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freeze-sun.04:焚き火を囲む「涼」の光景

ー/ー



屋上へと続く渡り廊下を進む一行は、異様な光景を目の当たりにする。
そこは校舎の影、本来なら涼を求める人々が集まるはずの「日陰」だった。しかし、そこには防寒着を脱ぎ捨て、顔を真っ赤に上気させた生徒たちが、必死に「焚き火」を囲んで団を仰いでいたのだ。

「あぁ……暑い……死ぬ……。誰か、もっと薪を……熱をくれ……」
「日陰に入ると、一気にプラス三十度まで気温が上がるなんて……。これじゃあ熱中症で意識が飛んじまうよ……」

生徒たちの悲痛な叫びが、陽炎(かげろう)の立つ空気の中に消えていく。

「にゃうにゃ!みんな、そんな危ない場所にいてはいけないのです!日陰は死の熱帯域なのです!早くこちら、太陽さんの恵みが届く『マイナス四十度の清涼地帯』へ避難するのです!」

咲姫がダウンジャケットの裾を翻し、慈愛に満ちた(しかし物理的には極寒の)声をかける。

「お嬢様、彼らには彼らの『生存圏』があるようです。……とはいえ、このままでは本当に脱水症状で倒れる者が出るでしょう。サヤさん、例のものを」

騎士がフルフェイスの兜を曇らせながら指示を出すと、サヤはにっこりと微笑み、先ほど自販機から「発掘」したばかりの、赤く発光する絶対零度ココアの缶を並べた。

「はい、騎士様。皆様、こちらをどうぞ。お嬢様が命がけで(遊びながら)採取された、究極の冷却材でございます。脇の下や首筋に当てれば、一瞬で体温が奪われ……いえ、快適な冬の訪れを感じられることでしょう」

サヤの手によって配られた「赤い缶」が生徒たちの肌に触れた瞬間、パキパキという音と共に、周囲の空気が一気に凍りつく。

「ひ、冷てぇ……!生き返る……!脳が凍るようなこの感覚、これこそが夏だ……!」
「ありがとう、咲姫様!このキンキンに冷えた(熱い)ココアのおかげで、なんとか日陰を脱出できそうです!」

感謝の言葉を受け、咲姫は得意げに胸を張った。
「そうなのです!夏は寒くてナンボなのです!さぁ、私たちが目指すのはさらにその先。太陽の魔力が最も濃く、最も世界を硬くする場所……学園の頂なのです!」

「ギャニャー!早く行くんだにゃー!立ち止まると、足の裏が地面と癒着して動けなくなるんだにゃー!」

猫二の悲鳴を合図に、一行は再び歩みを進める。
新人は、時給22NkQの労働内容に「人命救助」が含まれているか疑問に思いながらも、凍りついたペンでしっかりとログを刻んでいた。

freeze-sun.05:決戦のヘリオス・テラス
ついに辿り着いた、学園最上階。
「ヘリオス・テラス」と呼ばれるそこは、もはやこの世の景色ではなかった。

空は深い藍色に変色し、太陽の光は白を通り越して、視神経を焼き切らんばかりの「青白い光」を放っている。その光が降り注ぐ床面は、もはやマイナス八十度を下回る絶対的な凍土と化していた。

「……お嬢様、ここから先は甲冑の関節が凍結して動けません。……私の役割は、ここまでかもしれません」

騎士が、文字通り地面に足を凍りつかせ、彫像のように立ち尽くす。
その隣で、新人の持つ魔導計測器がついに「パキン」と小気味よい音を立てて粉砕された。

「……計測不能。……ですが、僕の直感が言っています。ここは今、宇宙で一番冷たい場所です」

「にゃうにゃー!最高なのです!これです、この圧倒的な『硬度』こそが、私の求めていた環境なのです!」

咲姫は、サヤが差し出す「五枚目のダウンジャケット」を羽織り、雪だるまのようなシルエットになりながらも、テラスの中央へと進み出た。
彼女の手には、朝から育ててきた「プリン」のカップがある。

「サヤ、仕上げなのです!」

「かしこまりました、お嬢様。……太陽光集束魔法、展開いたします」

サヤが優雅に指を鳴らすと、テラスの周囲に配置された鏡面魔法陣が起動し、四方八方から青白い太陽光が咲姫の手元のプリンへと集中した。
光が一点に集まった瞬間、爆発的な冷気が噴き上がり、テラス全体がダイヤモンドダストの渦に包まれる。

