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【Chapter2】②

ー/ー



「あ、っ……!」
 大雅が焦ったように漏らした声に、どうしたのかと尋ねる隙もなかった。小さな着信音とともに、郁の手の中のディスプレイに新着メッセージのサイン。
 タップすると……。

『はすみがすきでみてたから』
「……なんで平仮名?」
 我ながら気にするのはそこなのかと突っ込みたくなりながらも、言葉が零れてしまう。

「あ、手。手が滑って、変換する前に送信しちゃって、その──」
 クラスでも大人びて落ち着いていると評判の大雅の、初めて見る慌てよう。
 その姿に、郁は逆に緊張感も去って行くのを感じた。

「石和。こういうの、形に残さない方がいいんじゃないの?」
 つい心配が口をついて出てしまう。郁にとって、決して切り捨てられない不安な感情だから。

「なんで?」
 きょとんとした大雅に、郁はどう説明すればいいのか、と言い淀んでしまったのだが。

「いや、羽住の言いたいことはもちろんわかるよ。でも俺はこういう自分が恥ずかしいと思ってないし、だいたい羽住が誰かにバラすとか全然疑ってないから。問題ないんだ」
 堂々とした台詞に、郁は思わず目を見開いた。きちんと危険性(リスク)も承知の上で、構わないということなのか。
 彼にしても、誰に知られてもいいとは思ってもいないだろう。それでも、自分のことは本当に信頼してくれているのだと伝わる。
 彼が郁を「好きだ」というのも、冗談ではあり得ない。

「……好き、だったよ。でも、もう終わった、から」
 訥々(とつとつ)と己に言い聞かせるような郁の言葉に、大雅は気遣わし気に返して来た。

「先生は羽住の気持ち知らなかったのか?」
「うん。言ったことないし」
「そうか」
 彼は、八木についてはそれ以上触れようとはしない。郁にしても、完全に整理がついているわけでもないので、正直助かった。

「羽住。勢いで告っちゃったけど、俺ただのトモダチでいいんだ。……だから余計なこと考えずに、これからも一緒に遊ぼう」
 大雅が軽い調子で持ち掛けて来た誘いに、郁も深く考えずに頷いた。
 友人としての彼には何の不満もないので躊躇うこともない。





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「あ、っ……!」
 大雅が焦ったように漏らした声に、どうしたのかと尋ねる隙もなかった。小さな着信音とともに、郁の手の中のディスプレイに新着メッセージのサイン。
 タップすると……。
『はすみがすきでみてたから』
「……なんで平仮名?」
 我ながら気にするのはそこなのかと突っ込みたくなりながらも、言葉が零れてしまう。
「あ、手。手が滑って、変換する前に送信しちゃって、その──」
 クラスでも大人びて落ち着いていると評判の大雅の、初めて見る慌てよう。
 その姿に、郁は逆に緊張感も去って行くのを感じた。
「石和。こういうの、形に残さない方がいいんじゃないの?」
 つい心配が口をついて出てしまう。郁にとって、決して切り捨てられない不安な感情だから。
「なんで?」
 きょとんとした大雅に、郁はどう説明すればいいのか、と言い淀んでしまったのだが。
「いや、羽住の言いたいことはもちろんわかるよ。でも俺はこういう自分が恥ずかしいと思ってないし、だいたい羽住が誰かにバラすとか全然疑ってないから。問題ないんだ」
 堂々とした台詞に、郁は思わず目を見開いた。きちんと|危険性《リスク》も承知の上で、構わないということなのか。
 彼にしても、誰に知られてもいいとは思ってもいないだろう。それでも、自分のことは本当に信頼してくれているのだと伝わる。
 彼が郁を「好きだ」というのも、冗談ではあり得ない。
「……好き、だったよ。でも、もう終わった、から」
 |訥々《とつとつ》と己に言い聞かせるような郁の言葉に、大雅は気遣わし気に返して来た。
「先生は羽住の気持ち知らなかったのか?」
「うん。言ったことないし」
「そうか」
 彼は、八木についてはそれ以上触れようとはしない。郁にしても、完全に整理がついているわけでもないので、正直助かった。
「羽住。勢いで告っちゃったけど、俺ただのトモダチでいいんだ。……だから余計なこと考えずに、これからも一緒に遊ぼう」
 大雅が軽い調子で持ち掛けて来た誘いに、郁も深く考えずに頷いた。
 友人としての彼には何の不満もないので躊躇うこともない。