表示設定
表示設定
目次 目次




店番

ー/ー



 ——サンセット街のある日。



「じゃ、店番頼みましたわよ。」



 エリシアを見送った見習い魔術師の少年。
 今日はエリシアが経営する小さな雑貨屋の店番をすることに。



 ——カラン♪



「いらっしゃいませ。」



 入店してきたのは、気難しそうなオッサン。



「……ハイポーションを10本くれ。」



 少年は在庫を探す。しかし——。



「すいません……3つしかなくて……。」



「ちっ……しけてんな。」

「すいません……。」



「次は……アピの実200g……それからクリムエールもくれ。」

「は、はい。」



 ——ガサゴソ……



 オッサン、腕を組んで待つ。



「早くしてくれ。」

「す、すいません……。」



 少年は、焦りながら棚を漁るのだった——。



 オッサンは代金を払い、無言で店を出た。



「ありがとうございました。」



 ——バタン。



「ふぅ……。」



 優しい客ばかりじゃない。

 少年は、ふとエリシアの言葉を思い出す。



 ——カスハラしてくるやつは燃やしていいですわよ〜。



(できるわけないだろ……。)



 ——カラン♪



 次の客が来た。

 少年は、気を引き締めて接客しようとする。

 しかし——。





 ——ガション……ガション……ガション……。





「へ?」



 ゴーレム?



 ???????



 なんかゴーレムみたいなやつが店に来た。

 ゆっくりとカウンターの前に来ると、突然喋り出す。



「コニチハ。」

「こ、こんにちは……。」



「大きな袋、クダサイ。」



「え……えっ?」



「大きな袋、クダサイ。」

「……」



 少年の頭に、ハテナが浮かびまくる。

 訳がわからないまま、少年はサンセット街指定のゴミ袋を出した。



 ——カシャ……カシャ……



 ゴーレム、首を横に振る。

 まるで「違う」と言わんばかりに、両手を振る仕草。



「中身が見えない、頑丈な、袋を、クダサイ。」



「はい……すいません……。」



 少年はカウンターの下から、麻でできた袋を取り出した。



「もっと、大きい袋は、アリマスカ?」

「いえ……これが一番大きいサイズ……。」



 ゴーレム、しばし沈黙。

 そして、次の注文をする。



「ロープは、アリマスカ?」

「あります。」



 少年は、芯に巻きつけられたロープを持ってくる。



「2メートル間隔で、切ってクダサイ。」



「えっと……何本ですか?」

「10本、デス。」



「はい……。」



 少年、内心、不安になる。



(何に使うんだ……?)



 ゴーレムの無機質な瞳を見つめながら、少年は黙々とロープを切り始めた——。



「煙玉、エンマク、はアリマスカ?」

「煙玉?」



 ——ガサゴソ……



 少年、在庫を漁る。

 しかし、切らしていた。
 たまに冒険者が買っていくが、あまり使われることはない。



「すいません……在庫切れでして……。」

「……」



 ゴーレム、無言。

 そして、そのまま代金を取り出し——。



 ——チャリン。



「ありがとうございます……。」



(帰るかな……?)



 しかし——。

 ゴーレムは、突然の質問を投げかけた。





「銀行は、ドコニ、アリマスカ?」





「銀行ですか……。」



 少年は、カウンターに地図を広げた。



 ——スッ。



「ここがこのお店で……この通りを……こう歩いていくと……で、右に曲がると銀行ですけど。」



「アリガトゴジャイマス。」



「……」



 ——沈黙。



 次の瞬間。





「シューゲキ、イクコトガ、デキマシタ。」





「えっ?」



 ——ウイイイィン……

 ——ガション……ガション……ガション……



 ゴーレム、ゆっくりと店を出る。



 ——カラン♪



「なんだったんだ……?」



 少年は、カウンター越しに、遠ざかるゴーレムをただ見送るしかなかった——。



 ——その後。



 しばらくすると、エリシアが帰ってきた。



「どうでしたの?」



「あ……二人ほどお客さんが……。」

「あらそう。」



 彼女は、少年と入れ替わるように店番に立つ。



 ——その時。



 ——ウウウウゥ……

 ——緊急走行中です! 道を開けてください!

 ——ウウウウウウウゥゥ……!!