「見てるがいいのです!これが、私の概念破壊(コンセプト・デストラクション)!夏を、太陽を、そしてプリンを再定義する瞬間なのです!」


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屋上へと続く渡り廊下を進む一行は、異様な光景を目の当たりにする。
そこは校舎の影、本来なら涼を求める人々が集まるはずの「日陰」だった。しかし、そこには防寒着を脱ぎ捨て、顔を真っ赤に上気させた生徒たちが、必死に「焚き火」を囲んで団を仰いでいたのだ。
「あぁ……暑い……死ぬ……。誰か、もっと薪を……熱をくれ……」
「日陰に入ると、一気にプラス三十度まで気温が上がるなんて……。これじゃあ熱中症で意識が飛んじまうよ……」
生徒たちの悲痛な叫びが、陽炎(かげろう)の立つ空気の中に消えていく。
「にゃうにゃ!みんな、そんな危ない場所にいてはいけないのです!日陰は死の熱帯域なのです!早くこちら、太陽さんの恵みが届く『マイナス四十度の清涼地帯』へ避難するのです!」
咲姫がダウンジャケットの裾を翻し、慈愛に満ちた(しかし物理的には極寒の)声をかける。
「お嬢様、彼らには彼らの『生存圏』があるようです。……とはいえ、このままでは本当に脱水症状で倒れる者が出るでしょう。サヤさん、例のものを」
騎士がフルフェイスの兜を曇らせながら指示を出すと、サヤはにっこりと微笑み、先ほど自販機から「発掘」したばかりの、赤く発光する絶対零度ココアの缶を並べた。
「はい、騎士様。皆様、こちらをどうぞ。お嬢様が命がけで(遊びながら)採取された、究極の冷却材でございます。脇の下や首筋に当てれば、一瞬で体温が奪われ……いえ、快適な冬の訪れを感じられることでしょう」
サヤの手によって配られた「赤い缶」が生徒たちの肌に触れた瞬間、パキパキという音と共に、周囲の空気が一気に凍りつく。
「ひ、冷てぇ……!生き返る……!脳が凍るようなこの感覚、これこそが夏だ……!」
「ありがとう、咲姫様!このキンキンに冷えた(熱い)ココアのおかげで、なんとか日陰を脱出できそうです!」
感謝の言葉を受け、咲姫は得意げに胸を張った。
「そうなのです!夏は寒くてナンボなのです!さぁ、私たちが目指すのはさらにその先。太陽の魔力が最も濃く、最も世界を硬くする場所……学園の頂なのです!」
「ギャニャー!早く行くんだにゃー!立ち止まると、足の裏が地面と癒着して動けなくなるんだにゃー!」
猫二の悲鳴を合図に、一行は再び歩みを進める。
新人は、時給22NkQの労働内容に「人命救助」が含まれているか疑問に思いながらも、凍りついたペンでしっかりとログを刻んでいた。
freeze-sun.05:決戦のヘリオス・テラス
ついに辿り着いた、学園最上階。
「ヘリオス・テラス」と呼ばれるそこは、もはやこの世の景色ではなかった。
空は深い藍色に変色し、太陽の光は白を通り越して、視神経を焼き切らんばかりの「青白い光」を放っている。その光が降り注ぐ床面は、もはやマイナス八十度を下回る絶対的な凍土と化していた。
「……お嬢様、ここから先は甲冑の関節が凍結して動けません。……私の役割は、ここまでかもしれません」
騎士が、文字通り地面に足を凍りつかせ、彫像のように立ち尽くす。
その隣で、新人の持つ魔導計測器がついに「パキン」と小気味よい音を立てて粉砕された。
「……計測不能。……ですが、僕の直感が言っています。ここは今、宇宙で一番冷たい場所です」
「にゃうにゃー!最高なのです!これです、この圧倒的な『硬度』こそが、私の求めていた環境なのです!」
咲姫は、サヤが差し出す「五枚目のダウンジャケット」を羽織り、雪だるまのようなシルエットになりながらも、テラスの中央へと進み出た。
彼女の手には、朝から育ててきた「プリン」のカップがある。
「サヤ、仕上げなのです!」
「かしこまりました、お嬢様。……太陽光集束魔法、展開いたします」
サヤが優雅に指を鳴らすと、テラスの周囲に配置された鏡面魔法陣が起動し、四方八方から青白い太陽光が咲姫の手元のプリンへと集中した。
光が一点に集まった瞬間、爆発的な冷気が噴き上がり、テラス全体がダイヤモンドダストの渦に包まれる。
「見てるがいいのです!これが、私の概念破壊(コンセプト・デストラクション)!夏を、太陽を、そしてプリンを再定義する瞬間なのです!」