目覚まし
ー/ー 春先のある日。
近所で開催されていたフリーマーケットにフラリと足を運んだ。
手作り感溢れるストラップなどの小物類から衣服、家具やカトラリー、古本まで、道の両脇に多くの出店のシートが並べられている。
その中で、ふと目を引いたのはゼンマイ仕掛けの古めかしい時計、値段は五百円ワンコイン。
何故かは分からないが、それがあまりに魅力的に映って、衝動的に買って帰ることにした。
1Kの狭い部屋へ戻り、とりあえず裏の調整ネジで時間を合わせてゼンマイを巻くと、カチッカチッと音を立てて針が動き出す。
最初は聞きなれない秒針の音が少し気になったが、しばらくすればそれも慣れて気にならなくなった。
その夜のこと。
ジリリリッというけたたましい音に目を覚まし、何事かと慌てて掛け布団を引っ剥がし電気を付ける。
スマホで時間を確認すると深夜の三時過ぎ。
音は棚の上のゼンマイ時計から鳴っているようだった。
手に取って確認すると、どうも時計には目覚ましの機能が付いていたよう。
ただその切り方が分からない。
仕方がないので調整ネジで時間をずらし音を止める。
とりあえず音が止んだことにホッと息を吐き、もう一度布団ヘ戻った。
翌朝、スマートフォンのアラームで目を覚まし、ふとゼンマイ時計へ目をやると、秒針の音はせず針が止まっている。
昨日巻いたゼンマイは切れてしまったらしい。
一晩で止まってしまうようでは時計としては使えないが、元々何となく見た目が気に入って買ってきたものだ。
部屋には壁掛け時計もあるし別に良いか、とゼンマイは巻かずそのまま飾っておくことにした。
それから時計のことなど忘れ職場へ出勤、いつも通りの一日を終え、買い物をしてから家に帰宅する。
夕飯を食べて知り合いとゲームをして、風呂に入って床に就いたのは零時ごろ。
意識が落ち眠りについて暫くした頃、ジリリリッという目覚まし音が部屋に鳴り響く。
体を起こし状況を理解した瞬間、ぞっと悪寒が走った。
電気を付け恐る恐るゼンマイ時計を手に取ると、止まっていた筈の針は昨日と同じように三時を差している。
とりあえず昨日と同じように調整ネジを回し針を動かして音を止めるが、その日は寝付くことも出来ずスマートフォンを見て夜を明かすことにした。
朝になり寝不足のまま出勤して仕事を終えて家に帰り、床に就いて夜中の三時にゼンマイ時計が鳴って目を覚ます。
そんな生活が一ヶ月くらい続いた。
夜中の三時に目覚ましの音が鳴るだけで他に何かが起こる訳ではないが、変な時間に起こされることで慢性的な寝不足に陥り、仕事にも支障が出るのと同時に徐々に体調も崩れ始める。
上司からも心配され、何度かヒアリングを受けた後でしばらく休職することになった。
ただ後から考えると不思議なことに、当時そこまで追い詰められても、私の中に目覚まし時計を捨てようという考えは浮かばなかったのだ。
休職中にも毎夜三時になると目覚ましは鳴り続け、体調もどんどんと悪くなる。
なけなしの貯金も目減りしてゆき、独り暮らしの部屋を解約し一度実家へ帰ることにした。
荷物を纏め、勿論ゼンマイ時計も持って帰郷する。
両親にも心配を掛け、体調が良くなるまでゆっくりと休んで良いと他に何か追求されることはなかった。
そして、その日もまたアパートから持ってきたゼンマイ時計のジリリリッという音で目を覚ます。
いつも通り深夜の三時頃、ただ唯一これまでと違っていたのは、隣の部屋に両親が寝ていたこと。
音に気付いた両親が部屋に入って来た時、私はゼンマイ時計を抱えるように両手で持ってしゃくり上げるように泣いていたそう。
両親からリビングでこれまでの経緯を聞かれ、ゼンマイ時計を捨てた方が良いと諭される。
何故かそれを手放したくないと強く感じていた私は最後まで渋ったが、酷く心配する両親への後ろめたさに押し切られ、ゼンマイ時計を捨てることを決めた。
決心が揺らぐ前に、新聞紙で包んでから袋に入れ、朝になったら不燃ゴミとして出すためそれまでは玄関の外に置いておく。
そして朝を迎えゴミ捨て場に持っていこうと玄関を出ると、ゼンマイ時計を入れた袋は忽然と消えていた。
近所で開催されていたフリーマーケットにフラリと足を運んだ。
