口裂け 3
ー/ー 始業式は午前中に終了し、あっという間に下校時間になった。
霊禍と亘は町役場の手前を通り、近くの公園に足を踏み入れた。
「ここだな」
亘の手にはスマホが握られていた。学校では不審者の出没場所までは知らされていなかったが、県警のホームページで確認できた。
「しっかしさぁー、いつ来てもしょーもない場所だよなー」
霊禍が言った通り、この公園は、ただの空き地のように思えるほど殺風景だった。あるのはベンチと水飲み場、それと数本の木だけで、遊具の一つも見当たらない。もちろん、不審者もいない。
数年前までは、ジャングルジムくらいはあったのだが、と亘は回顧した。撤去されたのは怪我人が出たからか、それとも単に老朽化したからか。そんなことを考えていると、霊禍が木の根元をコツコツと蹴り始めた。
「この下、なんかあるな」
「何が?」
「わっかんねーけど、ミミズか何かが異常に多い。ウネウネと気持ち悪ぃ音が聞こえる」
亘はその木の根元にしゃがみ込み、地面を観察してみた。土にはこれといった違和感はなく、亘の目には普通の土地にしか見えなかった。音も聞こえない。
それでも、霊禍の言うことに間違いはないのだろう、と亘は考えた。
幽ヶ崎霊禍の『超感覚』──常人には想像もつかないほどに繊細な五感。それは、下手なカメラやマイクよりも頼りになる生身のセンサーだった。
「亘、この下掘れ」
亘が振り向くと、霊禍が園芸用スコップを差し出していた。なんでそんなもの持ってるんだ、なんてツッコミは出てこなかった。霊禍のランドセルの中身の無茶苦茶さはよく知っていた。
とはいえ。
「ミミズがいるところを、素手で掘るのか⋯⋯」
なんて文句が漏れ出すのは、当然と言えば当然であった。
「うるっせぇなぁー。そんなしょーもないことでウダウダ言ってねぇで、さっさと手ぇ動かせよ。
──ってか、愛しのグレイヴちゃんにやらせちゃえば?」
グレイヴ。その名を聞いて亘はハッとした。
亘の背後に、白い影が浮かび上がる。犬のような尖った耳が特徴的な頭部。陶器を思わせる艶のある、細い二本の腕。そして背中には真っ白いマント。
守護霊・グレイヴ。亘の霊能力の産物であり、従順な執行人。パワーは頼りないが、スコップを扱うくらいのことはできる。グレイヴは亘が念じた通りに、黙々と木の根元を掘り起こしていく。
「いいなー。私もそういう守護霊欲しい」
「霊禍には不死鳥がいるでしょ。グレイヴより便利だし」
「⋯⋯まぁなー」
そんな他愛もない会話をしているうちに、スコップが何かにカツンと当たる音がした。
霊禍と亘は町役場の手前を通り、近くの公園に足を踏み入れた。
「ここだな」
亘の手にはスマホが握られていた。学校では不審者の出没場所までは知らされていなかったが、県警のホームページで確認できた。
「しっかしさぁー、いつ来てもしょーもない場所だよなー」
霊禍が言った通り、この公園は、ただの空き地のように思えるほど殺風景だった。あるのはベンチと水飲み場、それと数本の木だけで、遊具の一つも見当たらない。もちろん、不審者もいない。
数年前までは、ジャングルジムくらいはあったのだが、と亘は回顧した。撤去されたのは怪我人が出たからか、それとも単に老朽化したからか。そんなことを考えていると、霊禍が木の根元をコツコツと蹴り始めた。
「この下、なんかあるな」
「何が?」
「わっかんねーけど、ミミズか何かが異常に多い。ウネウネと気持ち悪ぃ音が聞こえる」
亘はその木の根元にしゃがみ込み、地面を観察してみた。土にはこれといった違和感はなく、亘の目には普通の土地にしか見えなかった。音も聞こえない。
それでも、霊禍の言うことに間違いはないのだろう、と亘は考えた。
幽ヶ崎霊禍の『超感覚』──常人には想像もつかないほどに繊細な五感。それは、下手なカメラやマイクよりも頼りになる生身のセンサーだった。
「亘、この下掘れ」
亘が振り向くと、霊禍が園芸用スコップを差し出していた。なんでそんなもの持ってるんだ、なんてツッコミは出てこなかった。霊禍のランドセルの中身の無茶苦茶さはよく知っていた。
とはいえ。
「ミミズがいるところを、素手で掘るのか⋯⋯」
なんて文句が漏れ出すのは、当然と言えば当然であった。
「うるっせぇなぁー。そんなしょーもないことでウダウダ言ってねぇで、さっさと手ぇ動かせよ。
──ってか、愛しのグレイヴちゃんにやらせちゃえば?」
グレイヴ。その名を聞いて亘はハッとした。
亘の背後に、白い影が浮かび上がる。犬のような尖った耳が特徴的な頭部。陶器を思わせる艶のある、細い二本の腕。そして背中には真っ白いマント。
守護霊・グレイヴ。亘の霊能力の産物であり、従順な執行人。パワーは頼りないが、スコップを扱うくらいのことはできる。グレイヴは亘が念じた通りに、黙々と木の根元を掘り起こしていく。
「いいなー。私もそういう守護霊欲しい」
「霊禍には不死鳥がいるでしょ。グレイヴより便利だし」
「⋯⋯まぁなー」
そんな他愛もない会話をしているうちに、スコップが何かにカツンと当たる音がした。
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