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夏休み中、郁は大雅と週に二度は約束して会っていた。
何をするという目的があることも、とりあえず会おうというだけの日もある。午前中に待ち合わせて一緒に昼を食べたり、昼食は家で済ませて午後からにしたり、その時々で話し合って決めていた。
「羽住。あの、さ、名前で呼んでもいい?」
「もちろん。つか、そんなのいちいち許可取る必要ねーじゃん。石和ってホント律儀だよな」
何度目かに会った際の遠慮がちな大雅の希望を、郁は迷うこともなく承諾する。
「いきなり名前はハードル高いよ。……じゃあ、郁、で。俺のことも大雅って呼んで」
「おっけー、大雅」
郁が簡単に捉えていた以上に、互いにファーストネームで呼び合うことで二人の距離がぐっと近づいた気がした。男友達と名前や愛称で呼び合うことなど、今までは大して意味のあることでもなかったのに。
「か、郁。……甘いもの好き?」
午後から待ち合わせて会ったので、どこかに入ろうかと通りを歩きながら話している途中で大雅が訊いて来る。
「ん? 大好物! って程じゃないけど好きだよ。何?」
「パフェって食べたことある? 俺なくってさぁ、その──」
なんだかはっきりしない大雅に、郁は不思議と苛立ちは覚えなかった。目の前で優柔不断なところを見せられるのは、あまり好きではなかったのだが。
共に過ごす時間が増えて、少しずつこの友人の本来の姿が見えて来る。
「……食べたいんだな。よし、行こう」
「え? え、いいのか?」
「いや、むしろなんでダメなんだよ。もしかして男が甘いもんなんて! って主義? いつの時代だっての」
「あ、そうじゃなくて。郁みたいな奴なら全然おかしくないけど、俺が可愛いスイーツとか似合わないし」
大雅は少し慌てたように言い訳して来た。
「……似合う似合わんとか誰が決めんの? お前が『男らしくないから俺は食わない』ならそりゃ自由だけど、食いたいんだろ? だったら食えよ。俺も付き合うから」
話しながら先に立ち、郁は後ろをついて来る大雅を確かめて通りを少し戻ったカフェに入る。
郁は来たことはなかったが、パフェが有名らしいというのは聞いた覚えがあった。
おそらく大雅も、この店の前を通ったことで話題に出したのだろう。