手作り感溢れるストラップなどの小物類から衣服、家具やカトラリー、古本まで、道の両脇に多くの出店のシートが並べられている。
その中で、ふと目を引いたのはゼンマイ仕掛けの古めかしい時計、値段は五百円ワンコイン。
何故かは分からないが、それがあまりに魅力的に映って、衝動的に買って帰ることにした。
1Kの狭い部屋へ戻り、とりあえず裏の調整ネジで時間を合わせてゼンマイを巻くと、カチッカチッと音を立てて針が動き出す。
最初は聞きなれない秒針の音が少し気になったが、しばらくすればそれも慣れて気にならなくなった。
その夜のこと。
ジリリリッというけたたましい音に目を覚まし、何事かと慌てて掛け布団を引っ剥がし電気を付ける。
スマホで時間を確認すると深夜の三時過ぎ。
音は棚の上のゼンマイ時計から鳴っているようだった。
手に取って確認すると、どうも時計には目覚ましの機能が付いていたよう。
ただその切り方が分からない。
仕方がないので調整ネジで時間をずらし音を止める。
とりあえず音が止んだことにホッと息を吐き、もう一度布団ヘ戻った。
翌朝、スマートフォンのアラームで目を覚まし、ふとゼンマイ時計へ目をやると、秒針の音はせず針が止まっている。
昨日巻いたゼンマイは切れてしまったらしい。
一晩で止まってしまうようでは時計としては使えないが、元々何となく見た目が気に入って買ってきたものだ。
部屋には壁掛け時計もあるし別に良いか、とゼンマイは巻かずそのまま飾っておくことにした。
それから時計のことなど忘れ職場へ出勤、いつも通りの一日を終え、買い物をしてから家に帰宅する。
夕飯を食べて知り合いとゲームをして、風呂に入って床に就いたのは零時ごろ。
意識が落ち眠りについて暫くした頃、ジリリリッという目覚まし音が部屋に鳴り響く。
体を起こし状況を理解した瞬間、ぞっと悪寒が走った。
電気を付け恐る恐るゼンマイ時計を手に取ると、止まっていた筈の針は昨日と同じように三時を差している。
とりあえず昨日と同じように調整ネジを回し針を動かして音を止めるが、その日は寝付くことも出来ずスマートフォンを見て夜を明かすことにした。
朝になり寝不足のまま出勤して仕事を終えて家に帰り、床に就いて夜中の三時にゼンマイ時計が鳴って目を覚ます。
そんな生活が一ヶ月くらい続いた。
夜中の三時に目覚ましの音が鳴るだけで他に何かが起こる訳ではないが、変な時間に起こされることで慢性的な寝不足に陥り、仕事にも支障が出るのと同時に徐々に体調も崩れ始める。
上司からも心配され、何度かヒアリングを受けた後でしばらく休職することになった。
ただ後から考えると不思議なことに、当時そこまで追い詰められても、私の中に目覚まし時計を捨てようという考えは浮かばなかったのだ。
休職中にも毎夜三時になると目覚ましは鳴り続け、体調もどんどんと悪くなる。
なけなしの貯金も目減りしてゆき、独り暮らしの部屋を解約し一度実家へ帰ることにした。
荷物を纏め、勿論ゼンマイ時計も持って帰郷する。
両親にも心配を掛け、体調が良くなるまでゆっくりと休んで良いと他に何か追求されることはなかった。
そして、その日もまたアパートから持ってきたゼンマイ時計のジリリリッという音で目を覚ます。
いつも通り深夜の三時頃、ただ唯一これまでと違っていたのは、隣の部屋に両親が寝ていたこと。
音に気付いた両親が部屋に入って来た時、私はゼンマイ時計を抱えるように両手で持ってしゃくり上げるように泣いていたそう。
両親からリビングでこれまでの経緯を聞かれ、ゼンマイ時計を捨てた方が良いと諭される。
何故かそれを手放したくないと強く感じていた私は最後まで渋ったが、酷く心配する両親への後ろめたさに押し切られ、ゼンマイ時計を捨てることを決めた。
決心が揺らぐ前に、新聞紙で包んでから袋に入れ、朝になったら不燃ゴミとして出すためそれまでは玄関の外に置いておく。
そして朝を迎えゴミ捨て場に持っていこうと玄関を出ると、ゼンマイ時計を入れた袋は忽然と消えていた。
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