 遠くから、サイレンの音。

 エリシアは、ちらっと外を見た。



「今日はなんか騒がしいですわね〜。」



 ——しかし、特に気にすることもなく。



 エリシアは漫画を読みながら、いつものように店番を続けた——。



スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 蘇生


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 ——サンセット街のある日。
「じゃ、店番頼みましたわよ。」
 エリシアを見送った見習い魔術師の少年。
 今日はエリシアが経営する小さな雑貨屋の店番をすることに。
 ——カラン♪
「いらっしゃいませ。」
 入店してきたのは、気難しそうなオッサン。
「……ハイポーションを10本くれ。」
 少年は在庫を探す。しかし——。
「すいません……3つしかなくて……。」
「ちっ……しけてんな。」
「すいません……。」
「次は……アピの実200g……それからクリムエールもくれ。」
「は、はい。」
 ——ガサゴソ……
 オッサン、腕を組んで待つ。
「早くしてくれ。」
「す、すいません……。」
 少年は、焦りながら棚を漁るのだった——。
 オッサンは代金を払い、無言で店を出た。
「ありがとうございました。」
 ——バタン。
「ふぅ……。」
 優しい客ばかりじゃない。
 少年は、ふとエリシアの言葉を思い出す。
 ——カスハラしてくるやつは燃やしていいですわよ〜。
(できるわけないだろ……。)
 ——カラン♪
 次の客が来た。
 少年は、気を引き締めて接客しようとする。
 しかし——。
 ——ガション……ガション……ガション……。
「へ?」
 ゴーレム?
 ???????
 なんかゴーレムみたいなやつが店に来た。
 ゆっくりとカウンターの前に来ると、突然喋り出す。
「コニチハ。」
「こ、こんにちは……。」
「大きな袋、クダサイ。」
「え……えっ?」
「大きな袋、クダサイ。」
「……」
 少年の頭に、ハテナが浮かびまくる。
 訳がわからないまま、少年はサンセット街指定のゴミ袋を出した。
 ——カシャ……カシャ……
 ゴーレム、首を横に振る。
 まるで「違う」と言わんばかりに、両手を振る仕草。
「中身が見えない、頑丈な、袋を、クダサイ。」
「はい……すいません……。」
 少年はカウンターの下から、麻でできた袋を取り出した。
「もっと、大きい袋は、アリマスカ?」
「いえ……これが一番大きいサイズ……。」
 ゴーレム、しばし沈黙。
 そして、次の注文をする。
「ロープは、アリマスカ?」
「あります。」
 少年は、芯に巻きつけられたロープを持ってくる。
「2メートル間隔で、切ってクダサイ。」
「えっと……何本ですか?」
「10本、デス。」
「はい……。」
 少年、内心、不安になる。
(何に使うんだ……?)
 ゴーレムの無機質な瞳を見つめながら、少年は黙々とロープを切り始めた——。
「煙玉、エンマク、はアリマスカ?」
「煙玉?」
 ——ガサゴソ……
 少年、在庫を漁る。
 しかし、切らしていた。
 たまに冒険者が買っていくが、あまり使われることはない。
「すいません……在庫切れでして……。」
「……」
 ゴーレム、無言。
 そして、そのまま代金を取り出し——。
 ——チャリン。
「ありがとうございます……。」
(帰るかな……?)
 しかし——。
 ゴーレムは、突然の質問を投げかけた。
「銀行は、ドコニ、アリマスカ?」
「銀行ですか……。」
 少年は、カウンターに地図を広げた。
 ——スッ。
「ここがこのお店で……この通りを……こう歩いていくと……で、右に曲がると銀行ですけど。」
「アリガトゴジャイマス。」
「……」
 ——沈黙。
 次の瞬間。
「シューゲキ、イクコトガ、デキマシタ。」
「えっ?」
 ——ウイイイィン……
 ——ガション……ガション……ガション……
 ゴーレム、ゆっくりと店を出る。
 ——カラン♪
「なんだったんだ……?」
 少年は、カウンター越しに、遠ざかるゴーレムをただ見送るしかなかった——。
 ——その後。
 しばらくすると、エリシアが帰ってきた。
「どうでしたの?」
「あ……二人ほどお客さんが……。」
「あらそう。」
 彼女は、少年と入れ替わるように店番に立つ。
 ——その時。
 ——ウウウウゥ……
 ——緊急走行中です! 道を開けてください!
 ——ウウウウウウウゥゥ……!!
 遠くから、サイレンの音。
 エリシアは、ちらっと外を見た。
「今日はなんか騒がしいですわね〜。」
 ——しかし、特に気にすることもなく。
 エリシアは漫画を読みながら、いつものように店番を続けた——。