきた水をかけ、傷口を確認しながらさらに肉を躊躇なく剥いていきます。
 先程の薬草で傷口部分が泡立っているので、それを頼りにナイフをめり込ませていきます。
 赤々とした傷口から血が滴りますが水で流します。
 傷口の形と、左足の太ももの形を観察し頭の中に刻み込みます。そして、刻み込んだ太ももの形を元にして治療の魔術回路を再構築。
 新しく創り出した魔術回路に魔力を流し新陳代謝を最大限まで引き出す魔術を行使します。
 モゾモゾと傷口がうねりだし早送りのように肉が盛り上がります。みるみる傷口が塞がっていきます。
 タイミングを見計らい魔術破壊の魔力回路を使って治癒を止めます。よく見れば少し肌の色が違いますが、概ね綺麗な太ももが蘇りました。
 ふぅ~、普通の術の応用で治る程度の傷で良かったです。
 お連れの方にお声がけをしますと、とても喜んでくださいました。
 女性の方はしばらく寝ていただきます。自然治癒力を強制的に引き上げて治しましたので、ひどく疲れているはずです。お連れの方にも説明いたしました。
 最後に石畳に何度か水をまき血を排水口に流して終了です。
 しばらく宿に泊まれるほどのお代金をいただけました。この金額はもらい過ぎなのですが、傷が深く致命的でしたので技術料として頂きました。
 その後、酒場で傭兵達に交じり食事とお酒を頂きながら噂を流します。
 愛の神官がこの街を訪れていることと、少し考えれば私が泊まっている宿を特定出来るようなヒントを流しました。
 愛の神様の癒しが必要な方に届くことを願いながら。